第23話 家畜部屋


二階は敷居など全くなく大きな一つの部屋になっている。そこに平民男性が15名ほどが床で寝転んでいる。平民男性の仕事は家畜の世話であり、一日三回の食事と家畜の健康状態のチェックそして家畜部屋の掃除である。それほどたいした仕事ではないので仕事内容は楽である。しかし、平民男性の本当の仕事は、屋敷の闇の支配者であったクローヴィス兵士長、クロイツ子爵、シェラルト、この三名のおもちゃになることであった。


 平民男性は毎日この3人の誰かに呼び出され、暴行、強姦など精神が崩壊するまで痛めつけられて、従順なペットになるように教育され、死ぬ事無く乗り越える事が出来た者は、屋敷の雑務や兵士として採用されるのである。しかし、生存率は5%と狭き門である。


 私達に気付いた平民男性は正座をして頭を下げる。



 「頭を上げて楽な姿勢で私の話を聞いてください」



 と私は声をかけたが誰も正座をしたまま頭を上げる事はない。



 「この方は新執事のアルカナ様です。クローヴィス、クロイツはアーダルベルト伯爵に謀反を企てた罪により死罪となりました。これからは、アルカナ様の指示に従ってください」



 ロリポップの説明を聞いた平民男性は頭を上げて私の方を見た。



 「私は前執事のクロイツに代わり新たに執事に任命されたアルカナ・レイフォールです。私は今までのクローヴィスがおこなっていた屋敷の在り方は間違っているとおもっていますので、新たな屋敷の形態を模索しています。この家畜小屋に関しては即刻廃止を予定しております。しかし、クローヴィス達がいなくなっても、彼たちが残した由々しき思想を受け継ぐ者がいますので、最初にすべきことはクローヴィス達の亡霊を排除することです。そこで、あなた方に聞きたいのです。『不滅の欲望』という言葉を聞いたことがありますか?もし、聞いたことがある方は手をあげてください」


 

 私の言葉を聞いた平民男性のうち二人が手を挙げた。



 「聞いたことがある方にお聞きしたいのですが、どのような内容をお聞きしたのですか?」



 「ううう・・・ううう」

 「ううう・う・・うううう・うう」



 平民男性は一生懸命答えてくれているが、舌を切断されていて何を言っているのか理解できなかった。なので、私はその男性の元へ近寄って行った。



 「舌を切られているのですね。私は治癒師なので舌を元に戻してあげましょう」



 治癒師に舌を戻せるような力はないが、治癒師としての設定はこれからも崩すつもりはない。ロリポップも私が治癒師ではなく別の『称号』を持っていると気づいているが、アーダルベルト伯爵から余計な詮索はしてはいけないと言われているので、何も言ってこない。


 私は二人の男性の舌を元に戻してあげた。二人の男性は久しぶりに耳にする自分の声に喜びを得て歓喜のあまりに泣きながら私にお礼の言葉を発する。



 「それでは『不滅の欲望』の事を教えていただけないでしょうか?」



 私は善意で舌を戻したのではない。あくまでソルシエールを殺した犯人の情報を得たいだけである。



 「私が耳にしたのはシェラルトが私に強姦していたときです。シェラルトが激しく腰を振りながら、『来週の不滅の欲望の会合にはお前を連れて行ってやろう。お前の穴は最高にしまりがよくて、アルドリック様も喜んでくれるだろう』と言っていました」



 アルドリック・ベン・エーデルメタルは4大公爵家の1人バトルクワイ・ヴァン・エーデルメタルの長男であり、以前のこの町に来た時に私に求婚した相手である。そして、バトルクワイ公爵は『不滅の欲望』がおこなっている亜人狩りに反対の立場である。しかし、平民男性の証言によると息子であるアルドリックは『不滅の欲望』のメンバーであると断定される。


 モルカナはバトルクライ公爵にソルシエール殺害の解明に協力を要請すると言っていたが、息子が『不滅の欲望』のメンバーであれば、バトルクワイ公爵をあてにするには危険である。


 私はモルカナにソルシエールの件を託さないでよかったと思った。



 「貴重な情報をありがとうございます。あなたはどのような時に『不滅の欲望』の言葉を聞いたのですか?」



 私はもう1人の平民男性に尋ねる。



 「私はシェラルトとに鉄の棒で体を殴られていた時に、『今度の不滅の欲望の会議はかなり面白くなりそうだ。』とアードリアンという男性と話をしていました。後の会話は意識を失ってしまったので覚えていません」


 「貴重な証言ありがとうございます。ほかの方は何か『不滅の欲望』の事で思い出した方はいますか」



 これ以上は『不滅の欲望』の情報は手に入れる事はできなかったので、女性平民の居住区になる3階に向かった。


 女性平民は5人しかいなかった。女性平民も全員舌は切り取られて、歯もすべて抜かれていた。そして、ほぼ全裸に近い状で床に死んだように横たわっていた。女性平民の仕事は家畜の世話となっている。世話といっても、家畜の檻前に全裸で立たされて、家畜男性に自慰行為の手伝いをするのである。両手両足を拘束されている家畜男性は、女性平民の裸を見て興奮し、床にイチモツをこすりつけて自慰行為をたのしむのである。そして、女性平民の最大の仕事は兵士たちへの性処理である。毎日夜は兵士に連れて行かれて、いろんなプレイを強要されるため歯がないのである。


 女性平民は男性平民より生存率はすくなく、2年以上生き延びた者は0である。



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