”友達クエスト”の少数派 ―フレンド数=強さのVRMMOで芋ぼっち美少女の世話をしたら「と、友達なんかじゃないもん……」とデレてきたので一緒に攻略しようと誘ってみた―
6-4 再生怪人は弱い法則! って、なんか違うんだけど!?
6-4 再生怪人は弱い法則! って、なんか違うんだけど!?
そして――僕らは再び、グリフォンの元へとやってきた。
装備は新調済み。
アイテムも限界まで袋詰めし、回復に攻撃に補助、と一通り揃えている。
油断はしないけれど、戦闘自体は前回より楽になるはずだ。
その隣には、同じく気合いを入れる魔法使い姿の深瀬さん。
「ま、まあ一度倒した相手だし、再生怪人は弱いのが定説だもの。倒すだけなら楽勝ね! ら、楽勝よね?」
なんかちょっと動揺してるけど、大丈夫だろうか?
と、彼女が僕にそっと目配せして。
「……けど蒼井君、本当に、ログアウト対策なんて出来るの?」
「ああ、うん。対策と呼べるかは分かんないけど……一応。とにかく、もう一度グリフォンを倒そう」
強制ログアウトについて心配してたらしい。でもそちらはまあ、何とかなるはずだ。
準備が整ったら遠慮はいらない。石柱のワープゾーンをくぐり、戦場へ。
前回と同じくコロシアム状のフィールドに足を踏み入れると、中央を闊歩していたグリフォンが雄叫びをあげてこちらを認識した。
僕らの戦術は、前回とそう変わらない。
深瀬さんが弓を構え、先制の毒矢を放つ。
前回同様、毒攻めだが――彼女がさらに、追撃のファイアボール。
「今回は毒パーティに炎も加えてあげるわ!」
今回はMP回復アイテムを多めに持ち込んだ。
攻撃魔法を使う余裕が生まれ、スピーディに攻略できるはずだ。
グリフォンが空へと飛び上がり、怒りにまかせた六連雷撃【ゼクスサンダー】を放つ。
フィールドに次々と落雷が降り注ぐが、こちらは既に対策済み。
「うん。魔法攻撃の対策も十分だね。深瀬さん、じゃあ十分したまたアレで」
「ええ!」
僕らはちまちまと毒矢を放ち、その合間に深瀬さんが攻撃魔法を咥えていく。
そうして十分が経過した頃、グリフォンがAIルーチンに従いかぎ爪を立てた。
地面へと飛び降りつつ、必殺の【スカイダイブ】を放つが、
「ドッペルゲンガー!」
――前回同様、彼女による50体の分身で切り抜ける。
「さすがに二戦目となると慣れてきたわ……! ほらほら、そんなワンパターン行動でいいのぉ?」
「深瀬さん、モンスター相手に挑発しても仕方無いけど……」
「い、いいのよ! 昔苦戦したボス相手に、こっちがパワーアップしてマウント取るのが気持ちいいんだもん……!」
深瀬さんが言い訳しながら毒矢を放ちまくる。
好き嫌いが明確で、分かりやすくて、楽しいって思ってるときは心から楽しそうにする深瀬さん。
その横顔を見るのが、僕は案外好きだ。
でもこの調子で進むなら、HP50%を切るまでは作業かな――?
と、のんびり次の毒矢を構えた時だった。
シャアア、と雄叫びをあげ、上空のグリフォンが爪を出して再び着陸態勢に入る。
……あれ?
【スカイダイブ】は、さっき放ったばかりだが――
「あれ、またスカイダイブ?」
おかしいなと思いつつも、深瀬さんが冷静にドッペルゲンガーを展開。
50体の分身がフィールドを埋め尽くし、その直後にグリフォンが着地――しない。
地面スレスレで【スカイダイブ】をキャンセルし、そのまま翼を広げて旋回しつつこちらへ飛びかかってきた!
「んなっ!?」
(まずい!)
僕は深瀬さんを庇うように飛びかかり、伏せさせる。
直後、脇腹に強めの衝撃。
「深瀬君!?」
「う、うわわっ」
直後、僕の視界が思いっきり吹っ飛び、コロシアムの壁に叩きつけられた。
じんわりと響く背中の痛みとともに、HPゲージが火花を上げて九割近く消失。
しまった、直撃を貰った……!
さらに気絶効果がつき、星エフェクトが表示され視界がぐらぐらと揺れる。
(まずい、いま追撃を受けたら死ぬっ……!)
身体を動かそうとするが、視界がぐるぐる回って気絶判定が解けない。
グリフォンがこちらを睨む。
翼を広げ、その巨体をもって突進し――
「このおっ!」
深瀬さんが【爆炎弾】を投げた。
グリフォンが爆風で傾き、その間に気絶を解除した僕は転がるようにフィールド端へと逃げていく。
っ……危なかった。死ぬかと思った!
でも、何でだ?
攻撃パターンが変わった理由は?
まだHPゲージは9割も残ってるのに!
体勢を立て直している間に、深瀬さんが再び【爆炎弾】を投げつける。
とにかく攻勢に出て、相手にペースを掴ませない戦術だ。
が、グリフォンは地上にも関わらず、翼をはためかせ風魔法【ウィンドストーム】を発動。
元は低威力の風属性全体攻撃に過ぎない魔法だが、しかし――
風が巻き起こると同時に、投擲した【爆炎弾】がふわりと浮き上がり、グリフォンの巨体を逸れて空中で爆発。
「んなっ、風魔法を攻撃アイテムに当てたの!? プレイヤーじゃなくて!?」
おかしい。そんな挙動はなかった。
先程のフェイント攻撃も、アイテム攻撃に対して魔法で迎撃する姿も、前回はなかった行動だ。
と同時に、予感がした。
これは――”四人迷宮”の時と、同じだ。
ガーゴイルが事前情報なく首を伸ばしたように、僕らの時限定の、厄介な仕様が加わっている。
どうやら勝利を収めるのは、簡単ではないようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます