高層ビルから

第1話

「恥の多い人生だった」と言うフレーズから始まる小説はあれは太宰治だったろうか。

　ああ、そうだ。

『人間失格』だ。

　恋をして、薬物に依存して、それで心中しちゃうんだっけか。

　ははは、全然人間らしいじゃないか。

　僕なんて恋人を作る以前に恋すらしたことがないし、薬物どころか酒もタバコも怖くてできない。いつも職場と家の往復で、家で何をやっているかと言われたら別に何をするわけでもなく。

　人間の定義ってなんだろうな。

　どうやったら人間を失格することが出来るんだろうな。

　高いところから飛び降りると走馬灯が流れて後悔するって言うけど、僕の走馬灯なんて思ってた通り本当に大したことがなかった。

　グシャリ。