赤いうさぎ

シィムラの家も森の外れにあり、北にあるポスト局

とは反対の南の外れにあった。翌朝むかえに来たチャンドラと朝食を食べ、グリーナ達は南へと向かった。


「おばあちゃん家行くの久しぶりだな。最近魔物のバトルや実験やらで忙しかったから」

グリーナはバツが悪そうに上目遣いで見た。

「食って寝てるだけだろ」


「シィムラ様なら大丈夫ですよ。グリーナさんを孫のように思っておりますし。活躍もわたしから報告しています。ただ、最近ギックリ腰で寝込んでいますが」

「そうなの、まさかわたしの仕事。森の魔物退治のフォローをしてるんじゃ」

「いえ、セクシーステータスが下がり続けているのでエクササイズをされ、ギックリ腰になってしまったようです」

「あのばあさん100超えてんだぞ、何がセクシーエクササイズだ。なぁ」とムジナは問いかけるもグリーナは浮かぬ表情で遠くの空を見ていた。


「それより、お聞きしたい事があります。個人的な興味なんですが」

グリーナは何度か目をパチクリさせ、遠い空から意識をチャンドラに戻した。

「うん、なんでも聞いて。って言っても情報通のあんたがわたしに何聞くの?」

「ええ、そのムジナさんが背負ってるリュック。どんな仕組みですの?」

チャンドラは後退して、グリーナの横についた。


「おばあちゃんからムジナが貰ったんだよ。わたしのアイテムやらいろいろ詰めておけば、いくらでも出し入れ自由だからって。仕組みはわからんけど」


グリーナはムジナに背を向けさせて、リュックの上を広げた。辺りの木の枝やら蝉の抜け殻や松ぼっくりなどを大量に放り込んだ。


次はクマに割と大きな倒木を拾わせ、リュックの入り口に入れさせた。

「ねぇ、こんなのも入るんだよ」とグリーナがぐいぐい木を押し込むと。


「ぎゃー〜」と悲鳴がどこからか聞こえた。


グリーナ達が辺りを見回していると、正面から鬼の形

相で走ってくる者を見つけた。

「魔物か!」とグリーナはクマの横に立ち、後方のムジナにチャンドラを守れと命令した。


現れたのはオーバーオールを着た、赤いうさぎであった。鼻息荒く、今にも襲いかかって来そうであった。


赤いうさぎは「お前ら、ぶっ殺すぞ」と木の枝を振り回している。


グリーナは杖を掲げた。

「あれ、でも変だな。コマンドが出ないよ」

「あの、なんとかが現れたってやつだろ?そんな事もあんの?」

ムジナは振り返ってチャンドラをみた。

「いえ、あれは古からのこの世界の法則です。

わたしたちがバトルになる時は必ずコマンドの枠は必ず出ます」

「でも、この赤ウサギ。なんかゴミまみれで怒り狂ってるよ」


赤ウサギはあっーーっとヒストリーに叫ぶと、身体中を掻きむしるようにゴミを払った。


「お前らがどんだけ、失礼で無礼で底辺なやつか教えてやるよ」

赤うさぎは来た方向にもどり、顔をくいっとあげついて来いのサインを出した。


グリーナ達は顔を見合わせた。


「いいからついてこいよ」と赤うさぎは走りだした。


グリーナ達は何もしないで見守っていた。


赤うさぎは振り返ると、走って戻ってきた。

「だ、か、ら、おれが怒ってる理由教えてやるの!

ついてこいよ」


グリーナ達は頷いた。

赤うさぎは走り出す。


しかし、グリーナ達は動く事はなかった。


かなり遠くまで走った赤うさぎは振り返る。一緒動きが止まるも、また鬼の形相で戻ってきた。


「あー、また戻ってきた」


「ちょっとーー おたくら。はぁ?はぁ?なんなの

言ったよね、ついて来いって」

赤うさぎははぁはぁ息を切らせ、瞳孔を開かせ首を傾げる。

「すみません、ちょっとびっくりして。わたし心優しい乙女座のA型、動物占いだと子鹿なんです。さぁ行きましょう。うさぎさん」

グリーナは半泣き(嘘)で頭を下げた。


赤うさぎは「ったく」と舌打ちをして、走りだした。


やはり、グリーナ達はまた動かずにいた。


「あーまた、戻って来た」

「オイラ達が何したかわからないが、自分勝手だよな」

「今度は来た分だけ、逃げてみましょうか?」


そのやりとりを何回かグリーナ達はニヤニヤと楽しんだ。

「しかし、ヒストリーなうさぎさんですね」

「だから、赤いじゃねぇか?」

「あれじゃん、むしろうちら正解なんじゃん?このやりとりの。うさぎは欲しがってるよ」



その後赤いうさぎのシャトルランをグリーナ達はさんざん楽しんだ後

「さすがに失礼だから、行きましょう」のチャンドラの言葉にしたがって、赤ウサギの後を追った。


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