第9話 お城を送りましょう

氷山の横穴から中に入っていく。


「中はもっと寒いですぅ……」


俺は自分とルルの周りを飛び回る火の玉の温度を上げる。


「ヌクヌクですぅ」

「体調崩したら元も子もないからね」

「ありがとうございます!ご主人様!」


そうしてドンドン奥へ奥へと進んでいく。

出てきたモンスターは全てファイアボールの犬が蹴散らしてくれる。


「このワンチャン強いですねぇ。ご主人様に似たんでしょうか?」

「どうなんだろうね?」

「氷のワンちゃんとかも出せるんですか?」


そう聞いてくるルルに答えるように俺は


「アイスボール」


氷の玉を作り出してそれを犬の形に変えて、敵を攻撃する習性を付け加える。


「すごいです!氷の犬も扱えるんですね!カラフルなワンチャンが動き回ってますよ!」

「カラフルと言うには物足りない気もするね」

「流石にご主人様でもこれ以上は無理ですよね?」


そう言うと勉強してきましたと言わんばかりの顔をするルル。


「2つの魔法を使うことをダブルマジックと言うんですよね?とても練習が必要な技術だと聞きましたよ」

「3つ使うとなんて呼ばれるか知ってるかな?」

「トリプルですよね?」


俺は雷の犬をその場に作り出して更に走り回らせた。


「って!トリプルゥゥゥ?!!!はわわわ!!!こ、こんなこともできちゃうんですか?!」

「流石にトリプルの維持は中々しんどいけどね」


ダブルマジックを修得出来るのは100万人に1人。

トリプルは1000万人に1人と言われている。


「これ疲れるんだよね」

「ちなみに、まだいけますか?」

「4種類ってこと?無理だよ」

「さ、流石に無理なのですね。でもトリプルでも凄いですよ!」

「ありがとう、練習した甲斐があったね」


ちなみにこんな事出来ても特に戦闘面で優位になれることはあまり無い。

自己満足みたいなものだ。


「さっきからずっと歩いてますけど、どんどん寒くなりませんか?」

「少し温度を上げるよ。そろそろシバに会えるのかもね」


そんなことを口にしながら氷の道を下に歩いていく。


「神様って言うのは随分引きこもりなんですね。こんなに下にいて、行くのが大変ですよ」

「確かにねぇ。瞬間移動が未知のエリアにも使えたらいいんだけどね」


流石に歩くのが面倒になるが、歩かないとシバ神に会えないというジレンマ。

だが、やがて、そんな道も終わった。


シバの部屋に続く扉をてルルが口を開いた。


「神様って随分人間っぽいんですね。扉にシバの部屋って書いてありますよ」

「子供なのかな?子供だと可愛らしいよね」


そう思いながら俺は一応扉をノックした。


「すみませんシバさんいますか?」

「あ、あのこういうのって入る時に声掛け必要なんでしょうか?」


つい前世の癖が出ていたようだ。


「そうだね。とりあえず開けてみよう」


開けて中に入ると雪女みたいな人が中にいた。


「だれ?」


その人が振り返って俺を見てくる。

その手に握られていたのは、氷でできた人形の頭。

ひえっ!


「し、失礼しました!」


バタン!扉を閉めた。


「あれ?来るとこ間違えた?俺」


そうして扉を見ようとしたところガチャりと扉が開いた。


「王子様来てくれたのですか?このシバを迎えに来てくれたのですね」


俺の腕を掴んでくるシバと名乗った女。


あれ、この人やばい?

俺、王子でも何でもないだろ?!


「わわわ!!」


逆サイドの俺の腕を掴んでくるルルだけどシバの力に勝てないのか、2人ともズルズル部屋の中に引き込まれた。


「王子様。王子様」


俺を即席の氷の椅子に座らせる女。


さっきから勝手に話を進められて困惑する

というよりなんの話をしてるんだろう。

この人は。


「この扉を開けたということは王子様ですよね?白馬に乗ってきて欲しかったのですが」

「いや、あの俺。魔法を教えて貰いに来たんだけど」

「魔法、ですか?」


目を真ん丸にしてキョトンとするシバ。


「王子様のためなら教えましょう。何を教えればよいのですか?」


俺は腕輪に収録されていた中の氷魔法の古代魔法を思い出す。


「絶対零度」

「絶対零度ですか、いいですよ。でも王子様とは言え人間に扱えるかどうかは」


と言いながら俺の腕を引っ張りながら部屋の奥へ向かっていくシバ。


そこには氷の修練場が広がっていた。


「さぁ、練習しましょう!」


言われるがままにアドバイスを受けながら絶対零度を練習していく。

そして、数時間後。


「で、できた」

「流石は王子様ですね。必ず修得出来ると信じておりました」


そう言ってくるシバに聞く。


「さっきから言ってる王子様って何なの?」

「お話しましょうか。数年前にこの場所にエルフが来たのですよ。その人は王子様と同じく私に弟子入りに来たのです」

「名前は?」

「リコと名乗っていましたよ」


先生だな。

ここに来たんだ。


「その人に彼氏欲しいんだけどーっと言う話をしたら数年後にここに来る男の子が私の王子様だよと言われまして。名前はシロナ様とそう言っておりました」


ニコニコの笑顔でそう口にするシバ。

先生のやつ、何吹き込んだんだよ。


「その人がどこに行ったか分かる?」

「知りませんよ」

「ふむ。ありがとう」


俺はそう答えルルを連れてこの部屋から帰ろうとしたけど、ヒタヒタと着いてくるシバ。


「何で着いてくるの?」

「え?私はもう王子様のパーティメンバーですし」


部屋から出て随分進んでも着いてくる。


「あの、いいの?着いてきて。一応神様なんじゃないの?」

「はい。引きこもり生活も飽きましたから。それより私も王子様と冒険というものがしてみたいのです」


とか言ってくるシバ。


「あ、あの俺たち出会ったの今日が初めてなんだけど、何でそんなに俺のこと好きなの?」

「愛に日数など関係ありませんよ王子様。私は貴方様だけをお慕いしておりますので。それに私はリコから話を聞いてずっと貴方様の可動式氷像と暮らしておりましたから」


腕を組んで来る。


「あ、かき氷食べますか?」


器と氷を魔法で作り出すシバ。


「シロップは?」

「私の愛情をたっぷりとかけてあります。食べれますよね?」


いや、無理だろ。


「それとも私の血の方がいいですか?」

「絶対無理だよ?!」

「冗談ですよ」


そうして俺は氷魔法を極めて、マイペース過ぎる神様のシバを仲間に加えたのだった。


外に出るとすっかり夜になっていた。


「どうしようか」

「野宿に、なっちゃいそうですねぇ」


ルルとそんな話をしていたら


「私にお任せください。氷の城よ。氷のワイバーンとウルフを添えて」


シバがそう口にすると目の前に氷の城が出来あがった。


周辺には氷でできたウルフが警備として徘徊している。

上空ではワイバーンが空を飛び回っていた。


「さぁ、中に入ってゆっくり休みましょう!」


戸惑うルルを連れてその城の中に入っていく。

流石神様だけあってやる事が違うな。

と思っていたが


「はぁ……はぁ……流石に疲れますね」


肩で息をするシバ。

神様と言ってもそれなりには疲れるようだ。

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異世界に転生したら貴族の子供だったので、時間もあるし魔法を極めて冒険者を目指すことにします。 にこん @nicon

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