馬並みのオオカミって考えると恐ろしいよね。熊より怖いある。

 かえってきたよーかえぇってきたよーまーちーにー

 男爵領とはいえさすが街、ちょっとびっくりする人は居るけど私たちを見てもなんとも思わない人が大半。

 なんでも魔物使いが職業としているそうで、見慣れて居るみたい。サーカスとかモンスター退治とかで活躍しているそう。

 ただ、役所には呼ばれまして。従属証明登録をしろとのこと。


「名前をつけて、心から私に忠誠を誓うかという問いに肯定すればそこに置いてある人形が光るらしいんだけど。名前決めてないんだよなあ……」


 ちなみに犬っころがデカすぎるので役場の外でやっている。


「名前何にしようかなあ。うーん、よし!!」



「黒犬、お前の名前はぽちだよ! ぽちだ!」



 しゅわわわーん、人形が光に包まれる。


『ご主人様、これからよろしくお願いしますわん!』


 ぽちの心の声を聞いた時、私とぽちは心と心で繋がったのである。


 子供の方は普通の動物だったらしい。なので証明や登録する必要は無かった。でも名前が無いのは不便なので、名前をつけた。お兄ちゃん犬が『大豆』で妹ちゃん犬が『小豆』。


 これで私たちはファミリーとなったのであーる!!


「よし、それでは商人ギルドに木材下ろして参りますね。役所の人お疲れ様でした」


 そういって役場を去る。

 ぽちは陽気に歯でリアカーの手すりをかんで引っ張っているけど、専用の道具が必要だよなあ。体に引っかけて引っ張った方が良いと思う。防具購入より優先して作るかな。何度か行商を繰り返せばなんとかなるだろう。

 あと、鞍も欲しい。やっぱご主人が乗るなら別乗りのリアカーじゃ無くてそこでしょ。でしょでしょ。


 商人ギルドへ行き、木材を卸す。かなりの高値で売れた。長いままの木材を持ってきたのが凄く良かったみたいだ。その方が使い道広がるもんね。


 商人ギルドついでに割の良い行商ポイントを聞き出す。

 魔鉱石という、魔石が混ざった鉱石が取れるポイントがあるのでそこに資材を届けに行って、帰りに魔石と魔鉱石を持ち帰るのがベストらしい。

 異世界も普通に時間が経っているので、化石燃料のような感じで魔石が地下資源として取れるんだってさ。別にモンスター”のみ”から魔石が供給されているわけでは無いみたい。まあ、魔鉱石の魔石って元はモンスターだと思いますが。


 懐がホクホクになったところでちゃんと引っ張れる道具と引き物をあつらえることにする。

 巨大モンスターで引く大型四輪~六輪馬車と、大型犬二匹で引く中型四輪馬車かな。それにちゃんと体で引っ張れる引き具。

 犬が引くから犬車って書くのが正解だろうけど、物そのものは馬車だから馬車が本当の正解だろう。いや、引き車? 大八車? うーむ。わかりやすく馬車で。


 さすがに馬車をあつらえるのはかなりのお金がかかるので、魔鉱石採掘場への資材を届けるお金を前借りしてまずはリアカーの拡張を図った。呼び名問題リアカーの前に完全敗北である。

 既存のリアカーも資源として使いながら、四トントラックの荷台くらいある六輪リアカーを新調。スプリングも入っていて揺れにも強い。幕も張れる。巨大モンスターオオカミが引っ張るなら十分だろう。


 子供達が引くリアカーは今回は無い。次作ろうね。だから私が寝る場所は巨大六輪リアカーの中になる。


 今回はぽちに特注の鞍を取り付けた。背中首元当たりにちょうどあまり動かないポイントがあったのでそこに配置。犬は馬と違って全身の骨をぐにょんぐにょん動かすから鞍が取り付けられるようなポイントが無いんだよ。

 ぽちはモンスターだから、ちょっと骨の構造が違ったみたいだ。


 馬も全力疾走の時は背中の骨を動かすけどね。それでも犬ほどでは無い。

 ちなみに猫はゴムのように伸び液体のようにつかみ所が無いので鞍を取り付けるという概念時代が無駄である。やつらはゴム。液体。そもそも鞍を取り付けられるのを大変に嫌う。

 狐も全身を猫のように伸ばすから鞍の取り付けや荷物を背負うのは難しいかな。猫と狐は生態が似ている。



 準備ができたので届ける資材を大量に積んで採掘場へ出発!

 ここは需要があるので開拓村というよりかは遠方資源採掘基地という表現の方が良い感じで、道も整備されているし、結構他の運搬部隊を見かけることができる。


「るんるんだねえ、ぽち。一緒に歩くって楽しいねえ」

「わん!」

「ぽちは体高があるから世界が広がって見えるよ。ほら、あそこで……モンスターとの戦闘が発生しているんですけど!?!?」

「バウ!!」


 大豆と小豆をリアカーの見張りに任命して、ぽちと一緒にモンスター戦闘が起こっている場所へと駆けつける!! ぽちはええ!!


 戦闘している人は三人。二人ほど負傷して動けなくなってる。

 敵は……デカいゴブリンとブタのオークだな。デカゴブリン一匹にブタ六匹だ。

 デカいゴブリンってなんだっけと思いつつ現場へ到着。

 ぽちの突撃でとりあえず三匹のブタのオークを弾き飛ばした。即死だろうな。デカいってつええ。


「大丈夫ですか!?」


 ぽちから飛び降り戦闘中の人たちへ声をかける。


「ああ、助けが来たか。ホブゴブリンのおかげでモンスターは強くなってやがるしこっちは匂いのせいで戦力ダウンだ、危ない所だった」

「なるほど。ぽちはホブゴブリンをやって! まだ気は抜かないでくださいよ!」

「ガオォン!」


 言うが早いがぽちは前足アタックでホブゴブリンを叩き潰す!

 ものすごい匂いがあたりに充満する!


「は、吐きそう」

「くさくてうごけねえ」

「ぶひ!ぶひぶひぶひ!」


 幸い、ブタのオークは一気に数が減ったのとリーダー? のホブゴブリンがやられたおかげで逃げ去っていった。


「助かった……。ありがとう、狐殿」


 私に感謝を述べる司祭っぽい人。かわいい娘ですねえ、匂いが美しい。グヘヘ。


「そんなことよりも早く治療しないとリーダーが死んじまうぞ!」


 こより‐54を着ている一名がそう叫ぶ。


「まずは移動しましょう。この匂いの中では私の回復術も使えません」

「移動に耐えられるほどの体力はこいつに残ってねえ、もう殆ど意識がねえんだ!」


 匂いか。


「ぽち、香り!」

「バウ!」


 ぽちからつばが飛んでくる。キチャネークセー。でもこのつばに香りの属性が封じ込まれているのだ。

 つばをべっとりと浴び、香り属性を貰う。


「よっしゃ。詠唱、祈り、動け我が魔力! 唱えるは『癒やしの香り』!」


 ゴブリン対策で覚えておいた香りの魔法を唱える。あのときは風で余裕だったけどね。


 私を中心に柔らかい、フレッシュな甘い香りが周辺へ漂っていく。

 ぽちが風上に向かいブレスを吐く。ふーってしただけどね。

 風下の運搬部隊は私の香りに包まれた。


「これは凄い。では回復術を!」

「集中していないと香りが途切れちゃうから何もできませんが、ウチの治療道具持ってこさせます。大豆、小豆、聞こえてるよね、来て」


 司祭っぽいさんがせっせと回復行為をしている間にウチのリアカーが到着。治療道具を小豆が咥えてくる。

 それを残り二人の仲間が扱ってもう一人の治療を開始する。


「ある程度はこの香りが治すので、きっちり縫合するとか骨をしっかり戻す等をすれば大丈夫ですよ」

「すまないな、本当に助かる。まさかグループを組むほどモンスターの拠点が大きくなってたとはな……」

「今は回復に専念しましょう」


 数刻後にすっかり元気になった運搬部隊のみなさん。


「いや、本当に助かったよ。このお金はお礼だ。私たちはすぐに街へ戻って討伐軍を要請してくる。要求が通るかわからないが、あんな大きな群れが街道を襲ってくるとなるとよほどの大規模運搬部隊じゃ無いと……」

「まあ、お元気で!」


 夜になりそうだったので、話を早々に切り上げて私たちは別れた。

 魔鉱石採掘場へは夜間到着した。『すごいきつねの目』で夜目が利くんだなあこれが。


 状況を報告してその日は就寝。

 次の日資材を受け渡す。


 酒場の掲示板に通達が出ているというので見に行く。


「街から伝令が来るまでは外へ出ずにこの基地で待機、かぁ。街道に七匹のモンスター出現だもんなあ……」


 うーん、ここには長く居そうだな。

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