第23話 親ガチャと東大1000万円

 東大の学生の親の平均年収は1000万円台がもっとも多いそうです。大学入学時の親の年齢は50歳くらいが平均です。50歳代の世帯平均年収は750万円だそうです。平均年収450万円と比べて…という的外れな記事もあります。


 東大生の親の年収の分布を論じる場合、学生の能力ではなく環境要因として収入を論じて責任を擦り付けています。遺伝子の差によって頭の良し悪しが変わるということに着目した記事はあまり見ません。

 つまり収入が高い親のグループの頭の良さに関わる遺伝子は良い。だから、その子供は親からの遺伝で優秀という論点はほぼ見ないと思います。


 他の要素としては医学部があれば当然医者の親も増えるでしょう。東京の真ん中なんだから住んでいる場所的に平均年収の地域差で東北や北海道、沖縄の学生の比率も下がるでしょう。まあ、他の要因はここではおいておきましょう。


 親ガチャで嘆く格差の中には遺伝子に着目しているものもあみたいですが、自分の容姿によるモテるモテないを言っているケースが多いと思います。親の収入の高低を嘆く場合もありますが、やはり環境要因にしています。この場合も親の優秀さ、つまり成績の良さの格差について遺伝子を原因にすることが少ない気がします。


 実際の頭の良さは遺伝50%、環境50%と言われています。まあ、妥当な分析かなあと。感覚的には遺伝がもっと多い気もします。根拠としては、体格やスポーツの遺伝的な影響がはっきり見えるからでです。

 競馬ゲームが流行ってますので身体能力については納得感があると思います。競馬はほとんど遺伝子ゲームです。調教の良し悪しはありますけど。


 人間の頭の良さについて親の影響を論じるのは難しいでしょう。子は親に育てられるケースが多いので、親の頭の良さがそのまま環境の良さ=収入の多さ=教育機会につながっているからです。遺伝にも環境にも親の影響は多そうですね。だからこそ分解して分析しずらいと思います。

 ただ、双子が別環境で育てられた場合の研究はされているみたいですけどね。たしか東大の付属中学とかって、双子の研究をしていたと思います。


 もちろん東大に行っている人は頭がいいのではない。成績がいいだけだ、という言い方もできますが、それにしたって脳の使いかたが上手くないと成績は上がらんでしょう。他の大学ならいざしらず東大については、やはり特別な頭の良さは感じます。



 さて、なぜ東大生の比率で親の収入について語られているのに、収入とはつまり頭の良さ=遺伝子の良さだとならないのでしょう?容姿や収入についての劣等感は親に原因を求めますが「頭の悪さ」の遺伝的な原因を親に求めないですね。ここが不思議なところです。どうも頭の良し悪しだけは努力と環境で決まる、という結論だけはなぜか支持されるみたいです。


 そりゃあそうですよね。親ガチャ云々言っている人が、頭の良さも親の遺伝子ガチャだと言ってしまえば、つまり自分の遺伝子は良くないと自白しているみたいなものです。

 一度親の収入が低くても東大に来ている人の親の調査をしてみればいいと思います。頭がいいけど訳あって収入が低いという親が多いのではないでしょうか?

 

 かといって負け犬の遠吠えというだけでなく、頭の良さそうな研究者も同じです。ジェンダー論者が代表ですが、人間の存在そのものである脳の出来とか脳の機能についての科学研究は思想に引っ張られます。犯罪者・精神異常も同様です。遺伝による影響が大きいという結果を否定したいというバイアスがある気がしてなりません。

 脳の作り、機能。それが人間そのものである。だから脳は遺伝子に左右されない…努力や思想で何とかなると言いたいのでしょうか。


 もちろん例外を見付けることも、統計上の分布のズレを見て必ずしも正解だとは言い切れない集団もあると主張することはできます。ですが、科学ですから傾向に有意差があるかどうかを論ずるべきです。


 それともう1つ。東大に行っている人は親の収入がいいだけだ。格差社会の歪みだ、という結論が欲しいだけの気がします。


 私がここで本当に言いたいのは、東大に入るのだって遺伝子が良くても努力して勉強をしてきた人たちです。頑張った人、努力した人、そして頭がいい人をたたえるのではなく、貶める記事に一緒になって分断を騒がない方がいいということ。この精神が少子化の遠因になっていると思います。

 遺伝子の差がすなわち個性の元だし、多様性です。それを認めない、あるいは運を嘆くのがどれだけ不毛か。


 東大に行くことだけが正解ではないです。海洋科学のために琉球大学でもいいし、ロボット研究のために千葉工大でもいい、北の大地で学生時代すごしたいから小樽商科大学に行くのもいい。恋人や親のために地元でがんばるでもいいんです。


 要するに収入の格差で幸福は決まらない、です。この「親ガチャ、東大1000万円」にまつわる言説で、科学者含めて一番の問題は、幸福の形を経済とべき論で画一化していることです。









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