第33話 デシャップ
告白騒動を沈静化すらことが難しいと悟った俺は、バイトの時間が迫っていたことを言い訳にに萌香と家を出ることにした。
ちなみに久美と仁は、人柱にするため置いてきた。
すまんが頑張ってくれよ!
俺たちのために(笑)
バイクを取りにさっき止めた倉庫前まで移動したのだけど、爺様たちがこっちでたむろしていた。
下手な不良より厄介に感じていた俺は、絡まれたくはなかったが爺様たちの前にバイクがあるので仕方なく向かう。
が、俺のバイクがない…?
まさか…。
「爺ちゃん俺にバイクがないんだけど?見なかった?」
「ん?お前のバイクならほれ、あそこだ。」
爺ちゃんが指をさした方向を見るといつの間にか来ていたのか、カモガワバイクのトラックの荷台に積まれていた。
やっぱりか…。定期点検サボってたからな。
「さっき婆さんがトラックできたから丁度いいと思ってな。ついてだから整備しといてやる。さっき点検したら、気になる部品とかもあったしな?定期的に点検にはもってこい!さっきの話じゃねぇが怖さを忘れんなよ。」
「そういうわけで、俺のバイクを貸してやるよ。ドゥカティのスクランブラーだ。こいつは400㏄だから萌でも乗れる。女の子も乗せるんだからこのくらいのシートがいいと思うぞ。こいつは、さっき話していたようにいろんな路面に適しているし、乗りやすいからな。気に入ったら乗り続けてもいいぞ。」
と、
「萌、スーパーモトってレース知ってるか?県内でも茂原でレースをやってたりするんだけどな。モタードのレースで、
お、そいつは面白そうだな。でも、コレそんなにいいバイクなの?!シンプルなバイクに見えるけどやっぱりイタリア製はすごいのか?
俺がジト目で睨むと会長はバツが悪そうな顔をしていた。
「そう睨むなよ。真一郎のバイクで学べることも結構あるはずだ。なんなら、そのバイクに乗り換えた方がお前にはいいのかもしれんぞ?WR250Rはもともとレース向けのバイクだから、女の子をけつに乗せるにはきついだろ?だからというわけではないが、源治の言う通りこいつはしばらく預かって鍛えておくよ。機会があればお前もレース見に行ってみな。チケットならやるからよ。少しは遊びも覚えろよ、萌。真面目過ぎると嫌われるぞ?」
爺ちゃんから鍵を渡され一通りのバイクの説明も受ける。
爺ちゃんの言う通り、外国製のバイクにしては癖はないし乗りやすい。また、シートも厚いのでお尻にも優しかった。
萌香も喜ぶかな?萌香をちらっと見ると、
「私は、萌君の青いバイクも大好きですよ?でも、こっちの黒いバイクも萌君には似合いますね。カッコいいですよ!」
「そっか。ありがとう。そういうことなら、爺ちゃんしばらく借りるよ。じゃあバイトに行ってきます。」
「皆さん、今日はありがとうございました。では、行ってきます。」
「気を付けて行っておいで。また遊びに来なさい、美人さんだからな、いつでも歓迎だよ。」「ん、だな。萌は良い嫁を見つけた。」「なんたって、俺らにも優しいしな。」
そんなこと言ってると知らねーぞ。
にぎやかにやっているうちに、俺たちは敷地を出た。
ドゥカティは今までもバイクより足つきもいいし確かに運転がしやすい。その上萌香との距離が近くなったような気がした。
こういうのも楽しいな。
※ ※ ※
バイクを駐輪場に止める。たぶんいつもと違うエンジン音が聞こえたからだろう。
オーナーが店から出てくる。
「萌、お前とんでもないのに乗り換えたな?萌香ちゃんのお父さんからのプレゼントか?」
どんなプレゼントだよ?!
「違いますよ、オーナー。これは爺ちゃんから借りた
「盗まれたって、お前。今度は何をしでかしたんだ。」
「そうですよ、
「ん?萌香ちゃん告白って?萌くん?奥で話を聞こうか?」
「オーナー!仕事!バイトあるから!着替えてきます。萌香も行こう!!」
「ん?萌香?呼び方まで変えたのか?ま、いっか。いずれにしてもまだ中が終わっていないから、仕事にはならんよ。それから、うちにも新システムを導入することを考えていてな。そのことを、説明するから中に入ってくれ。今日はディナータイムから営業を始めるぞ。」
へー。ディナータイムからって言い方がレストランみたいでカッコいいな。しかし新システム導入ってどういうことだ。なんか新しい機械的なものが入るのか?
よくわからないながら思いめぐらせながら、更衣室へ向かった。
着替えを済ませ事務室の方へ向か時、丁度萌香も合流して一緒に入った。
「お前ら仲いいな。本当に交際スタートさせたのか?新カップル誕生か?」
ここは俺から言うべきだろうな。
「そうなんです。さっき告白して、受け入れてもらいました。」
「萌君から告白してくれまして、結婚を前提に交際することになりました。」
確かにプロポーズぽいことは言ったけど結婚はまだ早いのでは?
「ね、萌君?」
心の声が漏れたのか??
「も、もちろん!結婚を前提にお付き合いをすることになりました。」
オーナーが大笑いしている。
「萌は、早速尻に敷かれてるようで何よりだよ。大丈夫、そのほうがうまくいくさ。男女の関係はな?hahahaha!」
笑い過ぎです。
「後で、義仁にも教えてやれよ。あそこも夫婦で気にしていたから。バイクの事も教えてやってくれ、あいつも排気量は違うがドカティに乗ってるからな。」
マジっすか?
なら教えないとなぁと横を見ると萌香が目をキラキラさせていた。
これは、あとで美和さんと恋話をするつもりだな。
「それでオーナー、新しいシステムっていうのは機械が入るってことですか?」
「いやいや違うよ、うちも喫茶店というよりもレストランに近くなってきたでしょ?だからデシャップというものを導入しようと思っているんだ。知ってるかな?」
「デシャップですか?ホールスタッフに料理の受け渡しをする人でしたっけ?ファミレスなんかでもいますよね?」
「さすがに萌香ちゃんはよく知ってるね?もともとは盛付完了という意味でのDish upからきている言葉なんだけど。
レストランなんかでは、調理スタッフが料理を作る順番を管理したり、コース料理のマネージメントをしたりと色んな仕事がある重要なポジションみたいなものだね。
で、デシャップについては調理人が兼任することも多いけど、ホールスタッフが間を取る形でやることも多いんだ。
ま、この辺は日本では運用の方法のひとつ言ったところかな?
そこで、うちでは先ずは萌と萌香ちゃんにやってもらおうと思っている。」
「ん?」「うん?」
「「えっ、えぇぇぇ!?」」
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