聖書目次録取説 

「グリーナさんですか、お噂はかねがね伺っております。賢者を辞めないということでホッといたしました」

「ショクアンの長、ヨハネであります」

シーリスが紹介した。


「まぁ、そうよ。唯一無二の職。賢者なるわたしが、民の為に放棄などするものか。わはははは」

グリーナは腰に手を当て高らかに笑った。


「良かったですね、面目が保たれて」

小声で話すチャンドラに

「まぁ、ふてくさられても面倒だしな」とムジナも小声で答えた。

「グリーナさん、これからどちらに」

ヨハネ白いは顎ひげを撫で、大きな目で問いかけた。

「魔王討伐よ。あのストーカー野郎りゅんぱって奴ギッタンバッコンにして、ギッコンバッタンしてやる」


全員は想像した。

グリーナとりゅんぱが血だらけで、シーソーをしている姿を、、、


ヨハネは何かに気づいたようにグリーナの後ろにいる、チャンドラに目をやる。

チャンドラは目線を下に下げた。

「このヨハネ、グリーナさんにお願いがあります」

「何?爺さん。この賢者様が聞こうでないか」

シーリスが冷や汗をかきながら「ショクアンの長のヨハネと申します」と再度紹介をし苦笑いをした。


「とある女性を探して欲しいのです。そしてこの封書を渡して頂けたらと」

ヨハネが差し出した封書にはこう書かれていた。


遺言書


「遺言書って、亡くなった人が在命の人に宛てるものだろ」

ムジナは不思議そうに封書の裏表を見たが、それ以上の記載は無かった。

「いいけど、どこの誰だかわからないし。あと意味もわからないし。なんでわたしなの?」

「名前はヤナコと言います。年齢はグリーナさんより3才ほど上の17才になりますな」

ヨハネの言葉が終わるや否や、ムジナがグリーナの顔を覗きこんだ。

「まじか!シィムラの婆さんにグリーナ預けた時、まだ赤子だったぞ。それから数年、、まだ子供かと思った。って事はクマは10年近くも育ててたのかよ、あの洞穴で」

「ヴゥゥ」とクマはうなづいた。

「グリーナ様の実年齢はスキャニングにより14才となっております」

シーリスが書類を見ながら言う。

ヨハネは不敵な笑みを浮かべている。

「だから言ったじゃん、わたしはセクシーだって!お姉さん、やっぱラウンドガールかグラビアクィーンに転職する」

グリーナは満面の笑みでシーリスに詰め寄る。

「いえ、それは先程お伝えしたとおり」

困惑するシーリスとグリーナの間にムジナは割って入る。

「だからセクシーではないんだよ。いくら14才でも、ちびっ子いたずらポンコツ賢者よ。あとお前の選択肢は遊び人からの牛しかない」

ムジナの高らかに笑う言葉にグリーナは地団駄を踏み

「あー。ストレスが。ストレスが」と頭を掻きむしった。


「ヨハネ様、わかりました。グリーナさん、旅の途中でもし出会えたら渡しましょう」

ヨハネの目線からアイコンタクトならぬ、何かを察したようにチャンドラはグリーナを諭した。


「まぁいいわ。見つけたらなんかちょうだいね」

「黒髪で肩ぐらい。たぶん見ればすぐにわかるじゃろう」

グリーナ達は残りの簡単な手続きとヨハネの話しを聞き転職の館ショクアンを後にした。



受付の天使が聖書目次録取説の最終章をめくった。


取説最終章

1p

勇気の無い陰キャラな勇者

頭の悪い碧眼の賢者

、、、

「ヨハネ天使長、碧眼ってこの取説の」


ヨハネは瞬きもせず、グリーナが出ていった扉を見ていた。


「もし、預言書の碧眼の賢者だとしたら、光の王が降臨されると?

だとしたら、なぜあのグリーナと言う賢者を野放しに」

「降臨されとるよ、すでに。わしも早急に原本探しに行かねば」

「やはり、改竄されていると。

取説の最終章

〈もし困った時は〉の時代になると?

の部分が」

「見たじゃろ。あれが光の王を討ち、世界を闇と苦しみをもたらす者に見えるか。むしろ笑いの渦に巻き込む者じゃ」


天使はヨハネの鋭い眼光をみて、理由のわからない鳥肌がたった。







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