第31詩 【カエルが歌うベートーベン】


真っ青な音楽の群れが


無数のうごめく虫となって


どうんどうん彷徨する



カエルの鼻歌が田んぼの内部に


ベートーベンの「田園」を


でんぐり返しさせる


オケラもつられて歌うし


ミジンコもすひょいすひょい


なにげなくやる


いつの間にか


カエルの鼻歌が大合唱に変わり


田んぼじゅうが


天へ「第九」を吹き上げる


のけぞりながら歌う


カエル数匹


あわ吹き倒れ 起き上がれない


そのハザマからそのハザマから


天を揺るがすようなたましいの歌い手


カエルのうた


うたう歌う


カエルの咽(のど)は


天をつかみ放さない


土ぐらいコロナから


真っ青な音楽の群れが


無数のうごめく虫となって


どうんどうん天をさまよう





カエルは歌う


天に憑かれ


澄んだ緑色に輝きながら




                              

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