1話 -結城日向- 制御不可能

「お湯を沸かすってさ、日本語変じゃない?」


三限後の休み時間、隣の席の海琴が俺に話しかけてきた。


こいつとは中学1年生の頃からクラスがずっと同じで、俺の数少ない友人だ。てか、親友だ。いやなんか、自分で言うの恥ずかしいな。


「本当は、水を沸かすなんじゃないかって言いたいの?」


「よく分かったじゃん。さすが僕の将来の嫁」


こいつと結婚なんて死んでも嫌だわ。

いやでも、こいつ料理上手いんだよな。

あと普通に気が合うからちょっといいかも。


「俺は、お前と結婚できねーんだ。ごめんな。巨乳のえろいお姉さんと結婚して毎日寝る前、耳かきされるっていう夢があるからよ、、」


それか、、


俺は廊下の前のドアで集まる女子のうちの一人を見る。


小柄で華奢なその子は、お姉さんなんて言葉とはかけ離れている。

そして、貧乳でまである。


ただ、俺はその少女、宮原琉衣に確実に惚れていた。


宮原も中学1年生の頃から同じクラスで、俺はだんだん宮原のいい所に気づいてしまって好きになっていった。


特に、宮原の笑顔はやばい。


隣にいるきみが笑う〜、恋に落ちる音がした、メールトッ♪ってやつだ。


「お前の夢なんてどうでもいいんだよ。お湯を沸かすの他にも、ご飯を炊くとかも変だろ?!」


こいつ話戻してくるのかよ。


今俺は、談笑してる宮原を拝んでいたというのに、、


ってあれ、宮原、女子の集まりの中からいなくなっちゃってるじゃん。畜生。海琴め。


「英単語のさ、自動詞、他動詞とかの問題なんじゃない?それの日本語バージョンみたいな」


まじか、宮原。ここに来ますか。そして話しますか。心臓が持ちません。だけど俺は、平静を装って言う。


「宮原、いかにも英語出来そうなこと言ってるけど、お前この間の模試の英語何点だったよ」


「、、、19点??」


聞いてほしい。200点満点だ。


内心、宮原と話せてめちゃくちゃテンション上がってる俺氏だが、顔に出さないのが俺の特技だ。


更に自慢をしたいのが、割と仲が良いってこと。脈アリなんじゃないかと思った時期もあった。俺に優しいし。


でも、俺だけに優しいわけじゃなかった。


簡単に言うと、宮原は死ぬほどモテる。あと凄い思わせぶりしてくる。やだこの子。小悪魔。そこも可愛い。


だから、この恋は叶うはずがない。心にしまうべき恋心ってやつだ。


俺は、何かに熱中しすぎる前に何時でもやめてきた。


部活は仮入部のみ。

勉強はそこそこの力を注いで、期末考査では大体順位半分くらいを維持。

友達も海琴以外とは、そこそこの距離をおいて関わる。


そして恋愛も、ちょっと気になる程度じゃ告白をされても付き合わなかった。


そして、完全に好きだと思える人が出来た時も、告白をしたことがなかった。


告白どころか、自分から話しかけに行く、みたいな努力も惜しんだ。

全力を出して傷つくのが怖いから。


だから、熱中しすぎる前にいつも途中で諦めてきた。


今回の恋だって諦めるつもりだ。

全力を出すだけ無駄だ。

叶うはずがないんだから。



でもそんな簡単に諦められないほど、俺は宮原のことを好きになってしまっていたらしい。

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