第27話 【遺跡の地】


馬車(タンガー)からふわり降り立ち


この地を踏んで


石と土との階段を


とっくりとっくりと進めば


古びた遺跡や


それを抱いた山並から


古代の風が小鹿のように


颯(さっ)と流れては


過ぎ去って行く



二千五百年も昔に


造られたという


それを耳にしたぐらいで


こんなにもぞくぞくするくらいだから


その一つの石に


  (遺跡の一部だが)


触れたものならば


わけもなく天に力みたくなる


そういう気分になる



とんとんとその石を弾けば


  (軽く指でだが)


その音があまりにも素直に


空に響いて行く



ここは山頂(いただき)から


わずかに降(くだ)った平たい高み



ほら こんなにも


景色は空いちめんに広がっている


ここに真綿のような雪なんか積もったら


どんなにきれいだろう


  (そんな夢想なら 実に愉快なかぎりだ)



陽ざしはその全身から


しぼりつくすように光の金粉を放つ


砂塵も舞い上がり


風がそれをひどく荒らし回り


あたりは降るような金の陽ざし



目がひどく痛み出し


鼻から雫(しずく)落ち


もうしょうがないな


こんな景色なら


長く居るわけにもいかない



けだし いまは


だまってここに


立ち続けていよう







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