冒険者ギルド

 ローザさんの馬に乗せてもらい、生まれて初めて乗馬――――ポニーには乗ったことがあるけど――――を体験して悲鳴をあげ――――アレでもかなりスピードを落としてくれていたみたいだったが、高いわ揺れるわインドア派の私にはかなりキツかった――――、町に入ったところでは異国情緒いこくじょうちょあふれる(いや、異世界情緒いせかいじょうちょ?)町なみに感動し、そんなこんなしてたどり着いたのがこの『冒険者ギルド』である。



「お、大きいですね」


 建物は多分三階建て。大きな入り口には門番がいて、周囲ににらみをきかせている。中にたくさんの人がいる事がここからでも分かって、思わずまじまじと見つめてしまった。


「まあね。ギルドは冒険者の登録、仕事クエストの受注や冒険者同士のコミュニティの場、あと酒場とか………いろんな事をやってるからね。働く人も来る人も多いのさ。カエデ、来るの初めて?」

「あ、えと……どうでしょう、よく覚えてないです」



 ローザさんの問いに、曖昧あいまいに答える。

 もちろん実際に来るのは初めてだが、この建物には

 でもそんな事は言えないし、幸いローザさんは私がモンスターの影響で記憶がないと思ってくれているようなので、ありがたく利用させてもらうことにした。

 でもこれ、ほんとにRPGとかラノベまんまの『冒険者ギルド』って感じ………

 きっと美人の受付嬢がいるのね。(←おいこら)



「ま、中に入ろうか。最近カエデみたいな精神系モンスターの被害者が増えてるんだ。被害者の把握はあくもギルドの仕事のひとつだからね」

「へぇ、色々な事をしているんですね」



 ローザさんが開けてくれた扉から中に入ると、想像以上に人がいた。

 一階は酒場になっているようで、たくさんの人が食事をしたり、にぎやかに話をしていたりしている。

あ、あのソーセージ美味しそう………あっちの人は何飲んでるのかな?なんか紫色だけど大丈夫かな?


「おー!ローザちゃん!もう戻ってきたのかい」


 声のしたほうを見ると、ジョッキを掲げたおじさんがいた。

ローザさんも笑顔で応じる。


「あぁ、オルガさん!そうなんですよ、ちょっと野暮用やぼようが」

「おや?ローザちゃん、となりの子はどうしたんだい?」

「森で会った子なんです」

「はは、ローザちゃんはいろんな子を拾ってくるなあ」

「違いねぇ!」


 次々いろんな人に話しかけられ、しかもそれに難なく答えていることから、ギルドでのローザさんの人気ぶりがうかがえる、けど。

 ローザさん………コミュ強では?


 美人で人気がありコミュ強。

 ………文句の付け所がないですね。そもそも付けようとしてないけど。(スンッ)


「受付はこっちだよ。行こっか、カエデ」

「あ、はい!」


 ローザさんに手を引かれ、たどり着いた受付つけには…………赤い縁のメガネ、セミロングの茶髪、そして完璧に着こなしたギルドの制服。

異世界モノのお約束、美人の受付嬢がいた。ッシャア!!(心でガッツポーズ)

 そんな受付嬢さんとも知り合いなようで、ローザさんを見つけた受付嬢さんは、「あら」と言って目を細める。


「こんにちは、ローザさん。そちらの方はまた拾われた方ですか?」

「こんにちは。まぁそんなもんですよ」


『また拾われた』という言葉が引っかかったが、にこやかに話す二人。

 ………ローザさん、こんな風に森で誰かに会うの、初めてじゃないんじゃなかろうか。


「ただ……彼女、例の精神攻撃系せいしんこうげきけいモンスターの被害者かもしれません」


 声をひそめて言われたローザさんの言葉に、受付嬢さんが目を見開く。

 途端とたんに真剣な顔になり、静かに口を開いた。


「分かりました。第3応接室おうせつしつまでいらしてください」


 真剣な雰囲気にひとりついていけない私は、え?と首をかしげるしかない。

 そんな私に気づいたのか、ローザさんは優しく微笑ほほえむ。


「大丈夫だよ。ちょっと話を聞かれるだけ。被害者の実態じったいや、見つかった場所、その場の様子からどのモンスターの仕業しわざなのかを推測すいそくしたり、一定以上情報が集まったらクエストを発注したりするんだ」


 あぁなるほど、それもギルドの大事な仕事ですねってそうじゃない!

 え、それって何か大事おおごとになるやつじゃない!?

 いや、でも被害者増えてるって言ってたし……?


 ど、どーしよう………



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