第20話 ダークナイト・メイガス
夥しく広がる血溜まりの中心に、黒い軍服の少年が沈んでいる。
もはや何の反応も示さないそれは、ともすれば死んでいるようにも見えるが、注意深く目を凝らすと微かに身体が上下しているのが分かった。
黒野切臣はこのような惨状に見舞われながらも、まだ生き永らえているのだ。さすがは魔剣士の生命力というべきか。
「……つっても、この状態じゃあいっそ死んでた方が楽だったかもなぁ」
破滅のジュリアスが憐れむように口を開く。
「俺様の血槍瀑布を食らって形が残ってるだけでも奇跡だっつうのに、まさか生き延びちまうなんてよぉ。全く不運な奴だよなぁ」
血槍瀑布。
ジュリアス自身の血によって造り出される紅槍を何十本何百本にも渡って形成し、一斉に射出することで対象を串刺しにする大技。
本来は大軍を対象とした使用を想定したものであり、今回は対象が単体且つ、喰うためにあまり破損させてはならないということもあって本数や威力は抑えたが、それでも並の魔族や魔術師ならば原型を止めていなかっただろう。
五体がそのまま残っているのを見るのは、ジュリアス本人としても久しぶりのことだった。
「ま、どうでもいいがなぁ。どうせなら喰いやすく一口大にスライスされていてほしかったが、丸齧りってのもそれはそれで悪くねえ。ちょうど運動して腹も減ったことだし、そろそろ喰うとすっかぁ」
口の端から涎を垂らしながら、ジュリアスは言う。
その場にしゃがみ込み、倒れる切臣の身体を掴む。そのまま勿体ぶるように口を大きく開けて、
「そんじゃま、いただきまー……」
言おうとした途端。
━━凄まじい閃光が背後に迸った。
「あん?」
ジュリアスは後ろを振り返る。
果たして目に飛び込んできたのは、足止めのために喚び出していた下級アンデッドたちが根こそぎ吹き飛ぶ光景だった。
次いで、凄まじい雷電の奔流を伴い、こちらへ向かって猛スピードで飛び込んでくる影が一つ。
「汚い手で切臣に触るなぁああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!!!」
竜宮寺蓮華。
黒野切臣の主たる少女が、さながら悪鬼の如き様相でジュリアスに急接近し、紫電を纏った飛び蹴りを繰り出す。
「死ねッッ!!!!!!」
ジュリアスはそれを難なく躱した。
しかしながらその表情には、決して少なくない困惑の色が含まれている。
「何だぁ? こいつは」
思わず疑問の言葉を口にする。
言うまでもなく、目の前の少女の素性など分かりきっている。だが思わず首を傾げざるを得ないほどに、目の前の魔女は尋常ならざる気配を発していた。
(連中の実力は事前にある程度把握してる。少なくともこのメスガキは、ゲドに呆気なく負けるくらいの取るに足らねえ雑魚だったはずだぁ。あっちのチビならともかく、こいつにあの数を捌けるほどの力なんざあるわけねえ)
事実、木津うづきの方は未だ取り囲まれたまま四苦八苦している。ジュリアスの見立てでは間違いなく、蓮華よりもうづきの方が実力は数段上だ。
だというのに一体何故、竜宮寺蓮華があの分厚い包囲網を突破できた?
「殺す……殺す……絶対に殺す……ぐちゃぐちゃに引き裂いて野良犬の餌にしてやる……臭くて汚い生ゴミ以下の腐敗物が、よくも……私の切臣を……」
ブツブツと何事かを呟きながら、覚束ない様子で身体を揺らす蓮華。明らかに冷静さを失っている。
その全身から立ち上る殺気は凄まじく、常人ならば軽く当てられただけで失神してしまうだろう。
だがジュリアスが真に警戒しているのは、そんな表面的なものではない。
垂れ落ちた前髪の向こうから覗く、粘着質なエメラルドグリーンの眼光だった。
どろり濁った不気味な情念。
黒野切臣に対する、おぞましく狂った執着。
彼との蜜月を邪魔するものは何であろうと排除してやるという、凶悪なまでに異常な愛。
殺意すら隠れ蓑にしたそれは、人間よりも遥かに永く生きているジュリアスでさえ感じた経験のないものであり、ともすれば寒気を覚えるほどであった。
「ハッ、面白れえ。それが本性ってわけかぁ。魔剣士のガキの前じゃあ猫被ってやがったなテメェ」
ジュリアスは得意の槍を持ち構えて不敵に笑うと、雷鳴を従えるプラチナブロンドの魔女を睨む。蓮華を明確に“敵”だと認めたのだ。
「そういやテメェもあのガキと一緒に、仲良く胃袋に収めてやるって決めてたんだったなぁ。交互に齧って味比べしてやるぜぇ!」
その言葉を皮切りに、蓮華が動いた。
頭上に跳んでの踵落とし。ジュリアスはすかさず槍で受け止める。余波による電流が周囲に轟き、アスファルトの地面に皹を入れた。
「なかなかやるなぁ。ほんのちょっぴりだがビリビリ来たぜぇ」
「あぁあああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!」
蓮華は足を離して一度距離を取った。
牽制代わりに雷撃を飛ばす。
当然、ジュリアスは全て避けてみせるも、その一瞬の隙を狙って蓮華が接近。無防備な脇腹目掛けて今度は掌底を放つ。
「轟雷掌!!」
電光走る一撃は吸い込まれるように十三貴族へと叩き込まれ、
「おっと惜しい」
またしても忌まわしき紅槍に阻まれる。
だが蓮華は止まらない。そのままひたすらに連続攻撃を畳み掛けていく。
拳。蹴り。手刀。掌底。引っ掻き。雷撃。果ては頭突きや目潰し。金的さえも狙おうとした。
全身全霊に憎悪と殺意を乗せた猛攻はしかし、いずれもジュリアスを捉えるに至らない。
のらりくらりと躱され、また時には正面から受け止められ、いなされてしまう。
「ははっ、すげえすげえ大したもんだぁ。まだガキのくせにそこらの魔術師よりよっぽど歯応えあるぜお前。こりゃ成長すりゃあ
ジュリアスが称賛の台詞を送る。
皮肉でも何でもなく、これは本気の言葉だった。
実際、彼を相手にしてここまで攻め込める魔術師などそう多くない。魔術師たちの頂点たる
だからこそジュリアスは蓮華の奮戦を、一切の他意なく褒め称えているのだ。
尤もそれは、人間が少し賢い猫を褒める程度のものでしかないのだが。
「とはいえ、お前がそこまで成長することはもう未来永劫ありえねえんだけどなぁ」
蓮華の回し蹴りを軽く身を引いて凌ぐと、いよいよジュリアスも攻勢に打って出た。技を繰り出したばかりで隙の生じた蓮華に、手にした槍を突き込む。
「はいご苦労さんっと。……あん?」
しかしそれが蓮華を捉えることはなかった。確かに刺し穿ったはずの蓮華の姿が、残像のように掻き消えたのである。
(これは……雷で作った虚像、変わり身かぁ? なら本体はどこに……)
その時、背中に怖気の走る気配を感じて、ジュリアスは弾かれたように振り返った。そこでは蓮華が既に攻撃体勢に入っている。
ジュリアスはいよいよ愉快そうに吹き出した。
「こいつはたまげた! まさかこの俺様が、こんなメスガキに一杯食わされるとはよぉ! マジに才能あんぜお前! ━━だがなぁ」
白髪の少年が歪に笑う。途端、鮮血が飛び散った。
ジュリアスのものではない。蓮華の口から、大量に血が吐き出されたのだ。
「ごほっ、げほっ……」
「お嬢様!?」
咳き込み膝を着く蓮華に、未だ湧き出るアンデッドたちを相手取るうづきが驚愕の声を上げる。ジュリアスはブラブラと槍を弄びながら、
「言っとくが俺様は何もしてねえぜぇ? お前が勝手に無茶して倒れただけだぁ」
纏う紫電が消え失せ、ただの女子中学生に戻った蓮華に対して、白髪の少年は朗々と語りかける。
小さな子供に言い聞かせるように。
「お前が使ってた魔術、ありゃ察するにかなり繊細な魔力制御が必要とされんだろぉ? なのにお前ときたら、怒りに身を任せてひたすら馬鹿みてえに突っ込んできたもんなぁ? そりゃオーバーヒートしちまうのも当然だよなぁ? まともに制御するための計算も追いついてなかったんだろぉ? なあっ!?」
「あぅっ!」
蹴り飛ばされ、切臣の隣に転がる蓮華。
もはや立つことさえ儘ならないのか、必死に手に力を込めて立ち上がろうとするも、すぐに崩れ落ちてしまう。
目の前には、血に塗れた大切な人の姿。
蓮華の瞳から徐々に澱んだ狂気の色が消え、代わりに透明な涙が、ポロポロと溢れ始めた。
「……やだ」
掻き消えそうな微かな声で。
「やだよぉ切臣……死なないで……死なないで……起きてよぉ……」
どうにか手を伸ばして切臣の身体に触れる。まだ僅かに温もりを感じるが、それも急激に失われていくのがはっきりと分かる。
まるで昨日の夜の焼き直しだ。違うのはもう、あんな奇跡は二度も起きそうもないということくらい。
「心配する必要はねえぞぉ」
そんな二人に近づく影が一つ。
ツギハギ顔の少年は意地の悪い微笑を浮かべながら、諭すように言い放った。
「テメェらは二匹とも仲良く俺様が喰ってやるからよぉ。俺様の腹の中で、思う存分乳繰り合ってなぁ」
「お嬢様! くっ、この……!」
うづきがどうにか蓮華の元へ駆けつけようとするが、やはり亡者の群れに阻まれてしまう。
その様子を尻目に、ジュリアスはゆっくりと緩慢とすら思える動作で、紅槍を構えた。
「そんじゃ、あばよぉ」
そうして、一息に蓮華へと突き込む。
「お嬢様━━━━━━━ッ!!!!」
うづきの悲痛な声だけが、夜の山道に木霊する。
そして、
そして。
***
朧気な意識の中で、黒野切臣は佇んでいた。
荒涼たる草原と逆さまの月。真っ白で大きな扉だけが存在する空間が、またしても視界に広がっている。
昨日見た夢の続き。切臣はやはり同じように、扉へと手をかけた。
『本当にいいのか?』
と、再び背後から声が飛んでくる。
予想通りそこには、襤褸切れを纏った何者かが、寸分違わぬ様子で立っていた。
ゆらゆらと揺蕩う陽炎の如く、寄る辺ない気配を漂わせながら。
『その扉を開けてしまったら、もう戻れなくなるぞ。本当にそれでもいいのか?』
男なのか女なのかも定かではない声が、切臣の耳朶を叩いてくる。
あの時は答えることができなかった質問。
しかし、今度は切臣は一切の逡巡さえすることなく、毅然とした面持ちで応じた。
「それでもいい。この先にあるものが必要なんだ」
この扉を開いた先に何があるのか、明確な答えを切臣は持たない。
けれどそれでも、確かに分かることがある。
この先にあるものこそが、自分の求めてやまないものの正体なのだと。
無論、それだけでは済まないということも。
『後悔はないのか? 一度その扉を開いてしまったが最後、お前は今度こそ完全に
襤褸切れの誰かが問う。人間だった頃への未練に訴えかけるように。
その発言の内容は、切臣も薄々分かっていることだった。
この向こうへ行けばきっと、自分はもう二度と後戻りすることはできないのだと、ひしひしと確かな実感を覚えている。だが、
「ない。たとえ俺がどうなろうと、そんなのは知ったこっちゃねえんだよ。あいつを━━蓮華を守れるのなら、他に何もいらないんだ。そのために俺は魔術師になるんだから」
それを理解していて尚、この上なくはっきりと、そう少年は断言した。強く揺るぎない光を瞳に湛えて。
『……そうか』
答えを得て、誰かは諦めたように呟く。
それから、被っていたフードを取って、素顔を露にする。
果たして現れたのは、悪魔的なまでに整えられた精緻な美貌。
金色の眼と褐色の肌に、腰まで届く艶やかな長い黒髪。身に纏う襤褸切れすら麗しいドレスに変貌させてしまうほどの、まさに絶世の美女がそこにいた。
「ならばもう何も言うまい。お前のその選択を、私は精いっぱい祝福しよう。臆さず先へ進むがいい」
「……アンタ、何者なんだ?」
「私の名前はゼロ。何も持たないただのゼロだ。今はまだ、それしか言えない」
「ゼロ……」
どこか懐かしい気がするその響きを、切臣は口の中で転がす。
何か胸に引っ掛かるような感覚を覚えた。
「早く行きなさい。あの子が待っているんだろう?」
しかしゼロに言われ、そんなことを気にしている場合でないことを思い出すと、少年は扉へと向き直る。
自分より何倍も大きなその扉はしかし、実際に押すと羽根のように軽かった。
切臣は一息に扉を押し込む。やがて扉を全て開け放つと、少年の前にはどこまでも果てしない暗闇が広がった。
「行くぞ」
だが少年は物怖じ一つせず、絡みつくような暗黒の中へと、一歩一歩と足を踏み入れていく。
もう振り返りもせず。
ただその先だけを目指して。
***
奇跡は、二度起きた。
「……何だぁ?」
ジュリアスが蓮華に向け、くれてやった刺突。
確実に殺すつもりで放ち、満身創痍の身体では決して避けることも受けることもできないはずの一撃。
万物の生命を無慈悲に狩り取る死神の紅槍を。
「切臣……?」
黒野切臣が。
いつの間にか立ち上がっていた魔剣士の手が、槍の柄をしっかりと掴んで受け止めていた。
「バァカ、死ぬわけねえだろ」
潤んだ目でこちらを見上げる蓮華に、切臣はにっこりと笑って言う。
滴る血の海において尚も力強く。
守るべき大切な少女を安心させるために。
「約束しただろうが。ずっと一緒にいるってよ。こんな奴さっさとぶちのめして、一緒に帰ろうぜ」
切臣がそう告げると、同時に嘲るような笑い声が上がった。ジュリアスだ。
少年の言葉がおかしくて堪らないといった様子でゲラゲラ笑っている。
「ははっ、そりゃ面白れえジョークだなぁ。まるで手も足も出なかったテメェが、この俺様をぶちのめすだとぉ? 血ぃ流し過ぎて頭イカれちまったか?」
白髪の少年は嗜虐的に口許を歪め、
「だが生憎俺様はもうテメェと遊ぶのも飽きちまったんだよなぁ。悪りぃがとっととバラして晩飯に……」
されど、その言葉を最後まで言い切ることなく、次第にジュリアスの顔から表情が抜け落ちていく。
果たしてその視線の先にあるのは、自身が握り締める得意の紅槍。
その更に向こうの、槍を掴む黒野切臣の手だった。
(動かねえ)
握る両手に力を込める。
だがどれほど強く引こうとも、槍が動く気配は全くなかった。
切臣によって強く抑え込まれた紅槍は、まるで巨岩のように重く、ビクともしないのだ。
想定外の事態にジュリアスは眉間に皺を寄せる。
「なあジュリアス。お前確か、俺の魔剣の能力が見たいんだったよな」
その時、魔剣士の少年が口を開いた。
金色に染まった双眸が、十三貴族を射抜くように見据えていた。掴まれた槍がミシミシと音を立てる。
「だったらお望み通り見せてやるよ。手加減はしねえ。ビビって腰抜かすんじゃねえぞ糞野郎」
そうして、紅槍を粉々に握り潰した。
「━━ッ!」
瞬間。ジュリアスは本能的にその場を飛び退き、凄まじい速度で切臣から距離を取った。
あと少しでも退くのが遅ければ斬り伏せられていた。そんな確信が胸を過り、とうに動いていないはずの心臓が脈打つ錯覚に陥る。
知らず、自身の頬を一滴の汗が流れ落ちていることに気付き、アンデッドの王は薄く笑った。
「……上等じゃねえかぁ」
穂先を砕かれた槍の残骸を投げ捨てると、ジュリアスは瞬時に新たな紅槍を造り出した。
この槍は彼自身の血液から編み込まれているため、いくらでも造り直すことができる。
新しく造った槍を、先ほどと同じように頭上へと掲げるジュリアス。莫大な量の魔力がまたしても彼の元へと集まり、たちまち収斂を始めた。
「だったら今度はちゃんとおっ勃たせろよこのフニャチン野郎! 俺様の槍と比べ合いする気だってんならよぉ━━ッッ!!」
十三貴族は声高に怒鳴る。
同時、再び背後に無数の槍を展開。ただし今度の数は先ほどの比ではない。
空を埋め尽くさんばかりの幾千もの紅い刃が、切臣に狙いを付けていた。
「今の俺様の最大出力。こいつをぶっ放せばテメェだけじゃなく、そのメスガキもあっちのチビも全員お陀仏確定だぁ。魔剣士のテメェ以外は塵も残らねえだろうよぉ。それが嫌なら死ぬ気で守ってみろやぁ、そのご自慢の魔剣でなぁ」
「…………」
切臣はその威容を、ただ黙って見つめていた。
だが、今しがたのような打つ手がなく立ち尽くしていただけの呆然としたものではなく、その横顔には揺るぎない闘志が宿っている。
それから、刀をゆっくりと鞘に納めた。
「何だぁ? やっぱり降参かぁ?」
「そう思うか?」
「質問を質問で返してんじゃねえよ間抜けぇ」
切臣は深く息を吸って、静かに腰を落とした。納めた腰の刀に手をかける。
「磨り潰してやるよぉ! ━━血槍瀑布ッ!!!」
ジュリアスが狂気を孕んだ瞳で叫ぶ。すると、数え切れないほどの真紅の槍が、切臣へと牙を剥いた。
魔剣士の少年を八つ裂きにせんと殺到する。死角はない。
「切臣、逃げて!!」
背後の蓮華が悲痛な声を上げる。
されど魔剣士はまるで動じることなく、凪のような静けさを保っていた。身に纏う真っ黒な
「武装展開━━」
唱える。
それは魔剣が持つ能力を解放するための、一種の呪文。最凶最悪の兵器を解き放つための合図だった。
鞘に納めている切臣の刀から、今にも爆発しそうな魔力の奔流が迸り始める。
ジュリアスの瞳が名の通り破滅的な色を浮かべているのに対して、切臣のそれはどこまでも穏やかで、澄み渡っていた。
そうして、彼は厳かに口にした。
「━━<
自身が持つ魔剣の
鞘走る一刀。抜き打ち、斬る。
飛び出した刀身は魔力の激流によって瞬く間に膨張し、巨大な黒い刃を形成。
十三貴族が放った幾千の槍と真正面から激突した。
尚も巨大化を続ける黒刃はやがて極大の斬擊となって、射殺す紅槍の群れを片っ端から呑み込み、文字通り『斬り伏せて』いく。
「な、んだこりゃあああああああああああッ!!?」
驚愕に目を見張るジュリアス。
咄嗟に残る全ての血槍を操作し、迫り来る巨刃を防ぐ壁とする。無意味。
その姿さえも瞬く間に破壊されていく槍と共に、光の柱と化した刀身の中へと消えていった。
「吹き飛びやがれええええええええええッ!!」
切臣が咆哮を上げる。
闇色の光柱が夜空を昇る。
刺し穿つ槍の軍勢を全て呑み干した黒い一閃は、遥か上空の雲を薙ぎ払い、その先の月すら両断せんとばかりに影を落とし込んだ。
後にはもう何も残らない。
どこまでも高く高く聳え立つそれは、さながら勝鬨を上げる狼煙のようにも、魔剣士の少年には思えた。
************************
続きはまた明日の20時に投稿します。
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