4 気づく
そして現在に至る。
小奈津は倒れている七人を見て言った。
「これは……あなたがやったのね」
おそらく、春火の蝶の毒に触れたが故だろう。
だが、小奈津はこの七人に同情できない。
彼女らが智里をいじめなければ、こんなことにならなかった。
それでも、
「人を傷つけちゃいけないよ……」
智里はきっと、春火の優しさを見抜いていたはずだ。だから、智里は春火の心配する言葉に微笑んだ。
そう、智里は春火が人を傷つけることをしない存在だと気づいていたのだ。
「どうする?」
「え?」
春火の視線の先には小奈津のステッキがある。
「それで俺を退治する? いいよ、俺は長くない」
その春火の言葉に小奈津はキレた。
「違う! あたしは!」
ステッキを春火に突き出して言う。
「あなたの恋心を! 鎮めにきた!」
激しい恋心故に生まれた激情を。
小奈津がこう言った瞬間、景色が変わる。
辺りが黄金色に染まり、黄金色に輝く蝶々が小奈津や春火を覆い囲んだ。
*
(なんだ、この気持ちは?)
黄金色の蝶々に囲まれた瞬間、春火の気持ちが和らいだ。
さっきまでは怒りで一杯だったのに、今はとても穏やかだ。
「どうかお願い……」
小奈津は泣きながら訴える。
「智里さんの所に行って。彼女はまだ死んだわけじゃない」
その言葉を聞いた直後、小奈津の背後に智里の幻影を見た。
彼女が笑う。
それを見た瞬間、春火はやっと気づいた。
智里が好きだったと。
ただ、彼女がノートに絵を描く日常と彼女の平穏がずっと続いてほしかったのだと。
「ありがとう……」
大事なことに気づかせてくれてありがとう。
春火は右腕を上げて、指を差し出す。すると、黄金色の蝶々が春火の人差し指に止まった。
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