第12話 新たな出会いとバイト・・・。

4月20日、GWゴールデンウイークまでもう少しという金曜日。

これまでの俺の大型連休といえば、山岳会等が主催する山岳レスキューの訓練に父の友人にお願いし混ぜてもらったり、オフロードバイクの講習(二輪免許なしでも参加できるJr.コースだけど)に鴨川バイクを通して参加させてもらったりしていた。

今年は母・妹と話しあい、おとなしく父の帰りを待つことにした。祖父母からも友人と遊ぶよう諭されたのも一因ではあるが、本人?が近いうちに帰ってくるから家族を守りつつ待て!という指示を出してきているのでそれを信じて待つことにした。


我ながら単純なことだと思うが、俺自身も父さんのことばかりを考えすぎて周りに迷惑をかけてきたことを今更ながら感じたのだ。

だからと言って今までの行動については、ほぼ後悔していないが。

思っていた以上に家族や友人達に心配をかけていたことについては反省もしたが。

こんなに心配されていたとは思ってもいなかった。

これからはそれらの恩も含め返していきたいと思っているのだが、どうしていいのかわからなかったので、祖父母に相談したらそんなのお前が幸せになれればそれでいいと笑いながら言われてしまった。孫の心配をするのは普通のことだからと。

ただ、友達や大切な人が同じように難しい境遇に立った時には助けてあげなさいと優しく諭された。


そして、本日の昼休みGWの予定が決まった。GWは生徒会メンバーと一泊二日のキャンプに行くことを除けば、ほぼバイト漬けであることが決定したのだ。

別に悲観はしていない。

父さん探しの為の海外渡航貯金の心配は一先ずなくなった。

だが、しかし俺の愛車の維持の為、お金がかかるのである。

WR250というバイクだが、とても優れた性能のオフロードバイクである。

しかしオンロードでは少し持て余すので、少し改造を施し、オンロードタイヤをはかせている。また、マフラーやエキパイもノーマルではないチタン製のため少々燃費が悪い、しかもハイオクが標準仕様なのだ。やはり燃調が課題だな。

真司さんに格安で譲って貰っておいて、すぐに壊すわけにもいかないのでメンテには気合を入れていた。故にバイトはサボれない。


バイトのない空いた時間は師範から未熟な精神も含めしっかり鍛え治してやるという、ありがたーいお言葉もいただいているので、空手にも溺れることになりそうだ。


聡汰も巻き込んでやろうと思ったが彼は剣道でしっかり絞られる運命にあるらしい。

キャンプ以外のデートのことが真弓兄に知られたらしく、結局剣道部でも稽古をつけられるみたいだと師範代が苦笑いを浮かべながら教えてくれた。

遊ぶ暇がなくなった聡汰が落ち込んでいたと・・・。ガンバレ聡汰。

GWは楽しくなりそうだな・・・・・・・。


学校帰り、怜雄や聡汰とも別れバイト先であるアグスタへ向かった。


バイクは店の横の駐輪スペースに置かせてもらっている。

俺のバイクは排気音マフラーの音が結構大きいため、店のかなり手前から押して店にまで言っている。

人の目も気にしていたのもあって裏路地を好んで使っていた。路地裏なので日中でも人通りは多くない。

夕暮れ時であればなおさらである。そんな路地の為、時折変な輩もいる。

とはいっても、俺に喧嘩を売ってくるような奴らもだいぶ減ったが、髪型やメガネの影響があるかもしれないため気は抜かない。


そんな事を考えていたのがいけなかったのか、所謂フラグがたってしまった。


この路地に入った時、女性と男性がもめいているような声が聞こえた。道を変えようかとも思ったが、明日のニュースになっていたら目覚めも悪いので再びバイクにまたがり、エンジンをかける。ギアをローに入れ、アクセルを調整しながらクラッチを開く。狭い路地の為、色々と気を付けながら飛ばす。

喧騒が聞こえた場所まではそんなに離れてはいないはずなので、を繰り返し障害物をクリアしながら揉めている人を探していく。

走り出し、5分ほどで揉めている男女を見つけた。

男性2人(おそらくチャラい高校生)と女性1人。

女性はをきている。

リボンの色から同級生だと分かった。顔はわからんけど。

位置がわかれば後は早い。何しろ、路地で相手を確認できる程の位置にいるのだ。その場でミーアキャットのようなをして、バイクの向きを変えフロントタイヤがしっかり着地したら、クラッチを切り思いっきりアクセルを仰ぎ威嚇する。男ども(チャラ男っぽい2人)の方を凝視していたため、向こうもこっちに気が付いたようで慌てている。


一路、揉めている3人のところに行き、チャラ男(確定)と女性の間に割って入る。


「おい、お前らうちの生徒に何してやがる?」

俺はメットも外さずバイクの上からチャラ男を威嚇する。


「てめえには関係ねぇだろうが邪魔だからすっこんでろよ。これからこの子と遊びに行くだけだからよぉ」

俺を雑魚扱いしているのかニヤニヤしながらチャラ男Aが、挑発?説明?をしてくるが、おとなしく聞いてやる義理もないため、女子を俺のバイクの後ろに匿い、俺もバイクを下りつつ事情を確認する。


「こいつらと遊びに行く約束してるのか?

ちなみに、俺は2年の齊藤萌だ。心配するな、ちゃんと守ってやるから。宜しくな。」

俺はできるだけ優しく伝える。


「え?いいえ、そんな約束はしていません。そこの二人が勝手に言い出したんです。断ったら腕を引っ張られて。怖くて・・・。

それで、大きい声を出したら叩かれて。」

助けた女性は震えだし。涙をこぼしながら教えてくれた。


「おい、てめえら。この子はこう言っているがどうなんだ?婦女暴行は犯罪だぞ?誘拐未遂か?つうか、この子の事なぜに殴ったん?」

俺はスマホのカメラでチャラ男の写真も撮りながら確認する。


「は?だから、あんたには関係ないでしょ?その子に用があるんだからあんたはどけよ。大体犯罪って何よ?ナンパが犯罪か?」

チャラ男Bが言う。

「は?何写真撮ってんだよ?!舐めてっとボコっちゃうよ?」

チャラ男Aがイキル。

だめだ、こいつら実力差がわかっていない。ダメだ、笑えて来た。

「なに笑ってんだっ?!」

チャラ男Aが大声を上げながら殴りかかってきた。

殴りかかってきたところを転身てんしんで躱し、軸足を軽く払う。チャラ男Aはあっさりバランスを崩し、顔面からヘッドスライディングを決めていた。痛そうだ。

それを見ていたチャラ男Bはビビりながらも、

「俺の友達に何しやがったぁ!?」

と、何気に友情に熱そうなことを叫んで俺に挑みかかってくる。

こっちの方が、ヤンキーのケンカとしてはマシな感じだ。

時折、回し蹴りを入れてくるあたり、格闘技を齧っていたのだろうが、遅いし怖くもない。

ハイキックが来たところで足を掌で受け、軸足の膝裏に下段蹴りを入れ転ばせる。とどめとばかりに圧力をかけ顔面横に踵を落とす。

当たったと錯覚したのか、それだけでチャラ男Bは泡を吹いてしまった。


チャラ男Aがそれを見ていて、逃げようと後ずさったためB君を放り投げて渡す。潰れてしまうA君。

一応学生服を着ていたので、生徒手帳を確認。

割と近くの学校のようであったので生徒手帳と潰れたABを記念撮影。今度悪さしたら、拡散すると脅しつける。

拡散される怖さは誰より知っているからな。

言葉の重みが違う。

這う々の体でA君がB君を連れて帰る。


さて、うちの学生がまだ居たなと振り返る。

うん。まだ居た。バイクの横に座り込んでいる。

よく見ると、同じクラスではないはずだが見覚えのある顔だった。

しかし、名前が出てこない。

長くきれいな黒髪が地面についてしまっている。まるで漫画の中のお姫様みたいに綺麗な女性だ(語彙力崩壊...)。

こんなにきれいな女性であれば忘れないと思うのだが、つい最近まで他人に興味を持たず、(あの人伊藤さんのことは事故的なもの)自分の殻に閉じこもっていたやつのいうことではないか?


「大丈夫か?怖かったよな。とりあえずバイト先が近くにあるからそこで休んでいきなよ。って、いきなり声をかけられても困るか?!」

気遣いの仕方がわからず慌てて声を掛けてしまったが、失敗したか?


「助けてもらってありがたいのですが、ヘルメットを外していただけたら、お顔を見てお礼が言えるのですが?

あと、立ち上がりたいので手を貸していただけたら助かります。」

さっきの泣き顔とは違い、とてもきれいな見惚れてしまう笑顔でそう言ってきたため、慌ててメットを外し、髪型を直しつつ、立ち上がってもらうため手を出す。

なんだか知らないが緊張してしまい動きが


「クスっ、ありがとうございます。。」


「え?俺のこと知ってる??」


「知っていますよ。あなたは覚えていないかもしれませんが私は昔にもあなたに助けられてますから...。」


「?!?、誰?マジで?」


思い出せないことと、バイトに遅れそうなことに混乱する俺であった。











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