第2幕 新たなる敵、その名はガリガリーズ! 

「マッスルキングダム?」


 蝶介ちょうすけ秀雄ひでおがマッスルという単語に素早く反応する。李紗りさはそんな二人を「まーた筋肉に反応するんだから」といった目で見つめていた。


「もうすこし詳しく教えてくださいますか?」

 真弥まやがちびマッチョ君に対して優しく尋ねた。


「……僕たちの国、マッスルキングダムに突然『ガリガリーズ』と名乗る者たちが現れて……みんなから筋肉を奪ってしまったんだ……」

「なんだって!」


 またしても筋肉ワードに蝶介が反応した。そして筋肉を奪うという行為に彼は怒りを抑えることができなかった。しかしここは天才少年、海原かいばら秀雄が冷静に質問する。


「もう少し、そのガリガリーズという者たちのことを詳しく教えてもらえますか? それと筋肉を奪うということについても」


 ちびマッチョ君は、蝶介からもらったプロテインドリンクを全て飲み干して一呼吸おくとことのあらましを話し始めた。


「マッスルキングダムは筋肉を愛する者たちで溢れている国なんだ。どこを見てもマッチョだらけ。マッチョの、マッチョによる、マッチョのための政治が行われていたんだ」


 その言葉に蝶介がゴクリと唾を飲み込んだ。李紗は、蝶介があまりにも前のめりになって話を聞くものだから、あまりの恐ろしさに突っ込むのをやめた。


「だけど突然『ガリガリーズ』という、その名の通りガリガリの人たちがやってきて……。何やら魔法みたいなものを唱えるとみんなの筋肉がごっそりなくなって、そしてみんなガリガリになってしまったんだ」


 話をしながらマッスルキングダムやガリガリーズのことを思い出してしまったのだろう。ちびマッチョ君は涙を流しながら、その場に膝をつき震え出してしまった。


「お願いだ、マッスルキングダムに来て、ガリガリーズを追い出してくれないか」

「まかせておけ」蝶介が即答した。



「ちょ、ちょっとマッチョ(二回目)……じゃなくてちょっと待ってよ番所君! いきなりそんな話をされてもねぇ、李紗」



 突然のことに悠花ゆうかが待ったをかける。突然、ワームホールから現れたちびマッチョ君のことを信じろというほうが無理があるのは確かだった。マジカル☆ドリーマーズを狙った夢喰い(本編で戦っているラスボス)の罠なのかもしれない。マッチョだからといってなんでも信用するのはよくないと思うわ、と悠花が蝶介を諭す。


「ちなみに、どうしてここに助けを求めにきたの? 私たちじゃないといけない理由とかがあるのかしら?」


 悠花の問いに、ちびマッチョ君は蝶介と秀雄を指差しながら言った。


「僕は……ガリガリーズを倒せるほどの、とマッチョキングの銅像にお願いしたんだ。そうしたらさっきの青白い光が僕を包んで、なぜかここへ……」


 その言葉を聞いて、蝶介が涙を流しながらちびマッチョ君を抱き上げて、そしてしっかりと抱きしめた。


「安心しろ、ちびマッチョ君。マッスルキングダムは俺と秀雄が取り戻してみせる! さあ、行こうじゃないかマッスルキングダムへ! 俺たちならガリガリーズなんてちょちょいのちょいとやっつけてみせるさ! なあ、秀雄!」


「もちろんです、アニキ!」



 えーっと、あれ、今回マジカル☆ドリーマーズの出番はない感じでしょうか? え、魔法少女じゃなくて筋肉マッチョのまま戦うってこと? 私は……マッチョじゃないから戦わないわよ。李紗、それで……いいの?


 さあ、知らない。筋肉バカのことなんてほっておけば? 私たちはパフェを食べに行くという大切な用事があるんだから。


 でもお姉様……。


 いいのいいの。食べ終わって帰ることには決着がついて、マッスルキングダムから帰ってきてることでしょ!



 美少女三人組はそんな会話をしながら、こっそりその場からフェードアウトしていった。


 しかし三十分後、まったりとパフェを堪能している悠花、李紗、真弥の前に、再びワームホールが現れ、先ほどのちびマッチョ君が泣きながらやってきたのである。


「蝶介と秀雄もガリガリーズにやられてしまった! お願い、二人を助けて!」

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