43、宮崎雅は弁護士
──キーンコーンカーンコーン。
学校すべての予定が終わったことを告げるチャイムが学校中に響き渡る。
そのままホームルームをしていた先生から『解散』を告げられて席を立つクラスメートが大勢現れる。
「はぁぁぁ……。1日終わったぁぁぁ」
数学に英語、地理と嫌いな授業詰め込み欲張りセットの今日の時間割りは特に酷いものだった……。
しかも、これから図書委員会もある。
面倒だ。
身体をグーンと伸ばして、ストレッチのような体勢になる。
「別にメガネ、なにもしてないでしょ」
「うぐっ……!?」
隣の水瀬さんからの鋭い指摘は胸にグサッと突き刺さる。
なに……、この心臓を抉るような痛さの言葉の暴力は……!?
水瀬さんに慣れてないと吐血するほどにショッキングな言葉である。
「あんたが1日しゃべることなんかクラス委員として『起立』『礼』『着席』しか言わないじゃん」
「1日中それしか言ってないわけじゃないからな!ちょっと待ってくださいよ!?弁護士を呼べっ!」
「仕方ないわね。メガネのために弁護士を呼びましょう……。みやびぃぃぃぃ!」
「スチャッ!」
「弁護士どころか俺の敵来たんだけど……」
水瀬さんの親友のミヤミヤがドヤ顔で現れた。
呼ばれてから登場までが早すぎた……。
「なになに?どうしたの!?どうしたの愛!?」
「今から雅はそこのメガネの弁護士ね!」
「なるなる!」
「本当か……?」
弁護士のべの文字すら知らなそうなミヤミヤであるが、俺の弁護士になってくれたようだ。
「私、べんごしー」と、間抜けなことを言い放つ彼女に弁護士らしさは欠片も見当たらなかった。
「そこのメガネが1日しゃべることなんかクラス委員として『起立』『礼』『着席』しか無いんだよねー」
「だからそんなことないって!ね?弁護士!?どう思いますか!?」
「え?あのかすれかすれな掛け声してるのあんただったんだ……。認識すらしなかったよ」
「おーい、弁護士!せめて俺ということくらいは気付いてよ!?」
まだ水瀬さんの方がメガネと認識しているだけマシだった。
ミヤミヤはそもそも弁護士をするしない以前の問題である。
俺を追い詰めるやり方は誰よりも凄いミヤミヤのやり口に俺も踊らされる。
「ねぇ、愛。現代はさー、ユーチューブとかの時代じゃーん」
「そうだね。大企業も揃ってユーチューブの時代だね」
「もうクラス委員長もユーチューブにしちゃえば良いのにね。そこのゴーストポイズンの声録音してユーチューブで流すの」
なんてまわりくどい……。
ミヤミヤの案はあまりにも面倒の極みである。
「別にユーチューブに上げる必要なくない?メガネの声録音しておいて、授業開始前にそれを校内放送で流した方が楽じゃない?」
「そう!それ!」
「俺の挨拶が校内放送で全部の教室に流れるの耐えられないよ!」
まぁ、1回1回俺が挨拶するよりもそれの方が効率は良いのである。
俺が不在でも勝手に録音した声が毎日毎日授業はじまる挨拶になるのだから。
「それをしないのが日本という国なんだけどね。温かみがないとか謎の理屈はじまるよ」
「そもそも生のゴーストポイズンの声に温かみなんて皆無だけど……」
「う……」
「あと、なんで急に早口になるの?」
「やめてくれぇ!」
ギャルが2人して俺を言葉責めで虐めてくるのであった。
これから放課後に図書委員会が待っている俺に酷い仕打ちだ……。
「うぅ……。ギャルなんて……、ギャルなんて!」
「私、ギャルじゃないし。弁護士だし」
「いつまで言ってんだよ……。1回でも弁護してくれないじゃん」
弁護士の仕事してくれねぇじゃん!
むしろ弁護士が敵になっていた。
「私はプロとして!お金を払ってくれる雇い主にしか弁護しないの!」
「金かよ!もうやだこの2人!」
俺は2人に見送られながら、図書委員の集まりの会議に向かうことになる。
全然休まることないギャルからのからかいに合い、俺は図書室目掛けて廊下を歩く。
クラス委員と図書委員の掛け持ちに後悔しながら、俺は階段を登っていた……。
存在するだけで女子に舌打ちされる男が、前髪を上げたらモテモテになった件 桜祭 @sakuramaturi
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