第11話「太陽と戦慄パートⅣ」キング・クリムゾン

 前話「プログレ・アーティストによらないプログレたち」の最後に羅列した中で、書き忘れたアーティストがいましたので、追加しておきます。


 ラルク・アン・シエルの「DIVE TO BLUE」、「forbidden lover」、「winter fall」、「STAY AWAY」。


 この頃のラルク、好きでしたね。この4曲はどれも美しく、「forbidden lover」を除く3曲は躍動的でもありました。



 さて、懲りもせずまたキング・クリムゾンです。


 キング・クリムゾン12作目のスタジオ・アルバム、というより、再々結成後2作目のアルバムとして2000年に発表された「コンストラクション・オブ・ライト」から、「太陽と戦慄パートⅣ(Larks' Tongues in Aspic Part IV)」及び「コーダ:アイ・ハヴ・ア・ドリーム(Coda: I Have a Dream)」。


 この2曲は繋がっているので、実質1曲と考えられます。


 原題の「ラークス・タングス・イン・アスピック」というのは、「雲雀の舌のゼリー寄せ」という意味ですが、スタジオ収録時の仮タイトルをそのまま採用したのではないかという説があります。


 元々5作目に発表されたアルバムのタイトルがこれだったんですが、日本版発売に当たって音源が未着だったため、担当者が「意味わからん」とお手上げ状態になり、アルバムジャケットに太陽と月を併せたものが描かれていたため、苦肉の策で邦題を「太陽と戦慄」にした、といういわくつきのアルバムでした。


 その第5作には「太陽と戦慄パートⅠ」と「パートⅡ」が収録されていますが、曲としての共通点は、どちらもオール・インストゥルメンタルで、荒々しい部分があるという点だけです。


 その後、10作目のアルバム「スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペア」に「太陽と戦慄パートⅢ」が収録され、今回紹介する12作目に「パートⅣ」が収録されたわけですが、今回は「コーダ(終結部)」がくっついていて、それにはヴォーカル・パートがある点が今までと違うところです。


 私は美しい曲が好きだということを、第10話で申し上げました。今まで紹介した曲も、概ね美しいといえる曲ばかりでした。


 ですがこの曲、「太陽と戦慄パートⅣ」についてだけは違っています。


 ではなぜこの曲を取り上げたのかというと、この曲はクリムゾン史上最も演奏するのが難しい曲、いや、プログレ史上最も難易度の高い曲ではないかと思ったからです。


 クリムゾンは2014年にライブ・バンドとして再々々結成され、オールタイム・クリムゾンの曲をライブ演奏してきましたが、この曲は今まで演奏されていません。


 それ以前の2003年までに発表されたライブ・アルバムでは演奏されていますが、このとき既にロバート・フリップ総帥は57歳。再々々結成の2014年には68歳になっていますから、この曲の早弾きパートの再現はもう無理だったのでしょう。


 それはもう圧巻としか言いようがない早弾きで、早いだけでなく、ほかの楽器パートも含めて、リズム・キープが非常に難しい曲なのです。


 早弾きギタリストといえば、若手のギタリストのことはよく知りませんが、私の中ではあの時代だと、


・アル・ディ・メオラ

・イングヴェイ・マルムスティーン

・ゲイリー・ムーア

・ジョン・サイクス


といった面々が思い浮かぶのですが、おそらくステージでこのレベルの曲を演奏できたギタリストは、ロバート・フリップだけではなかっただろうかとさえ思います。


 それほど圧倒される曲ですが、曲の後半ではもう1人のギタリスト、エイドリアン・ブリューがヒステリックなギターを弾きまくり、「コーダ」に入るとブリューのヴォーカルも入り、静かな終わりを迎えます。

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