Chapter 1-4

 そう、二人はいわゆる両想いというやつだった。


 だから二人の気持ちは、彼や彼女を取り巻く一方通行の好意とは訳が違う。

 二人が添い遂げてくれる事を僕は心の底から望んでいるのだが、話はそう簡単ではない。


 当人たちが相手からの好意に全く気付いていないのだ。


 どころか、全く以って性質の悪い勘違いをしていた。


「でもいいよな、シンは。いつも三峰さんと一之瀬さんが近くにいて。ハーレムじゃん」

「いいなぁ、真綾は。いつも冴木君と赤西君が近くにいて。逆ハーレム?」

「慎之介、突然だが私は今、頭痛が痛くてな……」

「日本語がおかしくなるレベルとは同情するよ。かくいう僕も同じでね……」


 ご覧の通りだ。


 この二人、互いの想い人が、僕と三峰の事をそれぞれ好きなのだと思っている。しかもさり気なく、僕と三峰が互いの事を好きだという大前提が確立している所が、尚更性質が悪い。


 ちなみに僕と三峰が許嫁であるという事は、歩と一之瀬君も知らない。言ったら勘違いが全力全開でアクセラレーションするので絶対に言えないが。


 逆を言えば、それを知らないでどうしてそんな勘違いをしてしまっているのか。


「だってお前ら、いっつも一緒にいるじゃん」

「だって真綾と冴木君、いつも一緒にいるんだもん」

「ほうりいしっと! おうまいごっど!」

「落ち着け三峰! 僕だっていっそ壊れてしまいたい!」


 それからしばらくの間、お互いに距離を取ろうという事になったが、


「シン、辛いなら言ってくれよ? 相談なら乗るぜ?」

「真綾、言いたい事があったらいつでも言ってね? 話だけでも聞くから」


 と、いつになく深刻な表情で心配されたので、すぐにやめた。


 誰のせいだと思ってるんだ、誰の。

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