転職の館ショクアン

シィムラの古屋からグリーナ達は街道を北上した。

しばらく歩いて行くと、海を背に大きな神殿にたどり着く。


「みなさんこちらが転職の館、ショクアンです」

チャンドラの先導でグリーナ達は館に入った。


ポスト局と中の造りは似ている。正面に受付カウンターがあり、左右に部屋が続いている。

チャンドラの指示でグリーナ達は最後尾に並んだ。

「やった!おれ今日からパラディンだ」

「よし!魔法剣士になる為に修行やりなおしだ」

などなど、転職者達の熱気をグリーナは感じていた。

「けっこういるんだね、転職したい人」

キョロキョロしているうちに、順番が回ってきた。


「次の方どうぞ」

受付の天使族の眼鏡をかけた女性が手の平を出す。

「わたしと、このクマとムジナ」

「グリーナさん、何転職されようとしてるんですか」

グリーナはチャンドラへコソコソと耳打ちをした。

「ちょっとやってみたいだけ。わたしの適正をみたいの」

「職員の方々もお忙しいんですから、少しですよ」

チャンドラはため息まじりに軽く頷く。


受付の天使に紙を三枚渡されて、名前と性別を書くようにと言われた。

「実筆で書かれたこの書類を担当魔法師がスキャニングし今のステータスやレベルから可能な転職先をお調べ致します」


クマ メス

ムジナ オス

グリーナ 女(セクシー)


「グリーナさん、余計なこと書いちゃだめですよ」とチャンドラに叱られしぶしぶ(セクシー)を消した。「言っとくが、この(セクシー)を消しても、わたしのセクシーが無くなるわけじゃないんだらね!ふんっ、、、ってかクマ!メスだったのかよ」

「何言ってんだよ今更。木の下の赤子のお前拾って育ててたのがクマだぞ」

「そうだったのですか!てっきりシィムラ様かと」

「オイラが旅をして、クマの洞穴に泊めてもらった時は赤子のグリーナが居てそれから2人で育ててたんだよ」

そうこう話しているうちに天使が戻って来た。


「お待たせ致しました。わたしは受付天使のシーリスと申します」

シーリスはフリルのついた純白のキャミソールの胸元から黒ぶち眼鏡を出し、かけた。

「また、エロエロ天使か」

グリーナの言葉を聞いてか、無視するかのようにシーリスは書類を見る。

「まずはクマ様から

残念ながら無職でしたのでレベルは0です。しかし持ち前のパワーと優しさからなれる職は

⭐︎拳闘士

⭐︎ヒーラー

になります」

「拳闘士かっこいいじゃん」

グリーナは勝手に丸をつけ天使に渡した。

「クマ様、よろしいでしょうか」

「ヴゥゥ」とクマは頷いた。


→【クマは拳闘士になった】


「次はムジナ様です。クマ様と同じ理由でレベル0ですが。ポーター(荷物持ち)のスキルをけっこうお持ちとツッコミの適正が高い為

⭐︎トレジャーハンター

⭐︎お笑い芸人

になります」

グリーナがお笑い芸人に丸をつけようとする、横からもの凄いスピードでムジナはトレジャーハンターに丸をつけ天使に渡した。


→【ムジナはトレジャーハンターになった】


「なんで、おれトレジャーハンターの適正あんだ?」

「だってお前どこかで、食糧やら生活用品ゲットしてきてうちにいつも持ってくんじゃん」

「あれは、お前を養う為にバイトして店で買ってるだけだ」

チャンドラはクスリと笑った。


「次はグリーナ様ですが、、、」

後ろの職員がグリーナの紙を持ってきて、シーリスに耳打ちをしている。

シーリス一瞬目を見開きグリーナの顔を見た後、困ったように眉間に皺を寄せた。

「グリーナ様、賢者様をお辞めになるのですか?」

「とりあえず、教えてよ。その後話しあおう」

「承知致しました。仮に賢者様をお辞めになるにしても、わたしの認証では不可ですので最高責任者をお呼び致します」


「ほら、言ったじゃないですか」とチャンドラはグリーナに耳打ちをした。


「ではグリーナ様ですが、、、

レベルが2で性格にも難があり、怠け者で悪さばかりしてろくでもない研究で森の住民を困らせてばかりいるので、一般職で転職出来るものはありません」


ムジナカウンターをガンガン叩いて、泣きながら爆笑する。

「適正診断ってか、わたしの悪口じゃん」


「しかしですね、一つ方法があります。

なぜか遊び人レベルが50を超えています。

一度遊び人に転職されたら、詐欺師、ペテン師、牛などに転職可能です」


「もう、もう、やめてくれよ。ヒィー」

ムジナはさらに爆笑した。


「職じゃないじゃんどれも、なによウシって」


「たぶん、食って寝てばかりいる件だと判断されます」


「もういいよ!!」

転げ回り爆笑するムジナに蹴りを入れグリーナはカウンターを後にしようとした。


「ちょっと待たれい」

頭に輪っかを浮かべた、金の翼をもつ老人がグリーナの足を止めた。

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