幕間


客室とは言え潜水艦の部屋は狭い。

浮上中で外の映像が見られた。

当該国の陸地は未だ見えない。


シンプルな携帯の着信音。

通達のメールに「ラボ」が帰ってくるとあった。

依存物質の研究に一段落着いたのだろう。

「どうしたんですか?」

「新薬が出来たようです」

「新薬」と聞いただけで了解されてしまう。

女子成員はそれ以上何も訊いてこなかった。

ベッドから滑り起きてハンガーに手を掛ける。

「帰ります」


女子成員が自分の車に乗って去っていく。

エンジン音が遠ざかり辺りは復静かになる。

確かに、新薬が出来れば「贄」が要求される。

逃げて普通だ。

此の国の人間は――


メールを送る。

届くのは次の浮上時、あと一時間ぐらい。

丁度港へ着いた頃届く筈だった。

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