第26話 海水浴

真夏の休日、4人は海に向かっていた。

三条でカズヨシ、見附で関ぴょんと合流し寺泊に向かった。

特に海に行くことを決めていたわけではなかった。

当初は海岸通りを流すだけだったがあまりに暑い日だったので急遽決まったのだ。

爆音を轟かせたバイク4台は駐車場に入る。

8月上旬。海水浴客が多くいた。

「海パンねぇよな」

「いらねぇだろ」

カズヨシがあっさりとパンツになって言った。

カズヨシはずっとブリーフ派だった。

今日もぴっちりもっこりである。

関ぴょん、江口、マサミはトランクスだった。

4人もいると集団心理が働きさほど恥ずかしいとも思わなかった。

パンツ1丁の男4人が浜辺に向かったがいまいち場所が良くない。

人が多いのだ。

「なぁ、石地浜に行こうぜ」

関ぴょんが言う。

「石地だったら遠浅で少し泳げば磯場があるから人がいなくていいかも」

「んじゃそうしよう」

そそくさとバイクに戻り服を着る。

ふと見るとカズヨシはブーツのみを履きバイクに跨った。

「このままで移動しようぜ」

バイクに跨ったカズヨシは裸にブーツにヘルメットでまるで変態だった。

若いうちはこういうなんでもない事が楽しいものだ。

他の3人も同じスタイルで移動し数分で石地浜に付いた。

関ぴょんは高校時代に石地浜の海の家でバイトしていた事があり海に近い丁度いい場所を知っていた。

仕切り直して海に飛び込む。

浜辺には人が多くいたが50m先に磯部が見えそこには人はいなかった。

マサミは少しビビッていた。

『あんなとこまで泳ぐのか?足届くかな?』

基本ビビりで臆病者のマサミは怖かった。

映画『ジョーズ』を子どもの頃に見てからは深い海は恐怖でしかなかった。

関ぴょんが察したのか話し掛ける。

「大丈夫だぜ、少し深いとこあるけど2mくらいだからそこまで歩けばいい」

確かにずっと足がとどいていたので安心だった。

しかしだんだんと深くなる。

マサミは160cmにも満たない小男だ。

すぐに首ギリギリの深さになった。

不安になり振り向くとニヤニヤしたカズヨシが近づいてきた。

『ヤバい』

明らかに仕掛けてきている。

怖くなったマサミは一気に泳ぎ始めた。

でもマサミは平泳ぎしかできない。

あっという間に追いつかれ背中に乗られてしまった。

しかしすぐに離れイタズラっぽく笑った。

「ビビったか?冗談だよ」

乱暴に見えて実は優しいこの男がマサミは好きだった。

江口も笑う。

気が付くとまた足の届くところまできていた。

安心する。

ようやく磯場にたどり着くと関ぴょんが先に待っていた。

実は関ぴょん、中学まで水泳をやっていて一時期は県の記録を持っていた。

なるほど体形も逆三でかっこいい。

左足を岩に掛け磯場に上がる。

ん?

何か左足に感触があった。

違和感を感じ足を見ると海水に交じり真っ赤なものが流れている。

血だ!

それも結構な量に見える。

恐る恐る足の裏を見た。

!!!

ぱっくりと割れている。

そこから血が流れていた。

血を見たとたんズキンズキンと痛み出した。

磯場に足を掛けた時に切ったようだ。

「うわっ、やべえな」

関ぴょんが言う。

「俺戻るわ」

マサミはそのまま浜辺に戻った。


磯場に裸足で行ってはいけない。

こうしてマサミの海水浴は50mの往復、わずか10分ほどで終わった。








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