「おはよう雄馬、私たちがお付き合いを始めたことは学校中に知れ渡ってるみたいよ!」


 朝、教室に入ると香奈子が嬉しそうな笑顔で駆け寄ってきて、


「ムギュっ」


と声に出しながら俺に抱きついた。教室のみんなが冷ややかな視線を浴びせるなか今度は、


「ブチュっ」


と声に出してキスをしようとしてきた。さすがにみんなの視線が痛い。非凡とか異常とか言われるのも嫌だ。


「ダメだよ。みんなの前では……」


 すると香奈子は制服のポケットから目薬を取り出し両目に差した。


「クスン、雄馬が非凡で異常なお付き合いを選択したから頑張ってるのに」


 みるみるうちに香奈子の目から目薬がこぼれ落ちた。


「クスン、これから雄馬と一緒に歩んでいこうと思ったのに」


 目薬なのにホントに泣いてるように見える。嘘泣きってわかってるのに背中がぞくぞくとして、守ってやらなきゃとますます惚れてしまった。


 ずっと香奈子と歩んで行きたいよと、俺は香奈子の頭を撫でながら言った。


「私と歩んでくれるのね?」


 二人三脚のように支え合いながら歩んで行くよ!


「足をつないで帰ってくれるのね?」


 もちろんだよ!


「やったあ!じゃあ今日の帰りも足をつないで練習よ!」


 え?練習?


「あれ?雄馬知らないの?」


 香奈子はカバンから1枚のチラシを取り出した。そこには


『天下一男女混合二人三脚大会』


と書かれている。ホントに有ったのか二人三脚大会。


「じゃあここで問題です。雄馬、私と二人三脚大会に出る?出ない?」



  ーーおしまいーー

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恋は二人三脚で 柏堂一(かやんどうはじめ) @teto1967

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