第28詩 【蒼い鳥】


失われかけた心の世界を求めて


私は旅するだろう



時も忘れ去り


旅してゆくだろう



朝 オナガたちの声で


純真に目覚める子供のように



いつごろか そこへ入ってゆくだろう


  (窓には いちめんの霜歯朶(しもしだ))



深い巨きな森の中



樹林の 突き出したひざこぞうや


ひるがえした踵(かかと)の粘膜(ねんまく)に


自然と湧き出す鱗苔のように



ユラとうら そこへ入ってゆけることだろう


  (窓には いちめんの霜歯朶(しもしだ))



そそり立つ雪山の胸板から



雪崩の橇(そり)に裸一貫のし上がり


雪男が燃え上がる生と死の間を滑ってゆくように



失われかけたうちなる世界を求めて……



暗く冷たい雪原を 歩き彷徨(さまよ)うことだろう


  (窓には いちめんの霜歯朶(しもしだ))



やがて 独りになってしまっても……



雲間を指し見て



白いミカヅキの光明を


願い続けることだろう


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る