第25話 いづみちゃん

マサミには相変わらず彼女がいない。

ある日、関ぴょんが言った。

「ちえと付き合えよ、マジ行けると思うぜ」

ちえとはよく遊んでいる。夜2人っきりで出かける事もあるし

気も使わない。だが恋愛対象とは思ってもみなかった。

それにちえは不倫相手がいる。

ちえはその男にぞっこんで実らぬ恋によく泣いていた。

だから考えた事もなかった。

「やだよ、ありえねぇ。」

「んな事ねぇと思うけどな」

「もし仮に振られたら最悪だぜ。気まずくなるし・・・」

「そっか・・・じゃぁ、あの子どうだ?」

関ぴょんが指さした先には1人の小柄な女の子がいた。

「誰?」

「知らん。知らんけどかわいくね?」

確かにかわいらしい子だった。

「あれ、うちのクラスだぜ」

と、江口が現れ口をはさむ。

「いづみちゃん」

「いづみちゃん?」

「仲いいの?」

「いや」

「苗字は?」

「知らん」

相変わらず適当だ。

「何?関ぴょん口説くの?」

「いや、俺じゃねぇ、マサミ」

ブッ!

「違うよ!何言ってん」

コーヒーを噴出しそうになりながら必死に否定する。

「いや、いいんじゃねぇか?」

江口が言う。

「マサミより背が低いし」

「俺は背が高い子が好み!」

「じゃぁ、ちえ」

「何?ちえ?そりゃぁいい」

「いや、だから・・・」

面倒臭いやり取りになっている。

「自分の彼女は自分で決めるよ!」

その時マサミを革ジャンの腕が羽交い絞めにしてきた。

「そんなんじゃ、一生おめぇは童貞だ」

カズヨシだった。

「おめぇは今日からいづみちゃんな。俺たちに任せとけ」

その日から悪友達のいづみちゃんへの”意識付け”が始まった。


いづみちゃんを見つけると指をさす。

いづみちゃんがエレベーターに乗るタイミングがあれば一緒に乗る。

いづみちゃんが教室移動の時は江口がいちいち知らせてくる。

いづみちゃんの”今日のファッションチェック”


様々な取り組みがあったが直接話し掛けるような事はなく、あくまでマサミへの”意識付け”が目的だった。


1カ月後・・・

3人の努力の甲斐もあり、いづみちゃんはマサミにとってすっかり”気になる人”になっていた。








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