何か様子がおかしーんじゃないのか?

島は横6キロ縦3キロの楕円形の小さい島だ。本島から陸続きなら歩いても行ける距離である。島の人口は人が200、精霊やその他の種族含めて1000ほど。


アバチー船が桟橋に入港するも、人の姿はなかった。

「誰もいないじゃん」

桟橋から左右に広がる砂浜にも、何の気配もなかった。

「島の裏側へ様子見に行ってみるか?」とムジナは皆に問いかけるも「この桟橋と砂浜以外は崖になっていて、上陸どころか島の様子も見えないんですよ」とチャンドラは答えた。


「正面から行こう」

グリーナは桟橋を先に歩きはじめた。

「しか、なさそうですね」

「ちょっと不気味だけどな」

アバチーは砂浜から上陸すると「じゃあな貴様ら」と砂浜へスタスタ歩いて行く。


「どこ行くのよ、生臭太郎」

「誰が生臭太郎だ。世界中の海の生物に謝れ」

「しかし、アバチーさんどちらに行かれるんですか?」

アバチーはやれやれと言う小馬鹿にした顔で見下す。 

「貴様の言う敵とやらを軽く倒す。ピクニックをやるつもりは無い。さっさと終わらせて、帰るだけだ」

そう言うと、砂浜から山林へと入っていった。


「あいつグリーナの召喚獣だろ、身勝手な奴だな」

「修学旅行にいますよね。ここぞとばかりに変な個性だして目立とうとする人」

グリーナ一行はアバチーを放って置き、島の中央へと向かった。


林道を抜けると、島の中央に出る。桟橋からの道は一つなので、本来多くが往来するはずであった。しかし林道には人や精霊どころか何の気配も無かった。。


遠くでオオカミの遠吠えが聞こえてきた。

「しかし、本当におかしいですね」

チャンドラが辺りを見回す。

「本当、人や精霊どころか動物の気配もしねえな」

ムジナは林に石を投げたが、無音無反応であった。

「それも、そうなんですが」

チャンドラは見上げる。そこには張り巡らされた電線が絡み合う蜘蛛の糸のように上空を覆っていた。


「それに、、」とチャンドラは足元を見る。

紙コップやお菓子の袋。空き缶などが散乱している。

「観光地だからな」とムジナはゴムボールを拾い、先を歩くグリーナの後頭部に投げつけた。


グリーナは瞬時に振り返り内角高めのストレートをフルスイングジャストミート。

ライナー性の打球はムジナまで一直線。

「ここで魔法」

【初めての発表会】


カラーボウルに魂が宿った。

「緊張しなくて大丈夫だよ。気を楽にね。でも絶対失敗しちゃだめよ。大事な発表会なんだから」

グリーナの声にカラーボウルはがちがちに固くなった。


「プレッシャーが凄いよーーーー」


そのカラーボウルの声と共にムジナの眉間に、カラーボウルから進化した鉄球がぶち当った。

→【グリーナは教育ママの魔法を覚えた】


「グリーナさん、その魔法凄いですね。即鋼鉄化出来るなんて。今つくり出したんですか?】

「うん、ムジナを葬り去ろうという本能が」



ムジナが目を覚ます。

「なんか、知らない奥さんと子供達がいてさぁ

オイラこのまま幸せに暮らしていくんだなぁって

だけどなんか子供の誕生日パーティでおいらの

ケーキだけ硬くて生臭くて」


グリーナはムジナの口に突っ込んだサバを引き抜いた。

「もう、よいぞ。吉田さんありがとう」

「グリーナちゃん、わしももう年じゃ。あまり過激な事させんでくれよ」

サバのの吉田さんはぶつぶつ言いながら

魔法陣へ消えた。


うつろな目で「おくさーん、我が子、サバ、サバのケーキ、臭い生臭い」と徘徊し始めたムジナを無視してチャンドラが異変を話しはじめた。


かつての島は電気は多少あったものの、水車や風車が少しある程度で基本自然物かその自然のエレメントを利用したり、魔法などがエネルギー源であった。グラスや皿なども氷や木で自然に還る物であった。火をつける作業も木に火天と言う精霊を呼んだり、炭火を消す作業も土神に供物として供え食べていただくと言ったアミニズム作法概念であった。


魔法やエレメント利用が苦手とする民族や老人に限っても、なるべく長く使える鉄製品海外輸入して使った。鉄器や石の日用品から武器などは鉄職族Neoヒッタイト民が古代よりの知恵英知により修理をして長く使われる。

「この島は、未来型サンプル指定地区であるのに」

チャンドラはピカピカと光りやたらあちこちに設置されている自動販売機を見回る。

国が未来型の都市をつくるヒントをこの島に見出そうとしていた。

電気、魔法、自然がバランス良く相殺されず、相生された島であった。足りない電気やエネルギーは魔法や水力火力などでまかない。汚さず自然のサイクルと科学を融合出来ていたからだ。


使い捨ての紙、アルミ、ガラス製品などもあったが、ごくわずかでさらに廃棄品は分別され国の資源局に綺麗に返していた。


「こんなに汚れては、呼鐘以下ですよ」


呼鐘エリアはグリーナのポロポロの森の南、首都付近に住めない者や犯罪者などの棲家になっている。

ただでさえ多種多様なサクラギ付近の中でも特殊なエリアである。一般の善良な民や全ての者が自由に住める為に法や倫理観が通用しない。ゴミで建てられた家や、種族独自価値観ルールにより争いも絶えない。


その呼鐘エリアを例えに出してチャンドラは空き缶を拾って、ムジナの四次元道具箱リュックに投げ入れた。


おーい お、ま、え、ら またか!!


リュックの底で怒りにも似た叫び声が聞こえるも、

グリーナは意識朦朧でゾンビ化されてるムジナリュックを引っ張り、チャンドラと共にゴミを投げ入れた。


四次元道具小屋管理人ポラッタの叫び声と共に。

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