そして、金貸しは今日も利息を取り立てる
救出され、諸々取り調べが終わった二人を、超ご機嫌のドン・リリが保安官事務所の裏口で出迎えてくれた。
「武器庫の映像が手に入ったからには、これで差押できる」
「良かったっすね~」
ニコニコとリカルドが対応する。
「このクソもじゃもじゃ頭のところ辞めて、いつでもうちに来い! 歓迎する!」
ドン・リリはリカルドの背中をバシバシ叩いた。
ドン・リリの用意した高級車で家まで送ってくれるとのことで甘えることにした。
車内のテレビには、BKMビルのニュース映像が流れている。確かに武器庫の天井が無くなっており丸見えだった。
「これのために、念入りに角度を確認してたんだな」
「ドン・リリさんからは、一応図面見せられてたんですけど、地下だったんで、屋上までぶち抜けるかは、わりと賭けだったっすね」
続いて、ニュースは保安官事務所前に切り替わり、ビショップが報道陣に囲まれて事件についてコメントをしている映像になった。
『え~まだ詳細はわかっていませんが、老朽化したガス管が何らかの原因で破裂し爆発した可能性が高いです』
リカルドは、ほっぺたをポリポリと掻くと、苦笑いで「嘘、通じるといいな」と呟いた。
◇◇◇
一ヶ月後、ゴンさんとタンユとリカルドは、王都へ出発するヴコールの妻と息子を駅で見送っていた。
ゴンさんから布で包まれたブリッツシュラークの剣を受け取ると、ヴコールの妻は大事そうに抱きしめて、ゴンさんに何度も頭を下げる。
発車のベルが鳴り、二人は列車の中からもずっとお辞儀をして、この街を去っていった。
「なんかめっちゃ良いことした感じ!」
「おー、リカルド。じゃあ、今日も仕事すんぞ」
「ウッス。追いかけっこ頑張ります」
「ゴンさん、じゃーねー」と、明るく手を振るリカルドと振り返りもせずにスタスタと前を歩いていってしまっているタンユの背中を見て、ゴンさんは微笑んだ。
青く澄んだお天道様の下で、彼らは今日も冒険者達から利息を取り立てる。
冒険者の金貸し<プロトタイプ> 笹 慎 @sasa_makoto_2022
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