第4話 判明した事

 赤ん坊の名前は、クリスティーネという事が判明した。それからメイドが複数で、クリスティーネの世話をしていることも分かった。


 どこかで聞いたことがあるような名前。だけど、思い出せない。


 彼女は、身分の高い貴族の令嬢のようだ。それなのに、かなり雑に扱われている。そして、何故か恐れられていた。


 メイド達は極力、クリスティーネには近寄らないようにしているみたいだ。食事と着替えと、泣いた時ぐらいしか様子を見に来ない。後は部屋に一人で残して放置されている。


 父親や母親のような存在は居ないのか。メイドの他には、他には誰も訪れない。


 明らかに虐待のような世話のされ方だった。どうしてそんな事になっているのか、まだ情報が足りなくて分からない。


 それから、私のことについて。


 どうやら、人間じゃないようだ。人間の姿になることが出来て、獣のような姿にもなれる。自由自在に変化することが可能で、他にも変身できそうだった。できそうだと思っているだけで、まだ試したことはないけれど。


 それだけで、普通じゃないことは分かる。


 その他にも、睡眠や食事が必要ないこと。寝なくても何も食べなくても、全然平気だった。そのおかげで、ずっと赤ん坊のクリスティーネを見守ることが出来ていた。


 便利なことに、気配を消して隠れることが容易だった。私が気配を消すと、絶対に見つからない。


 クリスティーネの様子を見るために部屋を訪れたメイドの前に立ってみても、私は発見されることがなかった。ただ、気を抜くと察知されることもある。あらっ? と気付かれて、視線を向けられる。だから、人が近くに居る時は油断しないように気をつけないといけなかった。


 とりあえず今のところ、一度も発見されることなくクリスティーネの近くに居た。世話が雑なメイド達の代わりに、私がクリスティーネの面倒を見ていた。


 どうやら、この世界には魔法が存在している。私が願ったら、その通りになる事を確認した。手から火を出したり水を出したり、願った通り自由に出来る。この力は、他の人が持っているのかどうか分からないけれど。メイド達が魔法を使っている所は見ていない。もしかしたら、私だけの特殊能力なのかもしれない。


 そして、回復魔法も存在しているらしい。なんとなく出来そうだと思った。自然と理解していた。私には出来る。


 クリスティーネの肌は病的に白かった。明らかに栄養不足。サラサラで美しい髪の毛も、よく見たらケアが足りない。こんな部屋に閉じ込められて、不健康になるのも当然だろう。


 なんとかしてあげたいと願った時、私の体から光が溢れて、クリスティーネの体を包み込んだ。これが、回復魔法のようだ。


 光が消えた時、クリスティーネの肌に血が通って健康的な色に変化していた。髪もつややかになって、指通りのいいさらさらとした綺麗なものに変わる。うん、成功だ。可愛いクリスティーネに相応しい見た目になった。


 メイド達のスケジュールを把握して、クリスティーネを勝手に外へと連れ出した。人間の姿で彼女を腕に抱いて、窓から飛び降りる。そして、森の中を散策した。


 森の中を歩く私の腕の中で、楽しそうに笑っているクリスティーネ。やっぱり、外に出してあげないと可哀想だろう。


 こんな風に、私はクリスティーネの傍にずっと居て、彼女の様子を見守っていた。とても楽しい時間を過ごしていた。

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