第2話 悪霊


 検索数が急に伸びたのか、しつこくクリックすれば、終日、そのニュースで世間話は持ち切る。


 薄気味の悪いとある人は感じても僕には切実なニュースだ。


 なぜ、わざわざ、高額な運賃を払い、相対死の凄絶な事件現場を頼りないスマートフォンで実況中継する余裕さえ、自死寸前にあったのか。


 そもそも、一度たりとも、あの名高い霊界、青木ヶ原樹海に迷い込めば、スマートフォンの電源も入らないのに。


 


 何もかも消えた。


 可笑しな雛鳥の奇声も連れて。


 夜の静寂が僕に死へ、死相へと長い呪文のように輪唱している。


 僕もタナトスの音楽を諳んじる。


 悪霊を悼んで秋虫が鳴いている。


 母親を呼んでいるのだろうか。僕という悪魔を生んだ、哀れな女性の譫言。


 彼女について、いつかは顧みられるだろうか。


 いいや、思い出したくない。


 


 思い出したのか。


 徐々に記憶の古書は僕をトランプタワーの波が床へあっという間に雪崩れ落ちるように襲ってくるかもしれない。


 光明の代替に血漿を抱いてみたい。


 脈々と受け継がれた先人たちの血流を辿ってみたかった。


 もう、ギブアップかもしれない。


 僕は残光を抱く代わりに心臓に斜陽を抱いてしまった。残映に血潮が混じっている。



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