『非人哉』――『フェ~レンザイ -神さまの日常-』


 ジャンル:治愈日常玄幻ファンタジー搞笑コメディ

 おすすめ度:中国語初心者 ★★★★☆

       中国語上級者 ★★★★★★★★


 タイトルの意訳は「人ならざる者」。一汪空气氏の漫画が原作の作品。

 第一期全96話(2021/09/29)完結済み。第二期全48話、現在12話(2023/01/08)更新済み。

 現代の人間社会に紛れて暮らす「人ならざるもの」たちの日常を描いたドタバタコメディ。



 最初にあらすじをご紹介。


 九月キュウゲツは少女の姿をした九尾の狐。

 彼女の周りでは、中国の伝説に登場する妖怪、玉兎、龍、神仏など様々な「人ならざる者」が、現代社会にそれなりに適応して暮らしている。

 そんな中で種族の特性や能力などからさまざまな出来事が起きてしまう。



 中国の神話、伝承がこれでもかというほど詰め込まれた傑作。

 今までにこのアニメを超えるほど、中国神話を詳しく正確におもしろく描いた作品を見たことがない。

 中華ファンタジーに興味がある方、そうじゃない方も一見の価値あり。



 ここで個人的な推しポイントをご紹介。


 推しポイント①:これひとつで中国神話マスターってマジっすか?


 舞台は現代中国(おそらく北京)だが、本作にはこれでもかというほど神話・伝説要素が登場する。

 神仙、妖怪、仏様などその種類は多岐に渡り、それぞれの種族の特徴を活かした現代生活をしているから笑える。


 しかも不思議とその生活ぶりに納得してしまう。

 新たな登場人物が出てくるたびにわかりやすく説明がされていて、中国神話初心者でももんのすごくわかりやすい。


 最後のおまけコーナー「白沢が来た!(原題:白泽来了)」も見どころ満載。

 本アニメのマスコットキャラクター(※自称)の白泽ハクタク先生が中国神話・伝承の豆知識を教えてくださる。


 推しポイント②:登場人物が全員中国の神様、神獣、妖怪……ってマジっすか?


 これに関しては百聞は一見にしかず。

 ということで実際に登場人物を見てみよう。


 主人公は九月キュウゲツ

 二百年の時を生きた九尾の狐で、今も修行のため人間の姿となって一人暮らしと会社勤めをしている。

 作中描写を見る限りどうもオタク気質らしく、部屋はフィギュア等が散らばる汚部屋状態。

 身分証によれば1808年11月30日生まれ、年齢は二百歳過ぎ。兄がいる。


 九月の仕事仲間は月の女神嫦娥じょうがの眷属の玉兎、小玉シャオユー

 今の会社とは別に月の宮殿で働いていた経歴があり、そこで月餅という菓子を作る会社の社長を務めていた。

 社長という立場のためかその月餅をうんざりするほど食べているらしく、彼女自身は憎悪さえ向けるほどの月餅嫌い。

 怒らせると怖い。年齢は二千歳過ぎ、もしかしたら三千歳過ぎ……少なくとも九月キュウゲツよりはずっと上。


 九月の仕事仲間(二人目)は西海龍王の三太子で『西遊記』に登場する龍、敖烈ゴウレツ

 白馬へと変身することができ、その姿であの三蔵法師を天竺まで乗せて行ったことがある。

 人ならざるものたちの間ではかなり偉い存在だが彼自身は天然気質で朴念仁。

 胃袋の中は海とつながっているらしく、くしゃみや嘔吐をすると海の幸が飛び出してくる。

 周りからは烈烈リエリエというあだ名で呼ばれることが多い。年齢は二千歳過ぎ。


 九月の仕事仲間(三人目)はかの二郎神の相棒である神犬、哮天コウテン

 性格も無邪気な犬そのもので、よく言えば純粋、悪く言えばバカ。

 よく笑いよく泣く。年齢は二千歳過ぎ。


 九月の仕事仲間(四人目)は鳥の妖怪、精卫セイエイ

 別名「女娃じょあ」。海で溺死した少女が鳥の妖怪へ変化した姿とされる。

 頭の上に乗っている海燕は精卫の旦那様。

 あまりにも高齢すぎて年齢も誕生日も忘れちゃった。


 新入社員の刑天ケイテンは、中国神話の戦神。

 乳首が目、へそが口となった首のない男性の姿をしている。珍妙な形だがこれでも一応神様である。

 ややデリケート寄りの常識人ではあるものの、その独特な体型ゆえの気苦労が絶えない。


 九月たちの会社を率いるリーダーの一人は、観音大士。

 いわゆる観音様、観音菩薩。

 いつでもどこでもス◯バコーヒーを飲んでいる自由気ままな人物……に見えるが、実際は問題ばかり起こす九月たちに手を焼いていて、わりと苦労人の部類。

 蓮華座(仏像の下にある花のような台座)は車代わりに、光背(背後の光の輪)が無限収納具になっている。


 その他にもまだまだまだまだ……たくさん!?


 推しポイント③:日本語で見れるって、マジっすか!?


 中国語版はかなり上級者でないと完璧に理解するのは難しそう。

 以前は、北京で発行されている日本語雑誌『人民中国』の出版社である「人民中国雑誌社」が、Twitterアカウントで不定期に日本語翻訳版を掲載していた。

 しかし初期のごく一部の話のみ。


 後に2018年9月から「中国漫画館」というTwitterアカウントから不定期紹介ではなく正式に連載が開始された。

 これら「人民中国雑誌社」や「中国漫画館」による翻訳版は、権利者から正式に許諾を受けて翻訳しているらしい。

 つまりは公式の日本語訳が見れるということ!!


 YouTubeで和訳&中日比較版が見れるので中国語の勉強にもおすすめ。

 以下公式アカウントのリンクです。

https://m.youtube.com/@user-ud7qd7yd5r


 追記:日本語吹替版が7月ごろテレビ東京系で放送予定。

 それに合わせてかYouTubeの字幕版は削除されていました。



 ここでちょっとだけ小ネタをご紹介。

 ……と思ったけど、言うほど小ネタなかったので今回ばかりは割愛します。



 手軽に中国神話を感じられる斬新なコメディ、ぜひともおすすめしたい作品です!



 (記:2023/01/08)

 (追記:2023/06/17)


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