第二三話「お前をもう一度、英雄十傑に推薦する。ボクが保証人になる」

 あれからの後日談を少々。



 レヴィアタン第二討伐部隊がねじれの塔に突入したとき、戦いはすでに終わっていた。

 巨体に押しつぶされている俺と、魔王の魂の器を思いっきり吸い上げたクロエと、そして血だらけのモモ。戦いの犠牲は少なくなかったが、ともあれ、俺もクロエもモモも五体満足でレヴィアタンを討伐することができたのである。



(討伐とは言うが、正確にはレヴィアタンを調伏したというのが正しい。モモの式神に新たにやつが加わったんだからな)



 巫女の血を引くモモは、言霊を操って式神を使役する呪術師だ。曰く、彼女より遥かに弱い魔物を呪術で縛り上げて服従させることができるのだという。

 魂の器に主従関係を直接刻み込むその特殊な技能は、【メスガキ華撃団】のみしか扱えない極秘の魔術らしい。



『っっっ! ざぁ〜〜〜〜〜〜こ❤ ざぁこ❤ ざぁこ❤ きゃはっ❤ 今日もモモの大勝利だねぇ❤ ねぇどんな気持ちなのぉ? 忍耐なき魔王とか言われてたのにぃ、モモに屈服させられて忍耐しなきゃいけないなんて、ほーんと、よわよわだよねぇ〜?

 え、震えてる? 悔しいんだ❤ きゃはは、モモのペットの分際で悔しがるとか、きっも❤ ざぁこなのが駄目なんだよ、ざぁこだから負けちゃったんだよ❤

 モモのこと、分からせるんじゃなかったの〜? 張り切ってたけど、負けは負けで〜〜す❤ よわよわなレヴィくんは今日もよわよわなのでした〜〜❤ はいモモの勝ち〜〜❤ 何で負けたのか明日までに考えといてね❤』



 調伏に成功したモモは、ざぁこざぁこ飛び跳ねて喜んでいた。当然だろう、大罪の魔王を調伏するなんて世界でも例がない。それどころか、過去に遡っても類例が見当たらない偉業である。

 この快挙と言える大成功に、モモが喜ぶのも無理はなかった。











 ミロク

 Lv:4.15→19.17→38.11

 Sp:0.61→30.53→68.47

≪-≫称号

 ├×(藍色の英雄)

 ├森の王の狩人

 └大罪の討伐者【嫉妬】 new

≪-≫肉体

 ├免疫力+++

 ├治癒力++++

 ├筋力++++++++

 ├視力++++

 ├聴力++++

 ├嗅覚++

 ├×(味覚) 

 ├触覚

 ├熱源感知++

 ├造血 

 ├骨強度+++

 ├×(肺活量)

 ├皮膚強化+++ 

 └精力増強

≪-≫武術

 ├短剣術++

 ├棍棒術++++++

 ├盾術++

 ├格闘術+++++ 

 ├投擲++++++ 

 ├威圧+++ 

 ├×(隠密+++) new 

 └×(呼吸法)

≪-≫生産

 ├道具作成+

 ├罠作成++

 ├鑑定++

 ├演奏

 ├清掃

 ├測量++

 ├料理

 ├研磨

 └冶金

≪-≫特殊

 ├暗記

 ├暗算

 ├並列思考+++ 

 ├魔術言語+++++ 

 ├詠唱++

 ├治癒魔術+++++ 

 └付与魔術+++++++++





 クロエ

 Lv:25.11(2)→26.29(-)→73.16(618)

 Sp:0.63→2.81→64.61

 状態変化:腐敗 免疫欠乏 皮膚疾患 呼吸障害 視力× 味覚× 嗅覚×

≪-≫称号

 └大罪の討伐者【嫉妬】 new

≪-≫肉体

 ├免疫力+++

 ├治癒力++

 ├筋力+++++

 ├視力+++++

 ├嗅覚+++

 ├味覚+++

 ├肺活量+++ 

 ├不死性+++

 └異常耐性(毒+ / 呪術+++)

≪-≫武術

 ├棍棒術+++++ 

 ├投擲+ 

 ├隠密+++ new

 └呼吸法++

≪-≫生産

 ├罠作成+

 ├裁縫+

 └測量

≪-≫特殊

 └吸魂+++++++











 特筆すべき事項として、レヴィアタンの討伐によって俺とクロエは大幅にレベルアップした。

 元々レベルが低かった俺は、第一階層を焼いたことによるレベルアップを考慮してなお、レベルアップの余地が大きかった。魂の経験の分配の際に、レベルの低い俺の取り分が多くなったのだろう。

 一方でクロエは、吸魂魔術によって大きくレベルが上昇していた。才能の欠片の獲得量も目を見張るものがある。

 これでより一層たくさんのスキル開拓ができるだろう。



 ともあれ、レヴィアタンの退治には成功したのである。ここまでは特に問題はなかった。

 大事なのはその後だった。一体誰の功績とするかという問題が浮上したのだ。



 もし俺とクロエが名誉を求める冒険者であれば、俺たち二人がレヴィアタンを倒したことにする。だがそんな功名心はちゃんちゃら存在しない。というか今後スローライフを送ろうと考えてる俺たちにとっては面倒まである。

 なので功績は全部、司馬先生とモモに押し付けようとしたのだが、これが良くなかった。



 あいつが反対したのだ。



「――ミロクはいつもそうだ、人に手柄を譲ってばかりだ。でも今回は許さないよ」



 遅れて駆けつけた幼馴染が、俺の退路を断っていた。そいつはいつも俺の代わりに怒って、俺の代わりに泣く変わり者である。

 才能の欠片、瑠璃色の名号、パーティリーダーの立場、様々なものを譲り渡してきたが、その度に彼女は激怒していた。そして今日も彼女は怒っている。

 ミロクの努力や功績がなかったことになるのは嫌だ、と我儘なことを主張している。



「お前をもう一度、英雄十傑に推薦する。ボクが保証人になる」



 泣き虫で、気弱で、俺の天敵にして最大の理解者。

 ついでに言えば肝心なところを理解してくれない保護者気取りなところもある。

 迷宮攻略パーティー【瑠璃色の天使】のリーダー、アズール。



 彼女は話に俺が絡むと、よく暴走する悪癖があった。





















 掲示板 【討伐メンバー】レヴィアタン討伐隊 7【募集中】



 358:名無しの冒険者

 レヴィアタン討伐された

 討伐者はモモと司馬先生



 359:名無しの冒険者

 うおお、歴史的快挙じゃね



 361:名無しの冒険者

 まじか!

 大罪とかいうガチの災厄認定が討伐されるなんてすげぇ



 362:名無しの冒険者

 やっぱりモモちゃん大勝利!



 364:名無しの冒険者

 うおおおおおおお



 365:名無しの冒険者

 やべえ、七つの大罪とか討伐されると思ってなかった

 こんなん討伐するやつおんねんな



 367:名無しの冒険者

 またビル討伐?



 368:名無しの冒険者

 ビルww

 虚偽申告おじさんやんけ



 369:名無しの冒険者

 七つの大罪 これで六つか



 370:名無しの冒険者

 >369

 七つの大罪、実は九つ定期

 でもこれで八つか



 371:名無しの冒険者

 歴史の動いた瞬間記念カキコ



 372:名無しの冒険者

 現地情報

 討伐者 司馬先生 モモ ミロク(?) E級の子

 あとなんかアズールとモモが喧嘩してる



 373:名無しの冒険者

 どういうこと?



 375:名無しの冒険者

 さっきからミロク生存説好きやね



 376:名無しの冒険者

 やっべ、リーダーボード更新されてるわ

 1位が入れ替わった



 377:名無しの冒険者

 1位なんかおるやん



 378:名無しの冒険者

 >372

 E級の子って顔ぶつぶつだらけの臭い女じゃねーの

 それらしき目撃証言けっこう上がってきてる



 379:名無しの冒険者

 どうやら見るに、クロエって名前のE級冒険者らしい

 1位なのにE級

 しかもそいつがレヴィアタンを倒したとか言われてる例のE級の子



 381:名無しの冒険者

 そんなにすげえ速度で魂の位階って上がるもんなんか?

 元々10位圏内近くにおったとかちゃうんか?



 382:名無しの冒険者

 え、ついて行けん、どういうこと?

 大罪の王レヴィアタンは討伐されて、なんかよくわからんE級冒険者がリーダーボードの一位を獲得したってこと?



 383:名無しの冒険者

 あかん、モモとアズールがブチ切れとる

 これ大喧嘩あるで




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