隣の席の無口な彼が言った。


「ん」


目の前に突き出された手には、私が落としたらしい消しゴム。


「ありがとう」

「ん」


短く頷く無愛想な横顔。少し赤くなった耳たぶ。



友達になった彼が言った。


「ん?」


朝から具合悪いの気付いたのかな。


「大丈夫だよ」

「ん」


差し出された手に遠慮なく掴まる。心配する眼差しが妙にくすぐったい。



恋人になった彼が言った。


「ん〜?」


焦らす指先がもどかしい。


「………ばか」

「ん……」


でもその「ん」も嫌いじゃない。

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