第10話 妹の思い、取り戻したい絆・・・

※ 今回のお話は楓視点で短めです。


私は斎藤楓さいとうかえで

中学3年生で、高校受験を控えている。

そんな私に転機が訪れた。悲しいけれどうれしい転機だった。


7年?8年?くらいの間、お兄ちゃんとまともに話をしていない。

何年か前までは話しかけるのも怖かった。

もう私のことなんて嫌いなんじゃないかと思っていたんだ。

私よりも久美お姉ちゃんといるほうが幸せそうだし。

なんだか、お兄ちゃんを取られてしまったみたいですごく辛かった。

それも仕方ないと思っていた、自業自得だって。

でも、そうじゃなかったみたい・・・。

夢の中ではあったけど、お父さんにたくさん教えてもらったから。

もう以前のような不安はない!

もう後悔はしたくない。家族がバラバラになるのはもう嫌だ。

おじいちゃんおばあちゃんのおかげで、今まで本当にギリギリのところで繋がっていたんだ。

だから、もうお兄ちゃんを一人になんてしないと心に誓った。

もう、お兄ちゃんへの悪口を聞き流したりしない。もう逃げないって決めた。


私が7歳の時までは、本当に優しくて面白い自慢のお兄ちゃんだった。

お友達にもいつも自慢していたんだ。

私が小学生になっても、お兄ちゃんと登校していたなぁ。

でも、お父さんが居なくなってからはお兄ちゃんはだんだん変わっていった。

なんだか怖くなった。あんなにやさしかったのに。


お父さんが居なくなって、少ししたら家の周りにすごくたくさんの人が来るようになった。

当時の私でも何か良くないことがあったことはわかった。


大好きなお父さんが帰ってこないとは思っていなかった。


そして、あの時から、お母さんが私にものすごく優しくなった。


でも、それとは逆にお兄ちゃんには厳しくなってた。


少しの間、小学校もお休みすることになったの。


お兄ちゃんは一人で学校に行っていたのに。


お母さんは、アニメのDVDを観ていなさいと言ってたくさんのアニメや映画のDVDを買ってくれた。


知らない人が来たら絶対に玄関に行ってはダメとお母さんと言われていたし、約束をしていた。

お母さんは看護師さんだから忙しいのは仕方ないと幼いながらに思っていた。

寂しいけれど仕方ないと思っていた。


お母さんが遅くなるときはいつもお兄ちゃんが近くにいてくれたのにこの頃は、リビングに一人でいることが多かった。本当に寂しかった。

相変わらず、お兄ちゃんは一人で学校に行っていたから不思議だった。

兄ちゃんが学校から帰ってきた時に怪我をしていることがあった。

心配でお母さんに聞いても気にしなくて大丈夫と言っていたけど、あの後お母さんとお兄ちゃんが、大きな声でケンカしているのが聞こえて怖かった。

あの頃から、お兄ちゃんに声をかけても返事しかしてくれなくなった。


私はすごく悲しかった。お父さんが居なくなって、お兄ちゃんもいなくなってしまうと思ったからだ。心がとても痛かった。


そのうちに、この家にいたら危ないかもしれないからとおじいちゃんの家に引っ越すことになって、学校には私だけおじいちゃんか、おばあちゃんが付き添って行ってくれた。お兄ちゃんは一人だったのに。

でも、おじいちゃんおばあちゃんはお兄ちゃんともお話ししていることは知っていた。時々笑っていた。私もお兄ちゃんと話したいと思ったけどできなかった。

やっぱり怖かったから・・・。


高学年になって、お兄ちゃんがけがをして帰って理由を知ってしまった。

私は、お父さんのことはもう帰ってこないと少し諦めていたけど、お兄ちゃんは違ったみたい。お父さんの悪口を言った男の子達とケンカをしていた。

お兄ちゃんはすごく強かったけど、たくさんいる男の子に一杯たたかれていた。

先生が来るまでケンカをしていた。

お兄ちゃんは絶対に謝らないと大きな声で言っていた。

先生にも怒られていたのに。

家でお母さんにも怒られていた。

この時のお兄ちゃんの目が本当に怖くて・・・。

私は兄から距離をとるようになっていた。


気が付いたら私は母に対しても苦手意識を持ち始めていた。

兄のことを一方的に傷つけているように思えてきたからだ。

よくわからない感情だけど、私は母に対して怒っていたのかもしれない。


兄がこの家を出ると言い出したころから、祖父祖母には兄との関係を修復したいと相談していた。

この頃になって不思議と兄への恐怖心が薄らいでいた。

ゆっくり時間をかけなさいと言われるばかりで何も進展しなかった。

祖母に料理を教えてもらい、いつか兄に振舞いたいと思っていた。

時折ではあるが久美ちゃんと遊んでいるところを見かけた。

バイクで出かけたりもしていた。

羨ましかった。

久美ちゃん達といるときの兄は昔の優しい顔をしていた。

その中に入れないことが凄く悔しかった。

家族が奪ってしまったかもしれない兄の笑顔を、幼馴染が取り戻してくれたことに感謝もしたが、何も出来てない自分が凄く嫌だった。


そんなある日の夜、私の夢にお父さんが出てきた。

記憶の中では忘れかけていたけれど、夢の中でははっきりとした姿で私を見ていた。

心にはっきりと響くその声で、お父さんは教えてくれた。

幼いながら家族の名誉のために独りで戦っていた兄のことを。

嫌がらせにも決して屈しない兄のことを。そんな兄のことを怖がっていたがために傷つけていたことも。

でも、お母さんのほうが酷いことをしていたからこの後叱ってくるよと言っていた。

お兄ちゃんのことも強がってばかりで妹に心配かけるバカ者だと言っていた。

お兄ちゃんは私のことをずっと気にかけていて、学校で私をいじめようとしていたやつらも殴り飛ばしていたらしい。

楓のことを嫌ってなんかいないよとお父さんが教えてくれた。

ずっと兄が護ってくれていたのに私は・・・。

もう後悔はしたくないと思った。

お父さんは、思い切って想いを伝えてやれと言ってくれた。

よし!実行しよう!そうしよう!迷っている場合ではないとそう直感した。

お父さんはもうすぐ帰ってくると言っていた。

楓のことも愛しているとお母さんに似て美人に育ってくれてうれしいと。

勉強も頑張って!と発破もかけられた。

お父さんにそう言ってもらえて、私もすごくうれしかった。

お父さんが帰ってくるまでに家族を取り戻すという目標ができた。

私は後悔しない、絶対にするものか。

私はお父さんの残像に誓いを立てた。

そして目が覚め、兄が寝ている客間へ向かった。

大好きな家族に想いを伝えるために。







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  書く時の励みにもなります。 ^^) _旦~~


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