クレアちゃんの異世界授業〜【複製】【消滅】編〜

「さぁさー!スキル試運転も大詰め!最後は【複製ふくせい】と【消滅しょうめつ】、行ってみましょー!」

「おー!」



 あれから時間の止まった世界で、様々なスキルを使いまくった私とクレアちゃんは、片腕を上げえいえいおー!をした。


 いやー、スキル使うのめっちゃくちゃ楽しかった…………!

 クレアちゃんがスキルで【転移】させてくれた原っぱを、炎の魔法で焦土しょうどにしたり(ちゃんと元に戻した)無限に剣を【創造そうぞう】したり(ちゃんと仕舞った)…………………

 もう、これぞ異世界!これぞ俺TUEEEEE!って感じ!


 今は再び宿屋さんの一室に戻ってきている。

 ちなみにクレアちゃんは私と視線を合わせるためか、常時空中にふわふわと浮いている。

 銀髪が広がってかわいい………………おそらくコレもクレアちゃんの持つスキルのひとつなんだろう。



「ではではー、あちらの机をご覧くださ―い!」



 うながされるままに机を見れば、さっきクレアちゃんが【設定せってい】の説明に使っていた黒っぽい万年筆があった。



「万年筆……………があるけど、あれをどうにかするの?」

「はいー!まずは【複製ふくせい】してください!許可はわたしが出しますからー!」

「う、うん……………」



 えーっと、やり方はさっき教えてもらったんだよね……………


 右手に持った『つむぎ硝子筆ガラスペン』を、万年筆の方へ向ける。

 そして、昼間メアリさん受付のお姉さんがしたように、ペンの先で『黒っぽい万年筆』と書かれた文字に、ちょんと触れた。


 すると、その文字だけがひときわ大きく光り、左腕に抱えた『創造はじまりの本』の白紙のページに、ジワ…………と『黒っぽい万年筆』の【設定】が現れる。


 私はそのページの中の名前……………『黒っぽい万年筆』と書かれた部分にスッとアンダーラインを引いた。



「【複製ふくせい】:『黒っぽい万年筆』!」


「【複製】内容を確認。発動を許可しますー!」



 唱えて、クレアちゃんが許可を出すと、透明だったアンダーラインが黄色に変わる。万年筆の下にも、黄色い小さな魔法陣が現れた。

 光が万年筆を包み、消える――――――――――と、そこには2本になった、『黒っぽい万年筆』があった。



「うわぁ、2本になってる…………これ、どっちが本物?」

「うーん、言ってしまえば『どっちも本物』なんですけどー、複製元はいちおう、こっちですー」



 そう言って、クレアちゃんは右側の万年筆を指差す。



「……………ぜんぜん見分けがつかないね」

「でしょうねー」



【設定】を読んでみても、全く違いが無い。ただひとつ在るとすれば、左側の万年筆のページに小さく『備考:複製品』と書かれていることぐらいか。



「まーまー、これが【複製】です。おーけーですかー?」

「おーけーでーす!」


「じゃ、今度は【消滅】させましょー!ちゃーんと、複製品の左側のを【消滅】させてくださいねー?」

了解オーキードーキー!」



 今度は直接、『創造はじまりの本』のページにアンダーラインを引く。

 しっかり左側のページだ。



「【消滅】:『複製・黒っぽい万年筆』!」


「【消滅】内容をかくにーん!発動を許可しますー!」



 さっきよりふざけめの許可と同時に現れたのは、青い魔法陣。

 さっきのように光が万年筆を包み、けれど消えた先には――――――――――――わずかな青い燐光りんこうのほか、何もなかった。


 机の上には元通り、万年筆が一本だけ。


 在ったはずの万年筆は、跡形もなく消えてしまった。まるで最初から無かったかのように………………いや、のだ。






「……………これ、昼間のモンスターもこうなったの?」


「はい。ちなみに、そのときもわたしが許可しましたよー?」

「え?」



 クレアちゃんに言われて、目をみはる。


 許可?許可って―――――――――



『【消滅】内容を確認。発動を許可しますー』



 あっ。



「もしかして、あの声……………」

「思い出されましたかー?実はあの時、貴女自身に【偽装】をかけて、聞こえにくいようにしてたんですよー」

「ホントに?聞き間違いだと思ってた………………」



 私に【記憶偽装きおくぎそう】とかがかかってたのは聞いてたけど、まさかそこまで…………!



「あ、じゃあ私が夢だって勘違いしたのも」

「それはただ単に貴女の思い込みですよー?」

「…………………………」








 ……………………私のアホさが露呈ろていしたぁ…………………









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