オオカミって犬で良いよね????

 豚肉になったブタのオークを三匹で食い荒らした後(お腹すいていたんだろうなあ)、結局村まで付いてきましたよこのわんこ達。

 ただ単に付いてくるどころか、親は前足でリアカー支えて後ろ足で押し出して、リアカー運ぶの手伝ってくれたし。かわいいな。

 村に着いたんだけど、まず騒ぎが起こった所から始まったよ。

 だってこの犬モンスターなんだもん。魔石が入ってるのよ。害が無いから付いてこさせたけどさ。

 とりあえず私のペットということにして、お手とか伏せとか、伏せをしてから背中に乗って乗り回したりとか、曲芸をさせて所有者は私だということを強調。村の外で待機するならよしということにしてもらった。


「君たちデカいから悪目立ちするんだよねえ。元気になったら大人しく生きていくんだよ」

「わん!」

「話聞いてるんかねえ。ほら、子供もお食べ」

「キャッキャ!」

「無邪気だねえ。体はシベリアンハスキー並にデカいというのに」


 村人からもらった干し肉を与えつつ、ぼやく私であった。


 この開拓村に来て本当に良かったなあと思ったのが一件ありましてね。


「草津よいとこー一度はおいでー。はー、びばのんのん」


 そう、お風呂があるんですわ。しかも檜風呂。いや檜じゃ無いんだけど異世界だから、でもそれに似たような香りのする木製お風呂があるの!

 なんでもここの特産品がこの檜っぽい木材だそうで、だからここには木製お風呂がある。

 普通、お風呂は男爵以上の爵位を持った人が運営している街じゃ無いと見かけないらしい。でも特産地なら木材は使いたい放題だ。

 なんでも、この木に浸かった水には疲労回復効果が付与されるそう。林業は重労働だもんね。ゆっくりお湯に浸かりたいよね。シャワーじゃ無くてお風呂なのが理解出来た。


「さて、この木材を引き取って帰りたい訳だが……」


 流石にリアカーではなあ。


「バウ!」


 すると目の前で親犬がドスンと伏せた。

 なるほど、私の背中に載せれば良いと。


「しかし君を連れて街まで行ったら大騒ぎだよ」

「ワウ?」


 不思議そうに首を傾げる親犬。え? 既について行く気満々ですか?


「そうか、来るのか。なら何も言うまい。じゃあ臭い臭いを取るためにお風呂入ろっか。お風呂というか、源泉かけ流しだから排水を貰って水洗いだ! 疲れも取れるぞ!」


 というわけで許可を貰って誰もお風呂に浸かっていない深夜に排水溝から水をとる。私の白色が水属性になったから水を操れるようになった。


「ほーれ放水じゃー。ジャバジャバ」


 まずは子犬から。

 石鹸も借りたので石鹸水をとばどば掛けて、揉み洗いする。これ、結構重労働だ……。


 ジャバジャバ洗って汚れがスッキリすると、子犬は白銀のオオカミと容貌を変えていた! シャインオオカミだったの!?


「凄いな、本でしか読んだことないや。なるほどなー、知能が高いのも頷けるわ」


 さて早速兄妹でじゃれあって土ぼこりまみれになった二匹を眺めながら親犬を洗い始める。みずぷしゃーぷしゃー。


「洗っても洗っても黒色から変化がないなー。黒色オオカミ系モンスターなんて本で読んだことないや」


 意外とレアなのかな。

 すると親犬は、ブルブルっと身体を振って水を飛ばす。私びしょ濡れじゃないですか馬鹿ーー!!


 ただ


 その水が放つ色は


 虹色だった。


 とても幻想的で、思わず自分に降りかかった水を忘れてしまいそうになるほど。忘れはしない、忘れはしないぞ親犬ぅー!


「水が虹色、そうか、全ての色を含んでいるから黒いのか。水が虹色になったのはプリズム効果で……」


 ためしに火を貸してといい、「バウ!」と言って私に火属性を与える犬ころ。水も木も金属も貰えた。おいおいおい、私と相性抜群ではないかい?


 ちなみに犬ころは属性を大して使えない。全部入ってるから取り出して扱うのが難しいのかもしれない。

 なるほどこれはコンビを組むべきだ。その体格で敵を圧倒し、その属性で私に色を渡す。色を貰えれば私はかなり強い。


「よしわかった。コンビを組みたいんだね犬くん。これから宜しく!」


「バウー?」と言ってそんなこと一度も言ってませんけどと顔に出る犬くん。させない、ここで別れることなんてさせない。というか付いていく気満々だったのにここで方向転換とか酷いじゃ無いか。


 ガシッと、農耕馬の二倍三倍はあろうかという犬くんの体にしがみつき、顔付近をワシャワシャする。

 犬はこういうのに弱いからな! モンスターオオカミとはいえ、こやつもこういうのに弱かろう!


「わんわん!」


 じゃれ合い返して私をバキボキに折りまくり(体格差!)、身体をベロンベロン舐めまわしてベタベタのベッタベタにした後(だから体格差!!)、「ワオーン!」と遠吠えをしてキラキラ光る目でこちらを見つめる犬くん。

 コンビ契約はなったかな。




「それじゃ、この四輪ロングリアカー貰っていきますねー」


 翌日、特産品として木材を大量に貰い(木材を運ぶ担い手が少なくて余りがちだったらしい)巨大リアカーに積み込み、親犬を引き犬として開拓村から出発。今までのリアカーに乗り込み兄妹に引かせて、意気揚々と街へと帰るのでした。


 街に着いたら三匹に名前考えないとな。

 犬ABCにしようとしたら何かにボカっと殴られた。誰!? 作者!? さ、作者には逆らわないことにしないとガクブル。

 ちゃんと名付けよう、ちゃんと。

 一号二号三号。


 ボカッ

 イタイ! 暴力反対!

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