第10話:三人の行く末は

「琴音! 楓弥! 一緒に帰ろ!」


 凛花の合図に俺は鞄を手に取る。

 琴音もこちらに歩いてきていた。


「今日カラオケ行かない? この三人で行ったことなかったよね?」

「だな、行くか」

「私もいいよ」


 頷き合って教室を出る。

 以前は突然態度が軟化した凛花に戸惑う者も多かったが、今ではもう慣れたようで特に視線は感じない。

 俺たちは名実ともに仲良し幼馴染三人組に戻ったというわけだ。


 気分よさげに数歩先を歩く凛花の背中をぼうっと眺めていると、横から脇腹を小突かれた。


「痛ぇよ」

「どうして凛花の告白、受けなかったのよ」


 琴音は不満そうに唇を尖らせる。

 俺はそれに「何回も言っただろ」と続けた。


「確かに凛花のこと好きだけどさ、俺、今の凛花のこと何も知らないんだよな」

「そうかもしれないけど……」

「昔のことを清算して、はっきりとわかった。だから今はまだ付き合えない」

「……でもさ、凛花今どんどん人気出てきてるの知ってる? 親しみやすくなったんだってさ。いつ誰に告白されてもおかしくないかも。……いいの?」

「凛花がそれを選ぶなら、いいよ」


 そう答えると、琴音はジト目を向けてきた。


「……ほーぅ。凛花が俺以外を選ぶわけない、と。ずいぶん自信がおありのようで」

「そうは言ってないだろ」

「あーあ、私、凛花が相手ならいいと思ったのに、二人ともフっちゃうんだもんな」


 ちぇ、と吐き捨てるように琴音は言う。

 その様子を見て、そういえばまだ言ってなかったな、と思い出した。


「それとさ、断った理由はもう一つあって」

「ん?」

「俺、あの告白の後から琴音のことも気になってんだよね。――凛花と同じくらい」

「な……っ」


 絶句して琴音は立ち止った。

 するとタイミングよく凛花がこちらを向いた。


「何やってんのー? 早く行くよー!」

「はいはい」

「ちょ、ちょっと待って! ……今のどういうことなの? ねえって」


 凛花に返事しつつ、小声で問いかける琴音に「そのまんまだよ」と答える。

 琴音は憮然とした表情になるが、よく見れば頬がほんのりと赤く染まっていた。


「さあさ、行こっ。せっかくフリータイムとるんだから、早く行って歌い倒さなきゃ」


 琴音が追い付いた俺たち二人の間に入って、肩を組んだ。

 どことなく馬鹿っぽいが、これはこれで悪くない。


 俺たち幼馴染三人の日常は、今日も恙なく平和である。

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幼馴染って面倒くさい 金石みずき @mizuki_kanaiwa

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