第2話 初カレ

「たっくん、私、酒井さかいくんと付き合うことになったんだ」

「そっか。よかったな、彼氏出来て。”ヒロ”と仲良くやれよ」


頭をガシガシ撫でる。


「うん! ありがとう! 」


ゆりは嬉しそうに撫でられている。

中学のこの時、ゆりは初めて告白された。

小さい頃から可愛かったのだからいつ告白されてもおかしくはないだろう。

実はこの時俺は知っていた。

名前で呼ぶくらいには仲の良い同クラのヤツだったから。



『なぁ拓馬、おまえと久留米さんって付き合ってんの? 』

『よく言われる。”あくまで”俺とゆりは幼馴染だよ。少女漫画的なやつを想像してたら落胆するぞ、俺らの関係は』

『……? じゃあ、告っていいか? 』

『保護者じゃねぇんだから本人に直に言えよ』

『そうだな! さんきゅー! 』

『……何もしてねぇし』


酒井ヒロトに先に告げられていたけど話す必要はないと思っていた。

付き合うことになっても別段気にもしていなかったし。

結果がどうなっても本人たちの問題だから。



「……たっくん」


1週間もしない内に左頬を腫らしていた。


「それ、どうした? 」


ゆりが喧嘩するわけがない。


斎藤さいとうさんに……叩かれた」

「───説明しろ」


ゆりが言うには、隣のクラスの斎藤さいとう沙代さよが急に現れて「泥棒猫!

」と叫びながら叩いてきたらしい。


「……まぁ、彼女の怒りはもっともだ。ゆりに当たりたくなっても仕方ない。が、食らうべきはヒロだよなぁ」


中学生で二股してるとか友人ながらため息が出た。


「そっか、そうだよね。行ってくる! 」


たまにゆりのフットワークの軽さについていけない時がある。

助けるつもりは無いし、ゆりも助けて欲しいとは言わない。

成り行きぐらいは見守ろうとゆりが向かった教室に向かった。


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