第12話:現代の魔術を習う

 「アンナ様、朝です。起きてください」


 「ん~~・・・?」


 朝、使用人に起こされて起きる。部屋に設置されている時計をみるとまだ6時。随分と早く起こされた模様。


 ちなみに寝るときは耳と尻尾の魔法具を外し、使用人によって用意された寝巻を着て寝ている。昨日寝る前に寝巻をもって来た使用人の前で、耳と尻尾の魔法具を外した時は凄く驚いていた。どうも狼の獣人だと思ってたらしい。当然なんでつけてるのかと聞かれたから、これ魔法具なんだよねっていったら更に驚いてた。

 そういえば伝えてなかったなぁとか思って、私の持ってる物大体魔法具だからって伝えておいた。もう驚きの声すら出てなくて現実逃避してた。


 師匠が言った通り、魔法具ってトンデモない代物だったらしい。メイドさんもその話聞いて私の服持つの躊躇ってたし。さすがにその管理させるつもりもないから、自分のアイテムボックスにしまっておいた。魔法具だから多分洗わなくていいだろうし。


 ・・・そういえば師匠って魔法具の効果わかるみたいなんだよね。私のテントの中を案内した時そんな感じだったし。鑑定の魔法具とかそんな感じのを持っているんだろうか。今度聞いてみよう。私魔法具の効果なんとなくでしか把握してないし。


 そんなことを思いつつ、私服を着て、髪を使用人に整えてもらい、ダイニングに向かう。


 「おはよう、アンナ」


 「おはようございます。師匠」

 

 ダイニングに着くと既に師匠がご飯を食べていた。私も席についてご飯を食べる。パンにスープとシンプルだけど、普通に美味しい。転生モノでありがちなご飯が美味しくないとかはなくてよかった。多分、これは一般的ではないんだろうけど、朝から美味しいご飯を食べれるのは気分がいい。


 「そうじゃ、今日の午前中はお主に現代の魔術を教えるぞ。飯食べたら庭に出てくれ」

 

 私より先に食事が終わった師匠が、そういって部屋から出ていった。古式魔術が云々とか聞いてたから、何となく今の魔術とは違うんだろうなって気はしていたけど、実際どう違うんだろう?

 昨日の話を聞いた感じ、媒体を使う魔術っていうことみたいなんだけど、その辺どうなのか気になる。とりあえずさっさと朝食食べよう。


 朝食を食べ終えた私は、庭に出る。師匠は既に庭にいて、杖を持って待っていた。


 「よしっ、折角弟子を取ったからの。お主にも儂の技術を教えてやろう。」


 「えっと、師弟ってそういうものでは?私もそのつもりで弟子になったのですし。」


 「おっと、そうじゃったな。うん。何でもない。気にせんでよいぞ。」

 

 あっ、これ多分私の古式魔術目当てだったんだな。そんな露骨な反応をされたら流石にわかる。ジト眼でも送っておこう。


 ―――ジーーーッ

 

 「あっ、えっ、そうじゃな。まずはお主の使っとる魔術と儂の・・・というか現代の魔術の違いについて教えよう。まぁ見てもらうのが早いかの。よっと。」


 そんな私の無言の抗議をスルーして、早速現代の魔術について説明を始めた。師匠が持っている杖の先にライターほどの火が付いている。かと思えば、火から水へと変化し、そのまま徐々に氷になり、次に土へと変わっていき、最後には光球となって撃ちあげて爆発。朝の空に花火が上がった。綺麗。


 「っと、まぁ、こんな感じじゃな。違いはわかるかの?」


 違い・・・違い?えっとあれを古式魔術で再現するにはどうやれば・・・あれっ、無理じゃない?火は火のままだし、水は水のまま。あんな風にの属性を変化させるには途中で術式を変えないと・・・ってまじで!?!?そんなことできるの!?


 「えっと・・・発動中の魔術の術式を途中で変えることができる・・ですか?」


 「うむ、よく気がついたの。その通りじゃ。といっても儂も古式魔術について詳しいわけじゃないから、もしかしたらできるのかも知れぬが、術式を組んだと同時に発動する性質上無理じゃろと思っとる。」


 「私も無理じゃないかなと」

 

 古式魔術じゃどうやっても出来ないでしょ。逆になんでできるんだ。


 「じゃろうな。とまぁ、これが現式魔術と呼ばれる魔術媒体の使用が前提となっている魔術じゃ。いまお主が見た通り、発動中の魔術の術式を変えることができる。それとわかりにくかったと思うが、術式が出来ても魔力を流さない限り発動しないという特徴もある」


 「その魔術媒体ってどういう仕組みなんですか?」


 「昨日も軽く説明したが、この魔術媒体には魔力文字のパーツが刻まれている。これを組み合わせて術式を作成。最後に魔力を流すことで発動させるという仕組みじゃ。この時の魔力文字も古式魔術とはまた違うものになっている。まぁ、実際に使ってみればわかる。」


 文字のパーツを組み合わせると言われても、じゃぁどうやるのかがよくわからない。でも師匠曰く使ってみるとわかるらしい。師匠が持っていた杖を渡される。


 「まずはそれに魔力を軽く流してみい。そしたら何となくわかるはずじゃ。」


 言われた通り魔力を流すと、登録されている文字のパーツが頭に浮かんでくる。この文字を動かしてパーツを組み合わせようとすると、その通りに魔力が動いてパーツを組み合わせていく。この段階で魔力を消費した感覚がないのは何か不思議な感覚。


 「えっと確かにパーツを組み合わせてって感じですね。どう組み合わせたらいいんです?」


 「あっ、どのように組み合わせればいいか教えておらんかったの。これがその魔術媒体に刻まれている魔力文字と、その組み合わせで出来る魔術式じゃ。最初は覚えるのが多くて大変じゃが、慣れるとかなり楽になるぞい。これはあくまでも慣れてもらうようじゃから、大したパターンはないがの。」


 そういわれて渡された紙の魔術式をみると、古式魔術で使用する術式に雰囲気は似てる。古式で使用するのが甲骨文字(漢字を思いっきりグニャっとさせたやつ)で、現式で使用するのが一般的な漢字といえばその違いがわかるだろうか。


 とりあえずここに書かれている火生成の魔術を使用してみる。


 「えーっと、これをこうしてこうで・・・こう?あれっ?」


 書かれている通りに魔術式を組み立てたけど発動しない。なぜ?何か間違えたかな?


 「魔術式が出来たら最後に魔力を流してみい。それで発動するぞい。」


 おっと、そうだった忘れてた。魔術式を組み立てただけだと発動しないんだった。言われたとおり魔力を流すとちゃんと発動し、杖の先に火が発生した。この状態で術式を組み替えると・・・?あれっ、上手くいかない。


 「あぁ、術式を途中で組み替えるには一瞬で組み替える必要があるぞ。それこそ瞬く間にっていうイメージじゃの。」


 なるほどなるほど、一瞬で組み替える必要があるのか。えーっととりあえず火生成を発動させて、そして属性を氷に組み替える・・・こう!


 「おぉぉぉ!!」


 火生成の属性を変えて氷生成の術式に変えると、火の形そのままに徐々に氷に変わっていく。凄く不思議な光景だ。


 「ほう、今のアドバイスでいきなり成功させるとはの。お主がいまやった術式組換は上級者といえど出来ないものもおるのじゃがな。古式魔術を使えるだけあって魔力操作はお手の物じゃの」


 ・・・えっ、そういうモノだったんだ。それって何か例外的な技術ってだけで、古式魔術との違いに入れていいのか?・・・まぁ、古式魔術と現式魔術の違いはなんとなくわかったからいいや。


 「さて、じゃぁ後はそれに慣れるまで練習じゃ。何か聞きたいことはあるかの?」


 「この魔術媒体ってどうやって作られてるんですか?」

 

 もし自分でも作れるようならやってみたい。


 「そうじゃな、まずは魔氷と呼ばれる魔力そのものを凍らせたものを用意し、それに魔力文字のパーツを刻む。そうして出来た魔氷の魔力を杖や本に浸透させることで出来るのが魔術媒体というモノじゃ。まぁ、これはあくまでも一般的なもので、実際の作り方は人によって変わる。儂が教えてやってもよいが面倒なのでな。これ以上詳しく知りたいなら魔術学園へ行くとよい。あそこでなら学べるぞ。」


 魔術学園かぁ。面白そうだなぁ。・・って待って、いま面倒って言わなかった?いったよね。教えてくれないの師匠?


 ――――ジー――ッ


 「うっ、まぁ、そのぉ・・・なんじゃ。昨日魔術協会の賢者と名乗るものがおったじゃろ。その組織が作り上げた学園じゃ。規模がデカすぎて学園都市とも呼ばれとるの。あそこには儂に匹敵する魔術師もおるのでな。・・・ふむ、そういえば試験は3ヵ月後じゃったな。合格するとして入学は半年後か。丁度いいかもしれんの。どうじゃ、受けてみないか?中々面白い場所じゃぞ?」


 露骨に話を逸らした師匠。あと、時折考えてることが口に出るのをどうにかしたほうがいいと思う。

 っと、それはそれとして学園ね。話聞く限り面白そうだけど、どんな場所かいまいちイメージがわかない。それに錬金術とか調薬とかも手を付けていきたいしなぁ。どうしよう。


 「まぁ、今すぐでなくともよい。じっくり考えておけ。今日の授業は終わりじゃ。次の授業までにその杖の操作に慣れておくことじゃな。」


 なんか、授業終わっちゃったし。てか、これって授業っていっていいのか?いいのか。師匠は家に戻っていったけど、私はここで現式魔術の練習を続けよう。これに慣れておけって言われたし。そういえば昨日、協会の人から私の本を写す報酬として、最上級の魔術媒体を渡すって言ってたっけ。なら、余計にこれで練習をしとかないとだね。せっかく良い物を貰ったのに、それを宝の持ち腐れにはしたくないし。しっかりと練習しよう。

 

 

 


 


 

 

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