弐の章

弐の一

 見上げれば真っ黒の天井。

鉄格子で囲まれた歪な部屋。

両腕の自由はきかない。

昔は真っ白な天井を眺めていた。

沢山の家族。一人も血は繋がっていない。

だが確かに家族だった。

あの日、何も起きなければ。


 地球の開拓・・・・・以降、世界中では生物に階級がつけられた。

下級人類アンダー中級人類ミドル上級人類アッパー

下級人類アンダーは地下で暮らし、中級人類ミドルは地上の一般街で暮らす。

そして上級人類アッパーは地上の富裕街で暮らすことになった。

振り分けは至って簡単。

異星人にもたらす物があるか、ないか。

基本的に異星人はどの星も地球の科学力の遥か先にいる。

そんな中異星人が気に入ったのは地球の自然と、地球人の生み出す芸術だった。

芸術の街ローマを始めとしたいくつかの世界的芸術文化は多く残された。

だがしかし、日本を始め、芸術的歴史の浅い国々は当然力を持たない。

個人で才能を持つ人間たちを除き、殆どが下級人類アンダーに分類された。

 芸術が全ての指針。

そうなってくると当然元々社会的地位の低い地球人は淘汰される。

ツヴァイ・アムロスもその一人だった。

彼には親がいない。

開拓後に産まれ、親を無くした者も同じだ。

そういう孤児は優先的に地下へと追いやられる。

そんな中彼を救ったのは一人の地球人の女性だった。

彼女の名はシスター・アインツ。

ドイツの裕福な家庭に生まれ、若くしてその芸術的才能で巨万の富を得た。

そんな彼女はその資産を全て一つのことにあてた。

それがツヴァイたちの救いとなる孤児院。名は〈ブラックハウス〉。

ブラックハウスという名は彼女がつけた。

 彼女は言う。この広い世界に存在する全ての生物には色がある。そして全ての色は混ざり合えば〈黒〉となる。黒こそが全ての平等の結末である。それがブラックハウスの由来だった。

崩落した現代社会において極めて珍しい本物の善。

それが彼女、シスター・アインツなのだ。

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