第7話 充電器大事マジ大事

 アラームの音で目が覚めた。


 おはようございます『実は俺来なくても良かったんじゃね』疑惑が現れた異世界召喚系主人公、ユウ、ユウでございます。


 スマホを見ると時刻は朝7時。腹立たしいことに、いつもの習慣通り出勤時刻に合わせてのお目覚めだ。アラームを切り忘れた自分にムカつくわ。


 今は何者にも縛られぬ自由な生活をしてもいいんだぜ? 二度寝……するかあ なんて、思ったところで腹が『クゥ』と鳴る。


 寝起き早々に飯を求めるたぁ俺の胃も元気になったもんだと思ったところで『食糧問題』が頭をよぎる。


 そうかあ、自給自足なんだよなあ。パンちゃんってどうも適当で雑だからな。きっとログボもそのうち飽きて無くなるんじゃないかと思う。


 早めに食料調達のルーチン作っとかないと、いずれ飢える羽目になってしまうだろうな。


 俺の行動を縛る他人はいないけれど、同時に頼りに出来る他人も居ない。自由の代償に自立がのしかかってくるとはなんてこった! 


 ぶつくさと毒づきながら身体を起こし、スマホをいじる。


 頼りにならねえ女神だが、頼れるうちは頼っとくかと、ログボを貰うためアプリを立ち上げる。


『今日のログインボーナスはこれ! <水 3日分>明日はこれが貰えるよ! <魔石1個>』


 ドサドサっという音とともに2Lボトルに入ったミネラルウォーターが3本降ってきた。あっぶね! 横になってたら顔に当たる位置だぞ! わざとか? わざとなんだろ!


 1日2Lという計算か……適切なのかわかんねえな。そもそも異世界にペットボトルとか何考えてんだ。世界観ぶち壊しすぎだろうがよ! 使った後の容器どうすんだよ! オーバーテクノロジーにも程があるだろ! まったくもう、ペットボトルとか色々便利に使えてありがてえっつーの! マジ感謝!


 ていうかもう既に飲める水場を確保しているんだよなあ。中身には微塵もありがたみを感じないが、容器だけはマジで嬉しい。軽くて透明な容器なんて自分じゃ作れる気がしねえからな。


 朝食後、手癖のようにアプリを弄っていると、なにやら『クラフト』という項目が増えていることに気付いた。なんじゃこりゃと開いてみると……なるほど、どうやら便利な道具を作れるようだ。


 現在作れるのはこの三つ。


【開拓ツール】 【建造ツール】 【製作ツール】


 なんだかとても大雑把な感じ。普通は『ハンマー』とか『ノコギリ』とか『クワ』みたいにさあ、道具の名前が並ぶんじゃねーの? いや待てよ、もしかしてこれはその手の道具をセットで入手できると言うことなのだろうか?


 もしそうならすげーありがたいけど、何にせよ相変わらず適当で雑な女神だな……。


 うーん、どうすんべ。家を建てるなら建造ツールが必要だと思うけど、先に土地をある程度開拓してからなるべく平坦で安全な場所にしてから家を建てたいよな。うん、迷うこたねえや、君に決めた!


 えいやっと開拓キットをタップすると『クラフト中 残り時間 12時間』と表示された。


 じわじわと残り時間が減っていく。ソシャゲに良くある奴をまねたんだろうけどさあ、あれは長期に渡ってプレイヤーを離さないためのものだろ? このアプリにそんな運営の事情的な要素っているんすかね? っていうか初めから解放でよくね? つか長えよ! 12時間ってアホじゃねえの!


 なんて言いつつも、これはこれで先の楽しみが出来たと思えるので、実はそこまで悪いと思っていない。ゲーム感覚で開拓を楽しめっていうんだろ? いいじゃん。やってやろうじゃん!


 となれば、先に地図見て開拓予定地を考えないといけないよな。あれからそこそこうろついたから結構範囲が広がっているはず……とスマホに視線を移したとき電池残量が目に入った。


 何かの間違いでは無いかと思ったが、何度確認をしても減っている。これまで何をしても減ることが無かった電池残量が「25%」を示していた。


「おいおいおい! 電力消費をしなかったんじゃないのか!? ノベルにありがちな無限バッテリーじゃないの?」


 ポコン! 


『電力消費はしない、しないがバッテリー残量が減らないとは言っていない』


「どこのくそじじいだよ! 一体どういうことなんです?」


 ポコン!


『この世界にはまだ電力という概念がありません。そこで電力の代わりに魔力を消費する仕様に変更しました。最初はサービスでこちらから魔力を送信していたため残量が減らなかったと思いますが、自立して貰うため充電器からはずs・・・供給を絶ったのです。クラフト機能の解放はそれを実感して貰うためでしたが、どうですか? 機能を使ったため一気に魔力を消費してしまったでしょう うふふ』


「うふふじゃねえよ、この野郎。ほんと意地悪な女神様だわー……つかさ、充電……充魔? いや、面倒だから充電でいいや、充電はどうすれば良いんだ?」


 ポコン!


『簡単ですよ魔石を用意してその上にスマホを乗せるだけです。ほら、スマホでも無線充電とかあるでしょう? 板的な充電器に乗せるやつ。ああいう感じですよ』


「ははあ…… それで明日のログボに謎の魔石があるわけかー。普通さあ、新要素追加と共にそのチュートリアルとして魔石つけねえ?」


 ポコン!


『……ですね。ちなみにログボ石では10%程度の充電が可能です。魔石を明日に回したのは……その、そう、試練です! 神の試練だから! 今日を25%で乗り切りなさいという試練なの! そうなの!』


 ぜってーなんも考えてなかっただろコイツ。


「つーかさ、たった10%だけなん?  てか、クラフトしたせいで残量が25%になったみたいだけど他の機能もそんなに使うの?」


 ポコン!


『うーん……そうですね、コストによりますが他のも結構使いますよ。日常使いだとそこまで減りませんが、メインのクラフト機能はログボ石の容量だと3個~9個無いと賄えませんからこれから大変ですね、あはは(クソ笑ってる猫のスタンプ)』


「あははじゃねえ!」


 ポコン!


『でもでも、ポンポンガチャ石やら回復林檎やら配ってパワープレイされたらアプリ飽きられるの速くなるじゃないですか……』


 ポコン!


「ソシャゲ開発みたいなこと言ってんじゃ無いよ! こっちは生活がかかってるの! リアルなの! リアル! ゲームじゃねえんだよ! 俺がいくらアプリ使ってもお前にお金は入らねえの! 無駄にアプリの寿命を伸ばす意味皆無なの!」


 ポコン!


『それもそうでした。うーん……魔石は魔物のコアとなる物質ですので、魔物を倒せば手に入りますよ。魔獣ならそこらにポコポコ居ますので、頑張って倒しましょうか。魔獣はこの世界における動物みたいなもので、知能が高いものはあんまりいません。クロベエちゃんみたいにお話出来るわけでもありませんし、相手に遠慮はいりませんよ! さあ、レッツハンティングひと狩りいこうぜ!』


「気軽に言ってくれるなあ……」


 ポコン!


『まあ、最初のキットに入っていたナイフとクロベエちゃんの力があれば、この辺りの魔獣程度さっくりと狩れるんじゃ無いでしょうか? うん、きっと大丈夫よ!』


 時々言葉遣いがいい加減になるよなこいつ。油断すると直ぐに素が出る辺り程度が知れるぜ。


 ともあれ今後を考えると魔石は絶対に必要だ。暇なのかパンちゃんはダラダラメッセを続けていたが、途中から未読無視してスマホをぽっけにしまい、クロベエに乗って森へと向った。ハイヨー! クロベー!

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