第11話 パーティー結成!
「ふむふむ、なるほどです」
私の目の前でシャノンは顎に手を添えて何度も頷いている。
ここはギルドの一室、私とリリアとシャノンでお茶会をしていた場所だ。相変わらず実務机の上には大量の書類、あれは処理しなくても大丈夫なのだろうか?てかここのギルドの長は一体どこにいるのだろう?
現在は屋敷の探索結果をシャノンに報告しているところだった。
シャノンは自分の中で整理し終わったのか、顎から手を離し、私に視線を向ける。
「わかりました、屋敷はレミリアさんが使用して構いません」
「お、まじ?やったね」
「その代わり!」
シャノンはビシッと人差し指を私の鼻先に向ける。
「一応安全に屋敷を探索できるようになったのでしたら私自らも屋敷の様子を確認させてください。それが条件です」
まあそれくらいならいいだろう。
私は大きく頷く。
「おっけー、そんじゃ早速行く?」
「えぇ、そうしましょうか。善は急げ、です」
シャノンは『れっつごー!』と言いながら部屋を後にした。元気なことはいいことだけど、そのテンションの高さはなんとかならないものか。
私は隣にいるリリアに視線を向ける。
「リリア、疲れてない?大丈夫そう?」
リリアは大きく頷いてから『問題ないですぅ!』と敬礼する。一々動作がかわいいんだよね、この子。
私はリリアの手を引いて部屋を後にする。
★
「ふぅ、まさか屋敷まであんなに道が険しいとは思いもしませんでした....」
現在は探索が終わり、ギルドの一室に戻ってきていた。シャノンは額に浮かぶ汗を拭っている。リリアも流石にきついのか、ソファーに全身を預けてだらっとしていた。
「それで、あそこはもう使っていいの?」
シャノンはテーブルに置いてあるティーカップを手に取り、一口飲む。
「えぇ、大丈夫ですよ。見た感じ問題なさそうなので。それから依頼を達成されたので報酬を今からお持ちしますね」
シャノンは『よっこらしょ』と言ってから重そうに腰を上げてから、部屋を出ていく。
「リリア、今日はお疲れ様」
「は、はい。お疲れ様でした」
リリアは背筋を伸ばしてからペコペコと頭を下げる。それはまるで上司を労う馬鹿のようだった。
私は苦笑いを浮かべてから口を開く。
「そんなに固くなくていいよ。もっと自然に振る舞ってよ。まあ言われて直せるようなもんじゃないけどさ」
「は、はい。全力で直させていただきましゅ!」
あ、噛んだ。かわいいからいいや。
「それで、リリア。これからのことなんだけど...」
私がそう切り出すと、リリアは途端に暗い表情になる。
「そ、そうですよね。私みたいな雑魚、レミリアさんと行動なんて、できないですよね?短い間でしたが、お世話になりました。楽しかった、です」
うるうるとした瞳で私を見上げてくる。なにこれ可愛すぎでしょ。てかなんかネガティブ方向に考え始めた。
「ちょ、ちょっと待ってよ!早い早い、展開が早すぎるよ!誰もリリアのことを雑魚なんて言ってないし、それにこれからは別行動とも言ってないでしょ?むしろ私はこれからも一緒にどうかなぁ、って声かけようとしたんだよ」
私はリリアの両手を優しく包み込みながら語りかける。リリアは驚いたのか目を大きく見開いていた。
「こんな私でも、一緒にいてもいいんですか?」
「そりゃもちろん!むしろ私からお願いしたいくらいだよ。リリアと一緒にいるのは心地いいからさ」
リリアはパァッと瞳を輝かせて勢いよく頭を下げる。
「不束者ですが、末長くよろしくお願いします!」
「うん、よろしくね!」
私とリリアは固く握手を交わす。
リリアのセリフがどうもこれから仲間として一緒に行動する人が放つような言葉ではなかったが、そこは気にしたら負けだと思っているので敢えて口にはしなかった。
それから2人で雑談していると、シャノンが部屋に戻ってきた。
「お二人とも、お待たせしました。レミリア様、これ、冒険者カードと3000ルピです。お確かめください」
私は冒険者カードと3000ルピを手に取って確かめる。冒険者カードは金属でできていて、少しヒヤっとした。冒険者カードには名前とランクと顔写真が記載してあった。顔写真なんていつ撮ったんだろ?
お金の方はきっちり3000ルピあった。300年経ってもお金に変わりはなく、昔のままだった。
「うん、確認したよ。これで私も冒険者かな?」
「はい、報酬に不備がないようでしたらこれで今回の依頼は完了となります。お二人ともお疲れ様でした」
「うん、今回は少し疲れたかなぁ」
「私はもうへろへろですぅ」
私たちはそれから少しだけ雑談してから重い腰を上げた。
「そろそろ私たちは行くよ、ありがとね」
「いえいえ、こちらの依頼を処理していただいたんですし、お礼を言うのは私の方ですよ。レミリア様、ありがとうございました」
私は『どう致しまして』と口にしてからテーブルに置かれていた冒険者カードと3000ルピを手に持ってからリリアに視線を向ける。
「今回の報酬あとで分配するね」
リリアはブンブンと首を横に振る。
「い、いえ、全部レミリアさんが持ってて大丈夫です!」
「え、それはちょっと...」
リリアは視線をあちこちに向けながら『あっ』と声を上げた。
「それでしたら必要な時に必要な額もらってもいいですか?私、お金の管理って苦手なのでその方が安心です」
「そういうことならわかったよ。必要な時は遠慮なく言ってね」
そう言って私は手に持っていた冒険者カードと3000ルピを自分の影に向かって放り投げた。私の手にあった報酬たちは放物線を描いてスルッと私の影に入っていった。
2人はそんな光景を目にしてフリーズしていた。
「い、今のはいったい?」
シャノンは今の光景が信じられないといったような表情で呟く。
「おぉい、リリア、早く行くよ〜」
「は、はい!」
リリアは小走りで私の横までくる。
「それじゃ、またお世話になる時はよろしく、シャノン」
「は、はい!いつでもお待ちしておりますので、気軽にお越しください」
シャノンは深々とその場で一礼する。
私たちはそんなシャノンに見送られながらギルドの一室を後にした。
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ここまで読んでいただき、ありがとうございます。また、★、♡、フォローしていただいた方ありがとうございます。
次回の更新は2月25日になります。よろしくお願いします。
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