第7話 莉音覚醒

 爆発の中でゴブリンが朽ちていくのが分かる。思わず、自分でも引いちゃうくらいの気持ち悪い笑いが漏れちゃった。トウジくん、引いてないかな?

 それよりも、今はレベルアップの事よね。アナウンスが鳴ったのよ。頭の中に。


【あなたはレベル1になりました。世界で初めて同時に2体以上のモンスターを倒した特典として、特殊称号を付与します。また、同時撃破のボーナスとして、初回特典のSP付与は2体分となります】


 ふむ、どれどれ?

 称号は【ジェノサイダー】か。【世界で最も早く複数のモンスターを同時に撃破した者に付与される称号。効果は全てのスキル取得時の消費SP、及びスキルレベルアップ時の消費SPが1/2になる】


 うわ、なにこれ。めっちゃチートな称号じゃない? 出だしから複数のスキルを所持できるし、レベルアップも他の人より早いって事じゃない。


 次いで、スキル一覧を見る。

 なになに? 最低でもSPを10消費しないと取れないのかぁ。でもあたしはボーナス特典で20ポイント貰っちゃったし、しかも消費が半分で済むから、最大で四つもスキルが取れちゃうのね。

 まず、接近戦は怖いから、間接攻撃スキルは必須よね。じゃあ攻撃以外にも役立ちそうな火魔法と水魔法、っと。でもどっちもMPを消費しながらだから、継戦能力があまり高くないのが欠点かぁ。

 やっぱりMP消費なしでも戦える、近接戦闘スキルは必要だよね。じゃあ、なるべく相手の間合いの外からチクチク出来る、槍術スキルを。あとは身体強化かな?

 よし、これでSP使い切ったわ!


 でもこの称号の事をトウジくんに話したら、羨ましがられるだろうなあ。えへへへ。でも、これだけのスキルがあれば、きっと彼の役に立てるね。

 だって、あたしの復讐にはトウジくんが必要だもの。


***


 どうやらリオンさんも無事に覚醒したようだ。しかも、今までに見た事がないような笑顔だ。いや、いつも会社では機嫌悪そうにしてたから、そもそも笑顔を見る機会も無かったんだけどね。


「ゴキゲンですね」

「うん! なんか称号も貰っちゃったし。これであたしもトウジくんの役に立てると思うよ!」


 いつになくテンションが高い。それにしても称号かあ。一体どんな効果があるんだろう?

 ゲーマーであるリオンさんがこれだけ喜んでいるっていう事は、かなり凄い効果を持っている称号だろう。もしかして、僕の方が足手纏いになっちゃうようなヤツだったりして。


「えっとね、ジェノサイダーっていう称号なんだけど、その効果がなんと!」

「なんと……?」


 リオンさんはここで腰に手を当て、人差し指をフリフリしながらドヤ顔で言う。


「なんと! スキル取得時のSP消費が1/2! そしてスキルレベルアップに必要なSPも1/2!」

「おお! おお……?」


 確かにそれは凄い効果だ。他の人の二倍の速度で成長出来るって事だもんね。

 ジェノサイダー、つまり殺戮者っていう事は、恐らく複数のモンスターを同時に倒す事が取得条件なのかもしれない。もしかしたら、僕のファステストキラーと同じく、世界で一番早く条件を満たした人にしか与えられない激レアな称号の可能性もある。そうじゃないと、いずれレベルが上がって範囲魔法を使える人が出て来ると、結構簡単に取れちゃうもんね。


 だけど分からないのはスキルを四つも取得出来たって事だ。初回特典で貰えるSPは10ポイント。2匹倒したとしてもそれに2ポイント加算されて12ポイントだ。いくら1/2のポイントで取得出来るとは言っても、四つは無理なはず。


 ……ん? まさか初回特典が2匹分で20ポイントも貰えた!?

 その事を訊ねると、リオンさんがニッコニコでそうだと答える。なるほど、それなら5ポイントずつ消費して四つのスキルが取れるよね。

 それに魔法系がふたつとMP消費無しの近接戦闘系、さらには身体強化と当面のモンスター討伐には十分な内容だ。


「ところでトウジくん?」

「はい?」

「トウジくんもスキルが色々とおかしいよね? 多分剣術に身体強化、あとは索敵に時空間収納も持ってるっぽいし」

「あう……」

「それになんか日本刀とか使ってたけど、そんなの普通の人持ってないよね? スキルでしょ?」


 はい、バレバレですね。

 確かに、リオンさんが見ている前ではゴブリンを2匹しか倒していないしなあ。どう考えてもSPとスキルの数が合わない。


「怒りません?」

「もちろん。そのトウジくんのスキルのおかげで助かった訳だし」

「実はですね……」


 ここで僕はついにファステストキラーの称号の効果を白状した。さらに実質ユニークスキルである万夫不当の事も。


「わーわー、ここにチート野郎がいるですよ」

「ちょっとそんな止めて下さいって」

「だってだって、これじゃあたしの称号ってトウジくんの劣化版じゃん!」

「それは……否定できないです、はい」


 実際その通りなんだよね。でも、リオンさんだって十分チートだと思うんだ。レベル1でスキルを四つだなんて、僕以外にいないよ?


***


小早川冬至

称号:ファステストキラー 

生体レベル:1

HP:10

MP:10

SP: 3 

経験値:6

所持スキル:万夫不当レベル1(武器召喚、治癒魔法、時空間収納、剣術、身体強化、取得経験値増加、取得SP増加、解析、解析阻害、セーブエナジー)索敵レベル1、隠形レベル1

装備品:数打ちの太刀


立花莉音

称号:ジェノサイダー

生体レベル:1

HP:10

MP:10

SP: 0

経験値:2

所持スキル:火魔法レベル1、水魔法レベル1、槍術レベル1、身体強化レベル1


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る