ざまあねえな

ハァハァ……。

ハァハァ…。

ここまで来れば大丈夫か。


オレは暗がりに身を潜め辺りを窺った。

本当にしつこい奴らだ。


オレがどれだけ抵抗しても

どれだけ逃げ回っても

地獄の番犬みたいに追ってきやがる。


捕まったらまたあの屈辱を味わわせるんだ。

旨い餌をちらつかせてオレを懐柔し

良い匂いのする女を宛がって

オレを骨抜きにしようとする。


これ以上、尊厳を奪われてたまるか。

オレが額の汗を拭った時だった。


突然、部屋のドアが開いて、男女二人組が入ってきた。

見つかった!


「あらあら、ここにいたの?」

「かくれんぼは終わりだよ」


くそっ!くそっ!見つかった。






「だー、あー」

「おむつ濡れちゃったねえ」

「きれいきれいしたら御飯にしましょうね~」


良い匂いの女は優しくオレを抱き上げた。

くそっ……ああ、ダメだ、逃げるのに体力使い切って抵抗できない。


「まー」

「んん~?おねむなの?」

「たっくんは可愛いねえ」


女の胸に抱かれて脱力したオレを、男が優しく撫でる。


いつもこれだ………。

結局オレは二人の手の平の上。


ふっ……ざまあねえな。



◇◇◇◇◇



「ざまあねえな」って言いたかっただけ。


ハードボイルドベイビー。

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