ざらつく心 驚きだわ!

 俺は仕事を終えると八代達の誘いを断り会社を出た。

なんだろ、なんでこんなに急いでいるのだろうか。怖いと感じていたはずなのに。関わるのは拙いと思っていたのに。今は早く行かなくてはと思っている自分がいる。

 俺は今あの店の前に立っている。ドア開けると……結構混んでいた。一歩足を踏み入れた途端、昼間とは異なる空気に違和感を覚えていた。男性しかいない? 女性は? カップルは? 入り口で固まっている俺を見つけたマスターが、

「今晩は。社長とお知り合いだった昼間の方ですね」

「あっ……あっへっ……はい……えっと……失礼しました!」

俺は急いで扉を閉めて走り出した。なんだなんだ? 兎に角ラインしなくては。

……今着きましたが、昼間のお店入りにくくて、吉村屋の前にいます……

すぐに返信が来た。

……了解! すぐ行くからね……

……はい!……

可愛い猫のスタンプが返って来た。

 あの店……もしかして男性専用なのか? 昼間待ち合わせしていたあの人たち……ゲ……イなのか? もしかして! 俺間違われているのかも知れない。

「お待たせ! 恭介くん!」

手を振りながら社長さんが近寄って来た。

「おっ……おっ……お疲れ様です……」

俺の引き攣った顔を見過ごすはずもなく、

「なに? 如何したの? 恐いことあった?」

「あっ……いや……あの~あの~ですね~あのお店って、もひかひて……ゲ……イさんのお店……」

「アハハハハハ、そっか……知らなかったんだね。そりゃ驚くはなぁ。昼間はまだ普通に見えるもんな。でっ?……僕が勘違い為ていたら困るって?」

思いっきり頷く俺。

「フフフ……まあそれは置いといて、お腹空いてるでしょう? ステーキ食べようよ。ねっ!」

ステーキかぁ……釣られる釣られる! 肉に釣られる情け無い俺だが。この際頂きます!

「はい!」

「そう来なくっちゃ!」

隣に並んで歩く。

社長さんいい匂いがする。コロンかなあ……なんだろ。

それにしても腹減った。

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