ブスだと言われ婚約破棄された私に王子が弟子入りしてきました

皐月ふう

第1話 このブスが!うるさいこの猿!

「このブス!!




 お前となんて、



 婚約破棄してやるよ!!」






「私こそ、



 あんたみたいなくそ男と



 結婚するなんて




 まっぴらごめんだよ!!!」




あーあ。



ほんと、時間の無駄。



婚約破棄したいなら、



手紙一本送ってくれたら、



それで済むのに。





私、フィリーノは


婚約者のルーフを睨みつけた。





私とルーフは


幼い頃から


犬猿の仲だった。




母親同士が仲がよく


私達を結婚させたがっていた。




よく、母達は話していたものだ。




でも、ほら、


喧嘩するほど仲がいいって



いうじゃない?




そうねそうね!



そして母達は


私達の意見も聞かずに


婚約を決めた。




だが残酷にも


私達は


心の奥から


お互いを嫌い合っている。





「ぶくぶくぶくぶく



 太りやがって!




 いつ本物の豚になったって



 おかしくないな!!」





「あんたこそ、



 脳みそがどんどん退化して



 もうなくなりかけてるじゃない!!




 この猿が!!」




ルーフの容赦ない蹴りが


私を襲う。




甘いわ。



私はその蹴りを避けながら、



ルーフの軸足を引っ掛けて転がす。




ごろりと転がるルーフが


間抜けでしかたない。




「私に一度も



 勝てたことないくせに。」




確かに私は


普通の令嬢と少し違った。



背が高くて、


髪も短く切っている。




そして戦闘の力も


周りの男よりずっと強かった。




ルーフは


立ち上がると


顔の汚れを拭う。





「お前なんか



 誰もお嫁に



 もらってくれないんだからな!!」




余計なお世話!




「あんたこそ 



 そんな非力では



 お嫁さんを守れないでしょうね。」




ルーフは言い返せなくなったのか



くそっ、と


呟く。




「もう、二度と会いたくないね!!」




「私こそ!」







ルーフは


足早にその場を去っていった。




私は、



簡単に服についた汚れを払う。




まあ、あいつごときじゃ


私に泥もつけれないけどね。




ふう、と


一息ついたその時。




「あんたはなんで、



 そんなに強いんだ?」




急に後ろから声をかけられた。




後ろにいたのは、




「あら。



 アトラス王子。」




この国の第三王子


アトラス様だ。





アトラス王子は、


私とルーフと同い年。



同じ貴族学校に


通っていたので、



顔は知っている。




だが、


アトラス王子は


酷い人見知りで、



ほとんど誰とも話そうとしなかった。



アトラス


背が低く、


酷いくせ毛なせいで


顔の半分くらいが




髪で隠れている。



なぜ、強いか、か。




「強かったら、



 馬鹿にされたって



 戦えるじゃないですか。




 強くなりたかったから、




 そのために、



 うーんと、」




私は、


一瞬言葉を濁す。




「なんだ?」





「沢山、喧嘩をしました。」



最近は、


減ったけど。




昔は、


片っ端から、



突っかかってくる奴らと



喧嘩をしていた。




王子アトラスは、


ぐっと拳を握ると



私を見た。




「弟子に、弟子にしてくれ!!」




ふえ?





「僕はずっと



 フィリーノにあこがれてたんだ。




 フィリーノみたいに、



 強くなりたい。



 僕を弟子にしてくれ!!」





ほうううう。



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