狂喜するリポーター

Jack Torrance

無軌道でクズな輩ども

「こんばんは、本日も始まりました『真相報道 晩記者!』司会進行の水上 敏夫です。朝晩の冷え込みも強まりすっかり秋も深まってきましたね。皆さん、暖かくして本日もお付き合いください。今日はハロウィンですね。渋谷スクランブル交差点の前にはリポーターの山上さんが行ってくれています。えー、渋谷スクランブル交差点にいる山上さーん、そちらの様子はどうでしょうか?今日は路上飲酒は厳禁なんですよねー」


日本は一体どうなる!テレビの人気番組『真相報道 晩記者!』MCの水上 敏夫がリポーターの山上 邦夫にマイクを振る。


山上リポーターは天真爛漫な子供のように目を輝かせて息を弾ませて言う。


「スタジオの徹子さーん、マッチでーす!済みません、水上さん、ちょっとハロウィンモードで浮かれてみましたー、なんちゃって。こちら山上でーす。見てください、この人集り、人の山、山、山。小汚いコスプレに身を包んで何が楽しいのか理解に苦しみますが意気揚々と若者達が闊歩しています。ウィズコロナの基調も高まりコロナ渦の重たい空気は大分薄れてきましたが新種のオミクロン株が増殖するかも知れないのにマスクをしないではしゃいでますねー。バカ丸出しといったところでしょうか。おっと、あちらの20代と思わしきグループは調子に乗ってテキーラのボトルをラッパで回していますね。急性アルコール中毒で早く死んでくれたらいいのにー」


MCの水上が山上リポーターを窘める。


「山上さーん、生放送なので発言には注意してくださいねー」


山上リポーターは水上の注意にも意を介さず淡々とリポートする。


「あっ、見てください、あの子泣き爺にコスプレした女が煙草をポイ捨てしました。それに路上飲酒は禁止なのにスーパードライの500缶をグビグビやっています。クズですね。あー、飲み終わった空き缶もクシャっと握り潰してポイしました。完全にクズですね。あー、水上さん、あちらの方で乱闘事件が起きているようです。ちょっと行ってみます」


水上が心配そうに山上リポーターを見守る。


山上リポーターがクルーを引き連れて小走りで乱闘現場に駆け付ける。


「水上さん、見てください。『キャプテン翼』の翼くんにコスプレした男と『パイレーツ オブ カリビアン』のジャック スパロウにコスプレした男がボコボコに殴り合っています。あっ、あの翼くんにコスプレしている男は千葉で【戻らない記憶】という暴走族で族長をしていた山際という男です。そして、あのジャッック スパロウのコスプレをしている男は神奈川で【マザームーン】という半グレのグループを仕切っていた山本という男です。私は以前、彼らに密着リポートを敢行した事があるので彼らを知っているんです。二人とも俺がキャプテンなんだぜ!という誇示が翼くんとジャック スパロウというコスプレに駆り立てたんでしょうね。私が知っている限りではお互いクズなので殺し合ってくれれば本望です。いいぞー、もっとボコってやれー」


水上が山上リポーターを心配する。


「山上さーん、とばっちりを受けない様に気を付けてくださいねー。それでは現場の山上さんに渋谷ハロウィンを総括していただきましょう。山上さーん、お願いしまーす」


「いやー、水上さん、私はハロウィンや成人式の際の無軌道でクズな若者を見る度に自分が上等な人間に思えて優越感に浸れるのです。バカな政治家や著名人の不祥事のニュースを耳にする度にも自分が上等な人間である事が実感出来て狂喜乱舞してしまうのです。罪に軽いも重いも無いと私は思うのです。例えば軽犯罪に属するどんな犯罪も最低懲役100年に設定し厳罰化すれば犯罪抑止になるのです。重犯罪は死刑。そして罪を犯した輩どもに重労働を課して一日に与える食もおもゆと沢庵二切れにして淘汰していけばよいのです。人の権利を侵した輩に何が基本的人権ですか。非人道的な行為には非人道的に立ち向かえばよいのです。以上、現場の山上でした」


水上が目を閉じて、ふむーと頷く。


「山上さん、貴重なご意見ありがとうございました。気を付けて戻って来てください。えー、一旦CMです。次のニュースは旧統一教会で都合の悪い時には記憶が無い元大臣とマザームーン発言で物議を醸したあの政治家のニュースです」

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狂喜するリポーター Jack Torrance @John-D

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