第51話 授業開始
入学式の翌日から授業が始まった。
騎士科コースの授業はまずは校内での基礎訓練が中心だ。
体力作りに始まり、剣の扱い方などが行われる。
今まで家でも剣の訓練はしてきていたが、本格的に騎士の訓練をすることで楽しみにしていたことがある。
それは、実際に鎧兜を身につけるということだ。
前世のゲームイラストで見たような鎧兜を身につけるのだ。
これがテンションが上がらずにいられようか。
体力作りのためのランニングを終えた僕達は、そのまま校庭に並んで鎧兜作りのレクチャーを受けた。
鎧兜を作るのは自分の魔力を込めた碁石くらいの大きさの鉱石を使用する。
この鉱石については予め用意してくるように言われていたものだ。
自分の魔力と相性の良い鉱石を選んで持って来るように言われていた。
教師の指導の元、その鉱石に魔力を注いでいくと、魔力が満たされた瞬間、眩く輝いた。
後は鉱石を握りしめて自分のイメージした鎧兜を思い描くと、全身を鎧兜が覆っているというわけだ。
ウルト○マンとか仮面○イダーの変身みたいな感じだな。
流石に変身ポーズはとらないけどね。
皆、思い思いのデザインの鎧兜姿になっている。
金属で全身を覆っているのに全く重さを感じない。
某ミュージカルの甲冑は重さが10キロ以上あるって聞いたっけ。
最もあれは階段落ちをするからプロテクターの役目もあるからね。
それに比べてこんなに軽くていいのかなと思ってしまう。
軽いけれど作りはかっちりしているので、多少動きづらさはある。
これは訓練で慣れていくしかないだろう。
鎧兜を身に着けたまま、剣を抜く。
これだけで一人前の騎士になれたような気分になってくるから不思議だ。
そのまま皆で剣を振る練習を繰り返す。
まだまだ動きがぎこちないのが自分でもわかる。
「鎧兜を身に着けているからと言って、動きが緩慢になっては自分の身すら守れないぞ。もっと柔軟に動けるようにしろ!」
僕達の動きの鈍さに教師の怒号が飛ぶ。
それに便乗するようにアーサーもちゃちゃを入れてきた。
「何だ何だ、そのへっぴり腰は! ちゃんと私を振らないか!」
「うるさい! 悪目立ちするから少しは黙ってろ!」
周りに聞こえないように小声で怒鳴り返す。
僕が剣であるアーサーと喋っているなんて知られたくない。
鎧兜は重くはないのに動きづらさで僕達は息も絶え絶えになっている。
「よし! 休憩!」
一時間くらい体を動かしたところで、休憩を告げられ僕達はほっと息を吐いた。
しかし鎧を付けたままでは椅子に座る事もままならない。
鎧のデザインを少し変えて椅子に座りやすいように変化させて腰掛ける。
他の学生もそれに気付いてそれぞれに自分の鎧を変化させて休憩を取っていた。
そこで僕はふと以前公爵領で出会った騎士団を思い出した。
彼等は鎧兜のままで馬に乗っていたはずだ。
これで馬にも乗れるようにならないといけないのか。
僕はそのことを考えてげんなりした。
午後からはやはり乗馬の訓練だった。
午前中と同じように鎧兜を身に着けての乗馬となった。
一応馬には乗れるけれど、まだ並足くらいしか出来ない。
こんな事ならもう少し真面目に乗馬の訓練をしておくんだったな。
今更どうこう言っても始まらない。
僕は他の学生達に置いて行かれないように必死に食らいついていった。
…家に帰ったら乗馬の訓練だな。
ようやく授業が終わり、帰り支度をしているとクリスが近寄って来た。
「やぁ、ジェレミー。随分と疲れているみたいだね。騎士の訓練はそんなにハードだったのかな?」
これはまた今日も王宮につきあわされるパターンなんだろうか。
そんな考えがどうやら顔に出ていたらしく、クリスがプッと吹き出した。
「そんな顔をしなくても今日は一緒には帰らないよ。授業量も増えて来たからね。それじゃまた明日」
クリスは僕にそう告げると護衛騎士を従えて教室を出ていった。
僕はどうも父上と違って顔に出やすいみたいだな。
平民ならともかく貴族としてはあまり褒められたものではないだろう。
もうちょっとポーカーフェイスが出来るようにならないとね。
クリスの後に続くように僕も教室を出て馬車の搭乗口へと向かった。
既に公爵家の馬車が待機している。
僕は馬車に乗り込むと、続いて乗り込んできた家令補佐に告げた。
「屋敷に戻ったら乗馬の準備をしておいてくれる?」
僕の突然の申し出にも彼は眉一つ動かさずに即答した。
「かしこまりました。屋敷に着きましたらすぐに手配いたします」
流石は公爵家の家令補佐だな。
僕よりよほどポーカーフェイスが出来てるよ。
程なくして馬車が公爵家に到着し、使用人が出迎える中、屋敷へと入る。
家令補佐の指示にあちこちへと使用人が動き出す中、一旦自室へと戻る。
乗馬の出来る衣装に着換えながら待っていると、思っていたより早く家令補佐が呼びに来た。
「ジェレミー様。準備が整いました」
「随分と早かったね」
あまりの早さに僕が驚きの声をあげると家令補佐は少し微笑んで答えた。
「今朝、公爵様が予め準備をしておくようにと告げられたそうです。『今日は帰ったら乗馬の訓練をしたがるだろう』と」
どうやら父上には僕が乗馬の訓練をサボりがちだったのがバレバレだったようだ。
やはり父上には敵わないな。
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