第二章エピローグ 

春香との決戦の後、気付くと紗夜は実家にいた。

「ふぇ!? あれ?合宿は!?」

状況が飲み込めずに慌てる紗夜。そんな中、部屋の外から声がした。


「あら、おはよう紗夜」


紗夜の起きた気配を感じたのか、母が現れたのだ。

「お母さん、私……」

「ちゃんと説明するわよ。落ち着いて」

母の説明によるとこうだった。


どうやら紗夜と春香は二人ともあの戦いの後、丸二日ほど意識を失っていたらしい。

しかし、軍医の見るところ危険はないとのことで実家に送り届けられたのだそう。

合宿の試合はそのまま続行され、優勝者も決まったらしい。


「そっか、私負けちゃったんだ」


父は宣言した通り国防軍に入ることは、できなかった。

紗夜は少し落ち込んだように呟いたが、すぐに顔を上げた。落ち込んでいたって仕方がない。

強くはなってるんだ。このまま頑張らないとね。


ふとスマートフォンを見るとチャットアプリに春香ちゃんからメッセージが入っていた。

どうやらあちらも目覚めたらしい。


‘紗夜さん、起きてますか? 良かったら少し話しません?’


紗夜はそれを見て微笑むと急いで身支度を始めた。

「あら、もう動いて大丈夫なの?」

「うん、元気だよ!」

少し心配した様子の母であったが、紗夜は快活に飛び跳ね、自らの健康をアピールした。


「そう、大丈夫なら良いんだけど……気をつけるのよ。いってらっしゃい」

「うん、いってきます!」


紗夜がバタバタと家を飛び出して行った後、母は郵便受けに宵闇家宛に手紙が入っているのを見つけた。


「あらこの差出人は、雷月家の……」


そしてその内容を読んで母は顔を綻ばせた。


「あらあらあらあら……ふふ」


***


国防軍本部にて、久しぶりに雷月は真面目に会議に出席していた。

「あれ? 飛鳥がおるなんて珍しいやん」

同僚の男が驚いたようにそう言った。

雷月は目を細めると「ははっ」と笑い煙草を咥えた。


「久しぶりに雷月班の人数が集まりそうだからな。会議くらいは出ておかないとな」

男はさらに驚いたように細い目を見開いた。

「あの雷月飛鳥のお眼鏡に叶う子がおったんや。これは驚きやなぁ」


雷月は指先からバチッと雷を放ち煙草に火をつける。そしてゆっくり煙を吐き出すと、男を見た。


「お前も良く知ってる人間だよ。宵闇刹那」

「ふぅん?」


意味ありげな雷月の視線に刹那は首を傾げた。





‘前略 雷月飛鳥より


先日の強化合宿お疲れ様でした。

結果は一回戦敗退、と残念なものになりましたが、その参加態度、試合での戦いぶりを評価し、宵闇紗夜、朝日春香の両名を来月付けで国防軍攻撃部隊、雷月班の所属とします。


辞退はできませんので、せいぜい覚悟を決めておくように。


以上’


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