Chapter 1-5
親友の恋が成就するのを願っているのは、三峰も同じだ。
だから四人でいる時などは、さり気なく歩と一之瀬君を隣り合わせにしたりするのだけれど。
ちなみにこの四人で一緒にいる時は、歩と一之瀬君を囲む人の輪が何故だか引いていく。何故だろう。
ともかく。
お互いの利害が一致している僕らは、チャンスがあれば二人の距離を近付けるように示し合わせてきた。成果としてはまあ、言わずもがな、芳しくはないのだけれど、気長に見守る事にしている。
教えてあげればいいのでは、と思う人もいるかもしれない。僕もそう思った。でもこういうのは、背中を押す程度に留めておいたほうがいいらしい。
三峰曰く、
「君は他人から、お前の事が好きな人がいると聞かされて、付き合いたいと思うのか? 私は御免だな」
それは流石に彼女だけではないかと思うのだけれど、でも自分の気持ちをちゃんと自分で伝えるのが一番なのは全くだと思ったので、僕もさり気なく手伝う方向性で行く事にした。
そんなこんなで、この帰り道でも何度か二人を隣り合わせにする事はできたのだけれど、どうしてもぎこちなくなって、自然と離れてしまう。ええい、二人で球技大会の感想でも話していればいいのに。
よし、と僕は三人に声を掛ける。
「それじゃあ互いのチームの優勝祝いに、
天露屋は、テレビや雑誌で何度か紹介された事もある、この辺の飲食店ではずば抜けて有名な甘味処である。
僕の提案に、真っ先に賛成してくれたのは一之瀬君だ。
「あっ、それいいね! 真綾も行くでしょ?」
「ああ。そういう事ならやぶさかではないな」
「じゃあ……、赤西君も、どう、かな?」
「え? あ、う、うん! もちろん行くよ!」
「本当? やったぁ!」
「一之瀬さんと一緒に天露屋……! 一之瀬さんと一緒に天露屋……!!」
よし、と一之瀬君に見えないように、歩は拳を握る。その後チラッとこちらを見て親指を立ててくるので、僕もクールにサムズアップを決めて返した。どうだい、この気配り。
テンションが上がって会話が弾み始めた歩と一之瀬君を余所に、自然と隣り合う形になった三峰が親指を立てる。
「君にしてはなかなか気の利いた提案だったな」
「う、うるさい。余計なお世話だよ!」
ふふっ、と微笑まれて、僕は思わず視線を逸らした。
どうも、彼女に褒められると素直に喜べないな。
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